ニュース: 生活 RSS feed
【主張】洞爺湖サミット この数値が現実的なのか
政府は7月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)を前に、2050年時点での日本の温室効果ガス排出量の削減目標を設定する方針を決めた。福田康夫首相が来月にも発表する。数値目標は「現状より60〜80%削減」とする案が有力だという。
昨年のドイツで開かれたハイリゲンダムサミットでは、「世界全体の排出量を50年までに半減させる」との方針で合意した。
これを受けて、欧州連合(EU)は20年までに域内の温室効果ガスを90年比で20%削減するとの中期目標を決めた。ブッシュ米大統領も25年までに米国内の温室効果ガス排出量の伸びをゼロにすると発表した。サミットを控えて、日本としても目標値の公表をせまられていた形だ。
しかし、この数値目標の根拠は薄弱である。日本は京都議定書で約束した12年までの第1期間に90年比6%削減するという目標達成さえ難しい。05年時点では反対に90年比7・8%も増加した。
13年以降の「ポスト京都議定書」の枠組みで、日本がかねて主張している「産業分野ごとに削減可能量を積み上げていく」との目標値設定方式と整合性が取れるのかも疑問だ。
高い省エネ水準にある日本は、排出削減余地が大きい旧東欧諸国を抱えるEUとは事情が違う。日本だけが不利になるような目標なら大いに問題である。不公平な京都議定書の轍(てつ)を踏まないよう強く求めておきたい。
そもそも、今回のサミットの主眼は、13年以降の「ポスト京都議定書」の枠組みについて何らかの糸口を見つけることにある。米国や排出削減義務を負っていない途上国扱いの中国を引き込む策を考えねばならない。
米国が京都議定書を離脱し、カナダが目標達成を断念した中で、日本は自主行動計画に基づいて削減に取り組んでいる。サミットでは、こうした日本の事情も主張し議論を進めるべきだ。
日本の具体的提案についてはいま、福田首相直轄の有識者会議で議論されている。背伸びをして高い数値目標を掲げるのではなく、先進国、途上国双方が納得する理念と政策を示すことの方が重要なはずだ。議長国として日本が問われるのは、調整能力だろう。
リーダーシップに固執するあまり、サミットで体裁だけ取り繕っても、将来に禍根を残す。