米総合金融大手のシティグループが4000億ドル(約41兆円)に及ぶ資産の圧縮に乗り出す。サブプライムローン問題で生じた巨額損失を受けた経営再建策である。拡大路線の修正は同社の旗印である「総合金融化」の盲点を浮き彫りにした。
「1998年の統合は終わっていなかった」。先週、再建策を発表した場で、同社のヴィクラム・パンディット最高経営責任者(CEO)は語ったという。この一言こそが同社が抱える問題を象徴している。
同社は98年、銀行のシティコープと証券・保険のトラベラーズ・グループの統合で生まれた。業態の垣根を越えた米金融統合の先駆けでもある。その後も世界中の金融機関を買収し、規模を追った。
だが、統合の真の目的である質の融合は進んでいなかった。システムや事務部門は重複して費用が膨らんでいたし、業態間の相乗効果も限定的だった。昨年のピークの半分以下となる株価の低迷で「会社を業態別に分割すべきだ」という不満が株主の間でくすぶった要因でもある。
サブプライム問題があぶり出したのも同じような暗部だ。巨額損失を出した原因は、住宅市場の低迷というマクロ経済の問題だけではない。地域や業態ごとに分散したリスクを一手に把握する仕組みが甘く、投資が過大に膨らんだためでもある。再建策で「リスク認識の風土を変える」として、リスク管理体制の改革を柱の1つに据えたのは、自らの弱点を理解しているからだろう。
膨張のツケは大きい。資産の圧縮を迫られているのはシティだけではない。圧縮する際には信用収縮が米経済全体に影響を及ぼす恐れもあり、金融当局は目配りが欠かせない。
統合が悪いのではない。資金を調達する企業にとって、金融市場がマヒして証券が発行できないときに頼りになるのは銀行の融資である。個人にとっても、1つの店舗で預金も証券投資もできる「ワンストップ・ショッピング」の利便性は高い。
日本の大手金融機関も、多くが業態を越えた統合路線を進めてきた。この機運が生じた原点はまさに、98年のシティグループ誕生だったはずである。シティの苦悩が対岸の火事ではないことを再認識すべきだ。