「家庭医」徐々に浸透 福島県立医大

家庭医を目指す研修医らのオリエンテーション
 地域に密着し、患者の既往症や家庭環境なども把握した上で幅広い診療を担う「家庭医」の養成が福島県立医大(福島市)で3年目を迎えた。開始した2006年度、わずか1人だった家庭医を目指す研修医は14人に増え、県内各地の病院で研修を続ける。海外では初期診療を担う役割が確立している家庭医だが、臓器別の専門医が主流の日本では認知度も低い。関係者は「1人でも多くの医師が家庭医として地域に根付いてほしい」と期待する。

 現在の医師養成制度では医師免許取得後に2年間の初期研修、3―4年間の後期研修を受ける。後期では外科や内科など自分が志望する専門領域が対象となり、家庭医の研修プログラムがあるのは全国の大学では県立医大だけだ。
 初年度に1人だった研修医は、2年目が7人、本年度は6人。出身大学も全国に広がる。山形大医学部を卒業し仙台市内の病院での初期研修を経て研修医となった斎藤典子さん(26)は「地域で働く医師を目指してきた自分にとって家庭医はぴったりのイメージ」と話す。

 研修医は県内各地の病院で臨床に携わりながら研修する。県立医大の指導医が毎週、研修先の病院を訪問する仕組みだ。昨年度は十病院が研修医を受け入れた。初期研修を終えた研修医は当直や救急診療も行えるため、医師不足に悩む病院にとって貴重な戦力になる利点もある。
 福島県伊達市の保原中央クリニックは6月をめどに「家庭医療学センター診療所」を新設し、研修医2人を受け入れる。担当者は「家庭医の理念に共感して設置を決めた。医師と患者がじっくりと話し合えるようにフロアの改装工事を進めている」と説明する。

 課題は、育てた家庭医が福島に根付いてくれるかどうか。研修医14人のうち県立医大出身は4人だけで、他大出身者が将来県内に残ってくれるかは不透明。
 県立医大地域家庭医療部長の葛西龍樹教授は「家庭医には幅広い科目の知識だけでなく、地域に溶け込み患者や家族と付き合うことが求められる。認知度はまだまだだが、福島から全国に広まっていけばいい」と将来を見据え、今後10年で県内の家庭医を100人に増やす計画だ。
2008年05月12日月曜日

福島

社会



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