2年前、米国発の運動「ブッククロッシング」(本の交差点)を知り、そのユニークな発想に飛びついた。日本代表に就任、昨年8月に国内版サイト(http://bookcrossing.jp/)を開設した。
仕組みはこうだ。読み終わった本を公共スペースや飲食店などに設けた「ゾーン」に置き、読みたい人は自由に持っていく。サイト上で登録したID番号を本に張り付け、次に手にした人は感想などをサイト上に書き込む。
「見つけた場所などを書いてもらえれば、本の行方が追跡でき、読み継いだ人の間で交流も深まる。本に背を向けていた人に、本を持ち歩く『格好よさ』を感じてもらいたい」と話す。
18歳で出版取次会社に就職、書店経営や印刷業などにも携わった。今回の運動に「本が売れなくなる」との批判もあるが、「普及すれば読書人口が拡大し、書店に足を運ぶ人も増える。出版業界の古い体質に一石を投じたい」と力説する。
ブッククロッシングの会員は現在約180カ国63万人で、450万冊が登録済みだ。国内会員は約2300人。100ほどしかないゾーンを増やそうと、広島市と周辺で50カ所を目標に掲げ、カフェなどに協力を要請して回る日々。「本好きの人たちの熱意が運動の支え」。信念に揺るぎはない。<文と写真・宇城昇>
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■人物略歴
堺市出身。95年広島へ。出版営業代行・イーセット(広島県海田町)社長。「筋金入り」の本好き。
毎日新聞 2008年5月11日 東京朝刊