日本や世界で現在進行形の最新の軍事情報を選別して、誰にでもわかるような文章で解説します。ホットな事件や紛争の背景や、将来の展開を予測したり、その問題の重要性を指摘します。J-rcomでは、日本で最も熱い軍事情報の発信基地にしたいと頑張ります。 |
タイトル | 本 文 |
タイトル メディア 日付 |
この情報の最も新しい更新日は5月12日(月)です。 |
高解像度衛星に道 宇宙の防衛利用 解禁 基本法案を衆院委可決 (産経 5月10日 朝刊) |
[概要]衆院内閣委員会は9日、自衛権の範囲内で宇宙の軍事利用に道を開く「宇宙基本法案」を、自民、公明、民主3党の賛成多数で可決した。13日に衆院を通過し、今国会中に成立する見通し。この法案によって、高解像度の偵察衛星や、弾道ミサイル発射を探知する早期警戒衛星の保有が可能になる。 宇宙の利用については昭和44年に宇宙の平和利用に関する国会決議が採択されたが、日本政府は66年(昭和41年)に国連で採択された宇宙条約(宇宙憲章)で定めた「宇宙の平和利用」を「非軍事」と解釈していた。このため民間水準を超える技術の活用が制限され、日本の宇宙開発が遅れる要因になっていた。例えば、日本は北朝鮮のテポドン発射(1998年8月)を受けて、2003年3月に情報収集衛星を導入したが、衛星の解像度は米国が15センチに対して、日本は1メートルにとどまっている。 日本は2009年度に次世代衛星を打ち上げる予定だが、解像度は現時点で民間水準の60センチにする方向だ。しかしこの基本法成立後は「解像度をアップさせないための機能上の制限は考慮に入れなくていい」(政府関係者)ということになる。 基本法案ではこのほかに、内閣に首相を本部長とする宇宙開発戦略本部を設置し、宇宙基本計画を策定するとしている。また、法施行後1年をめどに内閣府に「宇宙局」を設けるほか、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のあり方を見直し、内閣府や文部科学省などにまたがっていた宇宙開発政策を総合的に推進することになる。 [コメント]この記事は2日前の土曜日の朝刊に掲載されていた。しかし土日は同居している義母の米寿(88歳)の祝いで、朝から車で箱根の強羅温泉に家族旅行で出かけ、更新する時間がなくて下段の記事しか掲載できなかった。しかし強羅で温泉に入っていても、この記事のことが頭から離れなかった。これではあまりにも誤解が多いと感じたからである。 この記事では、日本は高解像度の偵察衛星を開発できるのに、国会が”宇宙に関する国会決議”をしていたため、わざわざ技術に制限を加えて、性能が落ちた偵察衛星を打ち上げたと解釈できる。この話しを聞けば、初の国産偵察衛星を開発した技術者たちは驚くだろう。日本はあえてアメリカの偵察衛星に依存しないで、大金の2500億円をかけて国産衛星の開発にこだわり、解像度1メートル(?)でもやっとだったというのに、わざと性能を落としたとは笑い話である。(1メートル説も疑問) それが宇宙基本法案の必要要件だとしたら、政治家の大ウソと屁理屈である。 また内閣府に「宇宙局」を置く理由は、03年の情報収集(偵察)衛星の運用を始めるにあたり、防衛省、警察庁、文部科学省、外務省、国交省などの省庁が、多目的情報衛星の予算権限を自分の監督下に置きたくて対立が高まった経緯がある。その省庁間の利権争いを避けるために、内閣府の中に情報衛星の運用部門が置かれた。しかし情報衛星の運用は内閣府に置かれているが、画像情報などを分析などは、市ヶ谷で防衛省職員によって行われている。だから実態はまぎれもなく軍事偵察衛星で、防衛省が管理する軍事情報機関の一部になっている。だから新設される「宇宙局」は「宇宙戦略軍」の司令部で、実際の運用は防衛省が軍事目的のために行うことになる。 それではなぜ今になって宇宙基本法が必要になったのか。それは21世紀になって宇宙戦争(宇宙軍拡競争)が激化するからだ。例えば日本はアメリカとミサイル防衛(MD)で共同開発と導入を行っているが、次世代のMD計画では迎撃ミサイルは多弾頭が計画されている。さらに次次世代のMD計画ではレーザー兵器を宇宙に配備することも重要な課題になっている。これから日本がアメリカの宇宙戦争計画に追随するためには、宇宙の軍事利用が可能な法根拠が必要になったからである。 宇宙法の施行1年後のJAXA見直しは、もはや日本は独自の宇宙開発衛星(国産ロケット)の開発を断念し、アメリカの宇宙開発に依存するしかなくなったのだ。そのアメリカは宇宙開発の第一目的は軍事活用(宇宙戦略)であることは言うまでもない。そのために宇宙基本法で宇宙の軍事利用に突破口を開いたわけである。 私はそのことを非難したり批判しているのではない。しかし国民を騙して鎧(よろい)の上に浴衣を着るようなマネをするなと言いたい。政府が国民にウソをいったり、騙そうとすれば、それを見逃すことができないのがジャーナルストの性分である。 ※ 03年に日本が導入した情報収集衛星の開発については、”春原 剛(すのはら つよし)氏著 「誕生 国産スパイ衛星」 日本経済新聞社刊 05年5月初版” が詳しい。 |
ミャンマー水害 救援要員 軍政が拒否表明 憲法採択へ国民投票強行 (毎日 5月10日 朝刊) |
[概要]ミャンマー軍政のニャンウィン外相は9日の国営紙で、大水害での救援要員の受け入れを迫る欧米諸国に対して、外国の救援チームや報道関係者の入国を拒否することを公言した。支援物資の空輸受け入れも中国やインドなど関係が良好な国だけだった。医療関係者などの入国は拒み続けている。このようなミャンマーの対応は北朝鮮の大水害被害(90年代)と比較しても異様さが際立っている。 この強硬姿勢の背景に、被災地の一部を除き10日に行われる憲法草案への賛否を問う国民投票の存在がある。政府は翼賛団体を通じて国民に「賛成」を強調し、「反対」を唱える一部の民主勢力を拘束したり暴行してきた。もし外国の援助組織や報道記者を受け入れれば、そうした実態が国際社会の目に触れ、国民投票の正当性が問われることを極端に警戒している。 軍事政権は2010年の総選挙実施を国際社会に公約しているため、民主化運動指導者アウンサンスーチーさんを排除して、軍の権限を保障する憲法の成立は至上命令だ。 [コメント]ミャンマーではサイクロンで犠牲になった数万人の他にも、その後も食糧や飲料水の不足で餓死したり、不衛生な環境のために伝染病が拡大して死亡者が増加することは必至である。その上、コメなどの価格が高騰してくる。被災地では軍政に対して住民の不満が高まっていく。 これに対してアメリカは、ミャンマーへの人道支援のために米海軍の強襲揚陸艦「エセックス」搭載のヘリをタイで待機させ、別にC−130輸送機6機をミャンマーに緊急投入出来る体制を整えた。またエセックスを中心とする米海兵隊の任務統合部隊(MEU)の3〜4隻をミャンマー沖で待機させるという。 ゲーツ米国防長官はミャンマー政府の許可を得ないで、領空侵犯してまで食糧や医薬品を空中投下することはないと明言したが、あくまで”許可を得ないで”と語っただけである。もしミャンマー軍政のトップであるタン・シュエ国家平和発展評議会(SPDC)議長がクーデター(あるいは暗殺)などで追われ、新たな軍政指導勢力がアメリカに救援を求めれば、一気にアメリカ軍はミャンマーに入国できることになる。すなわちミャンマーのクーデター勢力にとっては、アメリカ軍がミャンマー近くに集結した今こそが、クーデターを試みる絶好のチャンスなのである。 ミャンマー軍の中には、ヤンゴンで発生した民主化要求デモの際、兵士が僧侶に対して暴行し銃殺したことで、独裁的な軍政に批判的な勢力があると聞いた。今回の水害で社会不安が高まっていることで、一気に軍内部の反独裁勢力が動き出す可能性がある。 同時にこれは、もし北朝鮮情勢がさらに悪化すれば、中国が北朝鮮に人道支援と称して流れ込む(介入)のと同じ構図である。ミャンマーのアメリカ軍、北朝鮮の中国軍らはともに、武器のかわりに食糧や医薬品を大量に持ち込むことになる。 とにかく、食糧や飲料水が過度に不足し、感染症が拡大するここ2〜3週間が山になる。日本も自衛隊の国際緊急援助隊に情報収集と派遣準備を密かに命じ、大災害時に国際救援ができる各組織もミャンマーの急変に備える時である。ミャンマーが国際救援活動のオリンピックになる可能性がでてきた。今までにも独裁政権が倒れる時は、あっけないほど簡単に倒れるという特性がある。国際政治を勉強している人は、その理由(政治的な特性)を考えておくいい機会だ。 |
防衛省改革・官邸会議 防衛省が改革案 提出先送り 石破案に否定的意見も (読売 5月9日 朝刊) |
[概要]政府の防衛省改革会議(主宰・町村官房長官)は8日、首相官邸で第8回会合を開いた。この日は防衛庁が検討を進めている組織再編案について説明を受ける予定だった。しかし石破防衛相が私案として提唱した内局(背広組)と自衛隊の各幕僚監部(制服組)の統合・再編案に対する省内の反発が強く、防衛省としての再編案提出は今月下旬に開かれる次回会合に先送りされた。8日の改革会議では出席者から、石破案に否定的な意見が出されたという。 石破私案は、内局を制服・背広組が混在する組織に変え、「防衛力整備」「作戦」「国会対応・広報」の3機能に再編し、現在の陸海空の格幕僚監部は大幅に規模を縮小する。また格幕僚長は指揮命令系統から切り離され、防衛相の補佐に専念し、部隊指揮は防衛相が直接行うといういうもの。 しかし、省内では制服組を中心に、石破案は「制服組の発言力低下と背広組の権限強化だ」という強い反発がある。このため防衛省では石破案と並列する複数の再編案を改革会議に提出する方向で調整を進める。政府内にも、「急激な組織改革で混乱を招くのは避けたい」との意見が広がっている。 [コメント]石破氏の再編案は机上の空論と思う。現在は防衛政策では政治家や官僚(防衛・外務など)が暴走する時代である。その最たる例は03年12月のミサイル防衛(MD)導入が決定した事例である。MD導入は石破防衛長官(当時)と守屋防衛局長(当時)が技術的な検証もなく暴走した結果である。まさに防衛長官が訪米中の衝動買いであった。予算規模で約1兆円というMD配備が一夜にして方針が変更されたのだ。(朝日新聞社刊 「自衛隊 知られざる変容」 05年5月発刊に詳しい) 方針が変更したというのは、当時の防衛白書で「日本のMD導入は技術的な問題が解決するのを確認するため、今は米国との共同研究の段階である」と明記していたのにである。この1件で石破氏が防衛利権の凄さを会得したと想像しても間違いはない。(平成15年版 「防衛白書」 を参照) だから石破案には、政治家(いわゆる国防族)が防衛利権を背広組や制服組から奪う魂胆(こいたん)があると想像するのである。まさに政治家と官僚の暴走を可能にする再編案と思う。金丸元防衛長官が築き上げた防衛利権の構図を壊し、防衛省再編で新たな利権獲得を狙う者たちが石破氏を焚きつけているのではないか。 要は防衛省再編といっても、政治家と官僚の暴走を検証しないで、これからの防衛利権の奪い合いの場にしかなっていない。その上で、石破案には軍事専門的な立場からの助言を断ち、政治家が暴走する危険を高める危険な要素を含んでいる。 |
日中首脳会談 ガス田「早期解決」 夏までの合意目指す (朝日 5月8日 朝刊) |
[概要]日中間の最大の懸案である東シナ海ガス田の共同開発について、日本政府は7日の日中首脳会談で早期合意を目指す方針が確認されたのを受け、7月の洞爺湖サミットの際に胡錦涛主席が再来日までに決着を目指すという。 福田首相が昨年12月に訪中した際、温家宝首相と会談して「具体的解決について積極的な進展が得られた」との認識を共有したが、今回は胡主席が「問題解決の展望が見えてきた。双方は協議を加速し、出来るだけ早く合意出来るようにすることで一致した」(共同記者会見)と発言し、さらに踏み込んだ表現で一致した。 日本政府関係者によれば、「残っているのは技術的な細部の調整だ」と指摘し、共同開発の対象海域の特定や、中国側が単独開発している春暁(日本名・白樺)ガス田の扱いなどを巡って、最終調整が行われていると見られる。 [コメント]今回の胡錦涛主席の訪日で、農薬混入りギョウザ問題やオリンピック開会式への福田首相の出席問題よりも、東シナ海ガス田の日中共同開発問題がはるかに重要だと思う。 ギョウザ事件は日中の捜査当局が科学的捜査での協議を行えば、中国側で農薬が混入したことが明白になる。しかし中国側がその犯人を特定できて、逮捕できるかといういう問題と、中国政府が社会不安が高まる問題を認めるかは別だ。これは単に中国の捜査技術と国のメンツの問題である。 チベット問題も北京オリンピックまでに全面解決するのは不可能で、中国は何だかんだとチベット亡命政府と協議を続け、開会式には福田首相が喜んで出席することは間違いない。すなわちギョウザと開会式出席は、日中首脳会談の重要な懸案事項ではない。やはり東シナ海ガス田の共同開発をいかに合意がなされるかが最重要である。 ところで今回も話題になった日中の”戦略的互恵”関係の意味だが、これは単に日中2国間のことを調整するだけではなく、これから国際的な政治・外交・軍事などの分野にも双方が協力するという考え方を示す言葉である。そのように考えると、日中で対立している東シナ海の排他的経済水域(EEZ)を、どの様に合意するかが問われている。日本が主張している日中の中間線にするか、中国が主張している大陸棚にするかという調整である。 このEEZ問題が片づけば、日中間の軍事的な対立は激減させることができる。日本は東シナ海という浅い海で、対潜水艦ソナー(低周波ソナー)を張り巡らせたり、新型の無音・潜水艦(小型)で待ち伏せる軍事的な投資が軽減される。まさに東シナ海を日中の争いの海から、平和と繁栄の海に変えるぐらいの変化が期待できる。それで撤退した沖縄の米軍基地の跡地には、日中が共同して建設的な産業や観光施設を誘致できる。それほど東シナ海ガス田開発は日中間の重要な問題を内包している。単に日本と中国が海底ガスを奪い合っているだけではないのである。 |
充電して更新再開! 連休は日光街道 自転車で走破 140キロを1,5日行程 (5月7日 水曜日) |
東京の日本橋から日光までの日光街道(約140キロ)を自転車で走破する。そんなことを連休中に思いついて実行しました。選んだコースは最後が上り坂で苦しくなる日本橋→日光の方向です。帰りの日光→日本橋は自転車を輪行バッグに収納して、電車で帰ることにしました。往復とも自転車ということも考えられますが、今年の連休は天気が今イチよくありませんでした。ぎりぎり1日半の行程というのが限界でした。
簡単な旅行記を「所長 ご挨拶」に書きました。自転車でのツーリングなどに関心のある方はそちらをお読み下さい。 というわけで、かなりリフレッシュして元気になることができました。連休期間中に皆さんから励ましのメールを多数頂きました。ありがとうございます。4月の中頃にはかなり気持ちが滅入ってましたが、もう大丈夫だと思います。 さて胡錦涛主席の訪日で、日本と中国が本当に戦略的互恵関係になることができるのか。ロシアと中国は戦略的互恵関係と宣言したのに、今では中露関係がかなり冷え切っています。 またサイクロンの大被害を受けたミャンマーは、医療援助など、他国の軍による援助(入国)を拒否していますが、同じような大被害が北朝鮮で発生したらどう出るのか。北朝鮮も食糧や飲料水だけの援助に限定して、他国の軍隊が国内に入っての緊急援助を拒否するのか。今まで北朝鮮はそのように対処してきました。しかし意外と独裁国家の弱点が露骨に現れてきました。 本日は新聞休刊日、さあ、また明日から頑張ります。これからもよろしくお願いします。 |
ゴールデン・ウィーク 更新休止のお知らせ 今年は読書三昧か、 バイクでツーリングか (4月27日 日曜日) |
昨日から始まったゴールデンウィークですが、すでに我が家ではカミさんと娘は仙台のライブ(音楽)に出かけ、今朝は87歳の義母と朝食を作り、そのあと大量の洗濯と掃除を行いました。外は小雨が降っていますが、午後には晴れるという天気予報を聞いたからです。
さて、私も人並みにゴールデン・ウィークを楽しもうと考えました。1昨年は水戸街道(水戸〜東京)の完歩に挑戦しました。しかし昨年はどんな過ごし方をしたか覚えていません。そこで今年は何か良い思い出が残るように、小説の大作を読むか、日光街道を完歩(あるいは完走)するか、伊豆大島で大物を釣るか、バイクにテント(一人用)と寝袋を積んで温泉に行くか、あまりお金がないのでそれなりの楽しみ方を考えてみます。 恨みごとを言うわけではなりませんが、もし、イージス艦事故で出たテレビやラジオの出演料や、新聞や雑誌のコメント料をきちんと払ってくれれば、ゴールデン・ウィークにグアムかミャンマーぐらいは行けたと思います。しかしテレビやラジオのスタッフは何を誤解したのか、私には払わなくていいと思っているか、あるいは忙しすぎて払うのを忘れたか、どうでもいいやと思っているのか、メディアの全体の2/3がその後の音沙汰ナシです。最近、特に無責任がひどくなりました。昔は、”あいつなら仕方ない”という”どうしようもない奴”だけでしたが、今は優秀な質問をしてくる記者でも、仕事後の出演料やコメント料の支払いは無関心が多くなりました。 私は大学で教えて給料をもらっていないし、講演活動をすると緊急事態に対応できないからしていません。このHPもコマーシャルを入れると、スポンサーに迷惑がかかると掲載していません。そんなこともあって、このゴールデン・ウィークの期間中に将来の活動についても考えてみます。まあ今のところ、食べるにも困る状態ではありません。 とりあえず今日は、映画館のタダ券(2枚)を新聞配達の方に頂いたので、午後から義母を誘って映画を見に行ってきます。義母は戦時中にジャワの日本海軍司令部でタイピストをしていたそうです。私はすでに「明日への遺言」は見ていますが、義母はまだなので見たいと言っています。 |
アフリカ ジンバブエ 武器を満載した船 中国に引き返す 周辺国が受け入れ拒否 (朝日 4月25日 朝刊) |
[概要]中国から武器を満載してアフリカのジンバブエに向かっていた船が、南アの港で荷下ろしを拒否された問題で、中国外務省の姜副報道局長は24日の会見で、船は積み荷の引き渡しを断念して中国に引き換えしたことを明らかにした。姜副局長は「ジンバブエ側が計画を変更したので、中国の関係会社はそれに従って決定した」と説明した。 しかし実際は緊張が高まるジンバブエに武器輸出する中国に、国際世論の非難が高まり、米政府の働きかけで周辺国が受け入れを拒否したために断念せざるを得なかったとみられる。 [コメント]22日のこのコーナーで論じた中国の武器輸出である。問題の貨物船は南アのダーバン港(荷揚げ拒否)から大西洋に面したアンゴラに向けて航行中と報じられていた。 さて、この姜副報道局長が正直に説明していると信じた方は、素直(すなお)すぎて中国の老獪(ろうかい)※な心理戦と戦えない。 中国は国際世論を沈静化させれば、数日後に「ジンバブエ側の変更でアフリカの港湾で荷揚げした」ということもあり得るからである。むしろ中国は再チャレンジする可能性の方が極めて高い。 中国はジンバブエに戦闘部隊を派遣し、軍事力でアフリカ南部に中国の覇権を確立させようとしてない。たった1隻の貨物船と77トンの積み荷の「武器」だけで、破滅的なジンバブエに覇権(の拠点)を確立させる心理戦をやっている。正義の味方(自称)のアメリカが警鐘を鳴らし、ちょっと国際世論が騒いだぐらいで、中国が老獪に仕組んだ覇権戦略を中断させる訳がないのである。中国はそんな甘い国ではない。パキスタンに核技術援助して核武装させたのは中国なのである。 むろんアメリカの偵察衛星がこの貨物船の動きを厳重に監視しているが、この貨物船が実は陽動作戦で監視の目を引きつけ、別の貨物船がコンテナの中身を「古着」と称して、別の港でジンバブエ向けの武器を荷揚げすることをやる国なのでる。国際法上は相手国の世情に関係なく、武器輸出は違法ではない。アメリカやロシアやフランスも行っている。中国はジンバブエ政府発行の武器・最終使用者契約書(エンド・ユーザーの保証)があれば、武器輸出は中国の自由意志で行い、いくら国連でも輸出禁止や制裁などの関与はできない。 こんなことを指摘しても、私は反中国主義者ではない。単に軍事の常識を話しているだけである。感情的に反中国を煽ることに興味はない。むしろ中国はアメリカと同じように好きな国である。しかしいくら好きでも、”親しき仲にも礼儀あり”というのが私流である。 不謹慎な言い方かもしれないが、中国の仕掛ける老獪な心理戦が面白く、日本がそれに振り回されたり、騙されないように心がけているだけだ。一種のゲームを楽しむようなものかもしれない。それに日本の反中国論者の主張は軍事上の間違いが多すぎると感じている。 まあ、今回の「ジンバブエ側の計画変更で船が引き返した」という言葉は、軍事・心理戦の世界では信じない方が常識なのである。今から1年後には、経済が破たんしたジンバブエに中国の大規模・経済援助が流れ込む可能性だってある。かつて日本が軍事力を使わず”ODA(政府開発援助)でやったことと同じである。中国はジンバブエではまず武器の支援と覇権戦略を考えたわけだ。その覇権戦略には軍事的な合理性がある。 ※ この漢字を間違って書いていました。読者の方からご指摘(「メールにお返事」に掲載)を受けて訂正しました。 |
タクシー殺人 「死刑に なりたかった」 容疑の19歳自衛官 (読売 4月23日 夕刊) |
[概要]鹿児島県姶良町でタクシー運転手が車内で首を切られて殺された事件で、殺人の容疑で逮捕された陸自・練馬駐屯地所属の1等陸士の少年(19)が、「人を殺して死刑になりたかった」と供述していることが分かった。 少年はタクシーを停車させ、後ろから運転手の首を刃物で切り、殺害した疑い。司法解剖の結果、死因には失血死で、首のほかにも、顔や左手など20か所以上の切り傷があった。少年は「後ろから手を回し、ナイフで首を引いた。だが、なかなか死なないので、何回もやった」と供述。捜査員が「殺すのは誰でもよかったのか」と尋ねると、「そうです」と答えたという。 [コメント]この1士は昨年3月に札幌市の高校を卒業し一般自衛官として自衛隊に入隊している。新隊員教育後に練馬駐屯地の第一普通科連隊に配属され、先月3月に新編成された即応連隊(宇都宮)に転属が決まっていた。転属に備えて3月19日から21日に休暇をとり、そのまま帰隊せず脱走していた。本人は希望していた即応連隊に異動が決まり、喜んでいたという。少年の実家近くに住む主婦は「とてもおとなしい子だった」と話す。入隊するまで内気な感じの少年で、殺人事件を起こしたことが信じられないという。家族は母と祖母と弟の4人家族。(この部分、産経新聞 4月23日 朝刊を参照した)。 真面目でおとなしく、内気であった少年が、死刑になりたくてタクシーの運転手を刺し(切り)殺す。一体、自衛隊生活の1年間に何が少年を殺人犯に変えたのだろうか。 私は偉そうに言うわけではないが、この1士の心の苦しみが分かるような気がする。間違ってはいけないのは、決して自衛隊で覚えたナイフでの格闘訓練(銃剣を使う)を実際に使ってみたかったのではない。最大の心理的な圧迫は「即応連隊」への配属だと思う。すでにこのHPに書いたが、即応連隊は実質的な第2空挺部隊である。習志野の第一空挺団で鍛え上げられたベテラン(精鋭)を、その経験と技術を集めて編制されている。即応連隊を希望する少年1士にとっては、新しい同僚となるのは神様の様な連中なのである。 しかし相応連隊であっても、自衛隊であれば警衛や雑用係は必要である。簡単に言えば、700人体制の即応連隊の構成は、幹部が150人程度で、陸曹が300人、それに陸士が250人ぐらいの編制ではないか。無論、ベテランの陸曹の割合が非常に多いという特徴がある。その幹部や陸曹たちが空挺バッジやレインジャーバッジを付けた連中で、一般の部隊ではすれ違っても「凄い奴」と言われる連中である。その部隊に配属されたといういうだけでも自衛官にとって「凄い」ということになる。 おそらく内気で真面目な1士はその緊張感に狂ったのではないか。別に即応連隊に行っても「しごかれる」とか「いじめられる」訳ではない。むしろベテランの陸曹たちは1士の様な未熟な部下を大事にすると思う。その点で言えば、即応連隊は自衛隊の中でも最もイジメがないと言える部隊である。しかし1士が感じる緊張感は並大抵ではない。その緊張感が高まって現実逃避や死刑願望に結びついていったのではないか。 そこで初めて背後から人を襲い、ナイフで首の動脈を切断するという徒手格闘に結びつく。ベテランの陸曹であれば、一回で動脈を切断するが、徒手格闘に未熟な1士は動脈の切断に失敗した。そのためにパニックになって顔などを何度も切ったと推測する。運転手の手の傷はナイフを払った時の傷である。 このあたりの現状を踏まえ、次は心理学などの専門家が1士の心を解析して欲しい。真面目で、内気で、一生懸命な若者が填(はま)る落とし穴であると思う。それに、拳銃を携帯した警察官が自殺願望や強盗願望の者に拳銃奪取のために襲撃されるように、我が国に死刑制度が有る限り自殺願望の者が誰か(無差別)を襲撃して殺すことは起きるのである。 |
アフリカ南部のジンバブエ 武器輸出中国船 弾圧の国へ 自動小銃など77トン (産経 4月22日 朝刊) |
[概要]アフリカ南部のジンバブエ向けの武器を積んだ中国籍コンテナ船「安岳江」が、南アフリカのダーバン港で荷揚げを拒否されたために、新たな荷揚げ港を求めてアンゴラに向かった。積み荷は自動小銃など77トンで、米当局に武器密輸で起訴されたことがある中国軍系の企業がジンバブエ国防省に出荷したもの。ジンバブエは内陸国であり、貨物は別の国で陸揚げする必要がある。 1980年の独立以来、独裁体制を固めるジンバブエのムガベ大統領は3月29日の大統領選で劣勢が明らかになったため開票を凍結。今月19日、突如、「最集計」を開始した。 愛国心をあおるために白人農地に対する収奪を黙認し、約500人の野党支持者を襲撃、拘束するなどして、体制維持のための強行突破を図る構えを見せている。中国からの武器はこうした時期に輸送された。そのため、野党勢力に対する弾圧のために使われることが懸念されている。 [コメント]私は20代の頃にはアフリカ協会(日本)に入り、アフリカの政治や社会に強い関心を持っていた。協会が主催する研究会や講演会に出席し、アフリカから要人が来日した時には歓迎パーティーに参加させてもらったていた。いずれ私はアフリカに渡り、現地で戦争や内乱の取材すると考えていたからだ。だからジンバブエという国名よりもローデシアという名前に懐かしさを感じる。しかしかつてのローデシアは南アとともに、白人政権が支配し、住民の黒人はアパルトヘイト(南アの差別政策)並みの迫害を受けていた。 しかしローデシアの白人は政権を放棄し、黒人大統領のムカベ大統領が独立を宣言して1980年にジンバブエが誕生した。だからジンバブエ独立当初は融和政策を掲げるムカベ大統領に期待したこともある。しかしムカベ政権が白人農園を黒人住民たちに襲撃させて奪い取り、無法的な政治を執り始めて世界から非難を受けるようになった。 現在のジンバブエは人口が1300万人で失業率は80パーセント以上、経済成長率は−4,8パーセント(06年 世界銀行調査)で、一人あたりの年間GNIは340・USドル(06年 世界銀行)というから年収が3万4000円程度である。ジンバブエ軍は陸軍が25000人で空軍が4000人の合計29000人である。インフレ率も統計できないほど上昇し、国内の経済や流通はすでに破たんしている。 さて中国がこの独裁者に武器を輸出する理由だが、ジンバブエではプラチナ、クローム、ニッケル、金が採掘されている。これに中国が気がつかないわけがない。しかしジンバブエへの経済援助は、英、米、欧などが、長年の関係を維持しながら行ってきた。(しかし欧米はムカベ大統領への非難を強めている)。そこで新参の中国が強烈なイメージで、ムカベ大統領に武器を贈ったと考えられる。 中国の武器を積んだ貨物船は、いったんアンゴラの港に入港するが、ここで貨物船が荷物(武器)を陸揚げすれば、その荷物の一部をアンゴラ政府が受け取ることを認めたことになる。中国の武器はそのような慣習で内陸部(海のない国)の国に流れていく。これが中国流の武器輸出で、特徴のひとつになっている。 この中国船のコンテナに積まれた武器が、どのように流れて、どのような使われ方をするのか。そのことでアフリカの現実を世界に訴えるよな仕事(報道)をするのが私の若い頃の夢だった。しかしアフリカよりもアジアのほうが段々と面白くなってしまった。もしアフリカで報道の仕事をしていれば、すでに殺されていたと確信できる。 |
北の核申告 「取り引き受け入れぬ」 米大統領、 譲歩批判に反論 「完全な申告」「検証が可能」 見極めて判断 (産経 4月21日 朝刊) |
[概要]ブッシュ大統領は19日の米韓首脳会談後の記者会見で、北朝鮮の核計画申告問題で「地域の利益にならない取り引きは受け入れない」と述べ、譲歩しているという批判に反論した。北朝鮮の核申告は「完全な申告」かつ「検証が可能」であるかを見極め、テロ支援国指定解除を判断するという考えを示した。 ブッシュ大統領は「まだ北朝鮮が全面的な核申告を行った段階ではない」と語り、22日から平壌で再開される米朝協議を通じ、北朝鮮が抽出したプルトニュームの正確な量や核施設の開示を求める方針を強調した。 アメリカではブッシュ大統領が北朝鮮の核申告問題で、来年1月の任期切れを前に「成果」を挙げるために交渉を急いでいるとの懸念が広がり、ボルトン前国連大使などが北朝鮮の核問題で安易な妥協をしないように警告していた。米紙ワシントン・ポストは19日付けの社説で、「米政府高官は北朝鮮がプルトニュームを引き渡すと見ていないのに、全面公表から逃れようとする北朝鮮をなぜ大統領は許すのか」とブッシュ大統領の姿勢に疑問を投げかけた。 共同で記者会見した韓国の李明博大統領は、「申告や検証が満足できないなら、長期的により深刻な問題を引き起こす」と述べ、米政府の安易な妥協を戒めた。 北朝鮮の核申告については、ウラン濃縮とプルトニュームによる核計画を別文書に分け、北朝鮮は米国の主張を「認識する」という表現にとどまり、ライス国務長官も「検証には時間がかかる」として、検証完了前に見返り措置の実施に踏み切る可能性を示唆していた。 [コメント]8年続いた米大統領の政権が末期になると、どの大統領も歴史に残る成果を求めて暴走することが多々あった。そのことで記憶が鮮明なのはクリントン大統領政権末期に、北朝鮮を電撃訪問したオルブライト国務長官のことである。 クリントン政権は北朝鮮の核開発を阻止するためにKEDOを発足させたが、検証や監査体制が不十分なために途中でKEDO計画を中止させられた。その失敗を挽回するためにオルブライト長官の駆け込み訪朝だったが、平壌市民10万人マスゲームを見て感激するなど、その後の政治的な評価は極端に低下した。まさかライス国務長官はオルブライト長官と同じ失敗を繰り返す気なのかと心配になる。 北の核を巡っては、日本、中国、韓国の3カ国が、年1回の首脳会談を持ち回りで開催することを決めた。アジア地域の中心的な3カ国が定期的に首脳会談の枠組みを作ることで、地域問題の解決に主導的な役割を果たし、国際的にもアジアの発言力を強化するねらいがある。(読売新聞 4月19日 夕刊) この記事は北朝鮮に対するアメリカの影響力低下から、東アジアに生まれた新しい国際協調会談となるのではないか。すなわち中東の戦争に力を奪われたアメリカに代わり、3カ国で東アジアの安定と繁栄を築くことでアジアの発言力を増し、EU(欧州連合)などに匹敵できる政治力を育てることも可能な将来性を秘めていると思う。同時に、朝鮮半島の統一など、地域の安定と繁栄のための話し合いをするものとなる。 今の5カ国協議が3カ国協議に軸を移すことさえ、予測可能な首脳会談となるように思える。それにしてもアメリカの大統領政権末期とは哀れなものである。ブッシュ政権はイラク問題、アフガン問題、北朝鮮問題、パレスチナ問題のすべてを解決できる力を失っている。 |
相模補給廠 マラソン大会 本日、更新を休止 10キロの部に挑戦 (4月20日 日曜日) |
本日、米軍・相模補給廠(神奈川県)内で開催されるマラソン大会に挑戦します。そのため午前6時半に自宅を出ます。心配だったお天気もなんとか回復したようです。ただ気になるのは、昨日、本当は軽めの運動で済ませる所を、つい気が入って今朝は足がやや筋肉痛です。でも、なんとか頑張ってみます。たぶん、明日は相当な筋肉痛になると覚悟しています。 |
サリン・テロ想定 築地市場で訓練 (朝日 4月19日 朝刊) |
[概要]東京都中央区の築地(つきじ)市場で13日、サリンを使ったテロ事件を想定して対処訓練があった。水産物荷さばき所で、買い付けに訪れた客数人が倒れたと想定。市場職員の通報で化学防護服姿の警視庁の捜査員が急行し、近くに放置されていたペットボトルをサリンと特定し、水をまいて周囲を洗浄した。 [コメント]まず毒ガス・テロの対処訓練を実施したことに、築地市場関係者と警視庁の方にご苦労様といいたい。しかしこの対処訓練は明らかに想定を間違っている。なぜならテロリストは市場でサリンを使うことはしないからだ。市場でB・C(生物・化学兵器)テロを仕掛けるなら、それはC(化学兵器)のサリンではなく、間違いなくB(細菌兵器)を使ったテロになる。BやCを扱うテロリストなら、その程度の知識は十分に持っている。 サリンは狭い室内や密封された車内などで使われる即効性の毒ガスである。蒸発(気化)速度は水と同じ程度で、開けた空間なら気化したサリンは風などで流されて効果が持続しない。市場でサリンを使うことは効率が悪いからである。またサリンと同じ効果(毒性)を持ち、油のように粘着性で気化しにくいVXガスは、屋外の資材や車両などに散布して、数日間の持続性を保つものがある。だからサリンを農薬散布機(航空機)などで空中散布するという説は間違いで、サリンなら空中散布した瞬間に風に流されて効果(毒性)は激減する。もし神経剤(サリンやVX)を空中散布するならVXだが、VXを空中散布すれば使用量が莫大になり非効率である。VXを使用する場合は、部隊が撤退する時に、司令部や病院など建物のノブやトイレの一部、スイッチなどに塗り、敵が占領しても使用できないように使う。VXを塗った場所は正確に記録し、再び、自軍が帰ってきた時にVX個所を除毒して建物を使用する。VXはそのような使い方をするわけである。 ならば市場で生物剤(炭疽菌やボツリヌス菌など)を散布する理由は、生物剤が持つ「潜伏期間」を活用するからだ。多くの生物剤は神経剤のように即効性ではない。細菌(毒性)が食べ物や呼吸で体内に入っても、すぐに発病するものは少ない。通常、体内に入って3〜14日程度の潜伏期間後に発病するものが多い。だから市場に生物剤を散布されても、数日間は気がつかない。そして潜伏期間が過ぎると一斉に発病する。すなわち築地なら東京中の119番が鳴りだして、救急車や病院の救急医療体制はパニック(パンク)になる。そのため発病した者の死亡率が極めて高くなる特徴がある。 もし築地市場でBCテロを想定した対処訓練を行うなら、テロリストに生物剤を使用されたと想定して行うべきだった。また、自衛隊(化学防護部隊)や消防庁も参加し、生物剤の特定なども訓練を行うべきだった。生物剤が使われる可能性が高い場所として、東京駅の地下街や羽田空港などが狙われることになる。被害を全国規模に拡大できるからである。 以前、オウムに地下鉄でサリンを使われて、警察も消防も手が出なかったが、次回のテロで生物剤を使われると同じようにパニックに陥る。警察と消防はオウム地下鉄事件後に化学剤テロに対する対応は進んだと思うが、生物剤テロについてはまだまだ対応が不十分である。早急な対応整備を強く進言する。ちなみに北朝鮮は生物剤を1トン程度貯蔵(韓国・国防白書)しているという。これだけで原爆100発以上の威力がある。 |
名古屋高裁判決 イラク空自「首都は戦闘地域」 多国籍軍の輸送 違憲 派遣差し止めは退ける (毎日 4月18日 朝刊) |
[概要]イラクへの自衛隊派遣は違憲だとして、市民団体などが国に派遣差し止めを求めた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁の青山邦夫裁判長(高田健一裁判長代読)は原告の請求を退けた名古屋地裁の1審を支持して、控訴を棄却したが、「航空自衛隊による多国籍軍の空輸活動は憲法9条に違反している」との判断を示した。この判決に原告は「控訴は棄却されたが、違憲の司法判断が示された」として上告しない方針。勝訴した国は上告できないためこの判決が確定する。 青山裁判長は判決で、「イラクでは、多国籍軍と国内武装勢力の間で武力行使が行われ、特に首都バグダッドでは多数の犠牲者が出ている地域でイラク特措法でいう『戦闘地域』に該当する」と認定した。多国籍軍兵士をクウェートからバクダッドへ空輸する空自の活動について、「戦闘行為に必要不可欠な後方支援を行っており、他国による武力行使と一体化した行動」と述べ、武力行使を禁止した憲法9条1項とイラク特措法2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同条3条に違反すると判断した。 また原告が派遣によって平和的生存権が侵害されると訴えていたが、判決は平和的生存権を「憲法上の法的な権利」と認定。「憲法9条に違反する国の行為により個人の生命が侵害されるような場合には、裁判所に違憲行為の差し止めを請求するなどの具体的権利がある」と判断した。その上で、今回の原告の請求は「戦争への協力を強制されるまでの事態が生じているとは言えない」などとして控訴を全面的に棄却した。 原告団によると、イラク派遣を巡り、全国の11地裁で提訴され、判決はいずれも原告の訴えを退けている。 福田首相は17日夜、違憲判決について「傍論だ。わきの論。判決は国が勝った」と述べた。今後の影響については「問題ない。特別どうこうするこてゃない」と語った。 [コメント]町村官房長官はバクダッド空港には民間機が乗り入れているので、イラク特措法でいう戦闘地域ではないと会見で述べていた。逆な言い方をすれば、空港に民間機が乗り入れていればそこは戦闘地域ではないといえるのか。ベトナム戦争が激しかったサイゴンの空港には、アメリカから米兵を運ぶ民間機が運航していた。民間機運航安全説、そこに明らかな矛盾を感じる。現在、バグダッド空港一帯は重武装の米軍などが固め、一般人が寄りつくことを厳重に禁止している。だから空港に民間機が離発着できるのである。 また空自輸送機は米軍兵士の輸送は小銃などの武器を携帯している者に行っている。米軍兵士はイラクでの戦闘に従事するために派遣されているのだ。まさに判決のいうように軍事常識では、戦闘に不可欠な後方支援活動を行っている。これは憲法に違反することは明白である。 私はいつもイラクの自衛隊員を守っている最大の功労者は「憲法」だと思っている。日本の政治家と官僚(防衛・外務)と一部のメディアが暴走し、これがシビリアン・コントロールだと言って自衛隊員に強制し、「自衛隊がいるところが非戦闘地」などの暴論で戦地に派遣される。そのような暴挙を止めるのは憲法が最後の砦になると考えていた。今まで多くの裁判所でそのような「違憲」判断から逃げていたことに、裁判所の責任を考えていた。だから今回の判決は率直にいって良かったと思った。 戦地に派遣される自衛官も一安心したのではないか。またイラクに派遣されている空自の隊員も、心密かに喜び、その家族も裁判所の判断を高く評価していると思う。 政府は今回の判決はイラク派遣に無関係というが、とんでもない認識である。前々回(04年)の参議院選挙では自民党公認の防衛関連候補(3人)は全滅(落選)して、自民党参議院には防衛庁・自衛隊推薦議員がゼロになった。昨年の参議院選でやっとヒゲの佐藤候補を当選させて自衛隊推薦候補が一人だけ復活した。本来なら防衛・自衛隊公認議員が参議院で6人いて不思議ではないのだ。 以前は、防衛・自衛隊の組織票は100万票で、3年ごとの参議院では3人の当選が確実(合計6人)と言われてきた。それが陸自のイラク派遣で自衛隊票が自民党支持を嫌った結果で大きな異変が起きた。自民党が今回の判決を無関係と居直れば、次の選挙で自衛隊票がどのような結果をもたらすか。自衛隊員やOBや家族はバカではないし、政治家や官僚の都合のいいロボットではない。 昔、ある政治家が、「これから日本もイラクなどの戦場で血を流す国際貢献(犠牲)が必要な時が来た。自衛隊員にはそのことを期待したい」と話したバカがいた。ブッシュ政権とネオコンの始めたデタラメな戦争で、自衛官の血を流し、命を失うことが、日本の国際貢献と思うような政治家は、次の選挙で必ず消えてもらう。 |
イラク衝突 「イランが停戦仲介」 シーア派政党幹部証言 治安への影響力強調 (毎日 4月17日 朝刊) |
[概要]イラクのマリキ政権を構成するイスラム教シーア派最大政党「イラク・イスラム最高評議会」の指導者アブドルアジズ・ハキム師の政治顧問で次男のモフセン・ハキム氏(34)が15日、滞在先のテヘランで毎日新聞の記者と会見して証言した。 ーー以下、証言ーー 3月末にイラクで激化したシーア派同士の対立はイランの仲介で沈静化した。イランはイラクの治安改善に大きな影響力を持っていることを証明した。イラクのマリキ政権の治安部隊は米国が後ろ盾で、対米強硬派のサドル師配下のマフディ軍と宗派間抗争が激化した。両派の戦闘はイラク南部のバスラや首都バグダッドで拡大し、400人以上が死亡した。 イランが仲介したのは先月の29日、30日の両日に、テヘランで開かれた。マリキ政権側から複数の国会議員とイスラム最高評議会傘下の民兵組織の司令官が参加し、サドル師側からは同師本人が出席した。 仲介はイラン政府関係者が双方と個人面談して「停戦」をまとめた。イラク情勢でイランの影響力はサドル師に停戦を宣言させるほど強力なものだった。イラクの治安改善にイランの積極関与を求めることに否定的なブッシュ政権に強いメッセージになった。 今回の戦闘ではマリキ政権の治安部隊が仕掛け、米英軍も一時参加したが、停戦を求めたのはマリキ政権の側だった。なぜなら治安部隊員が攻撃命令を拒んだり、マフディ軍に武器を引き渡すなど、治安部隊の能力と規律の欠如が明らかになった事情が背景にあった。 サドル師は30日に停戦に合意し、傘下のマフディ軍に停戦を呼びかけたが、南部では戦闘が収束に向かった。サドル師の指揮命令が機能し、マフディ軍の結束が強いことを示した格好だ。 ーー以上、証言ーー [コメント]この証言はサドル師が率いるマフディ軍と戦った、マリキ政権側のシーア派「イラク・イスラム最高評議会」の政治顧問で、指導者のアブドルアジズ・ハキム師の次男が語っている。それだけに信ぴょう性は高いと思う。ただし会見場所がテヘランなので、イランに対する格別の配慮を感じる内容となっている。 それでもブッシュ政権がこの会見で受けるショックは相当に強いと想像できる。イラクの治安維持はイラク治安部隊や駐留米軍ではなく、イランこそが主導権を持っていることを証言しているからだ。これでマフディ軍はマリキ政権の治安部隊を制圧したことになる。それもイランの手のひらで上で制圧劇が演じられた。今回もイランの勝利宣言なのである。 もうイラクにおけるイランの地位は、確実に強化の一途を進んでいる。このまま米軍がイラクに駐留する限り、イランの影響力は拡大することはあっても、衰退することはなくなった。すなわちアメリカはイラクでイランに負けたという意味である。 この記事の脇に、「イラン核開発」平和解決で合意 6カ国高官会合 (毎日 4月17日 朝刊)というのがある。16日、国連安保理常任理事国(米、英、中、仏、露)とドイツの6カ国は、中国の上海で高官会同を開き、この問題を平和的に解決していくことで大筋合意したという。なぜ日本の名前がないのか。日本政府はイラク情勢が正確に読み切れていないのではないか。日本の外交には対米一辺倒だけで、日本独自の視点が感じられない。もう外交はアメリカに”おんぶ”に”だっこ”に”肩車”という姿勢を改めてはどうか。いつも言っていることですが。 |
WFP(食糧農業機関) 「23カ国 深刻な情勢」 途上国で食糧暴動 投機マネー流入で高騰 (読売 4月16日 朝刊) |
[概要]食糧価格の急騰が世界を揺さぶっている。コメや小麦など主要穀物を輸入する発展途上国では、政府などへの抗議デモや暴動が頻発。世界食糧計画(WFP)は最貧国への緊急援助対策に乗り出したが、物価高騰の背景に穀物市場への国際的な投機マネーの流入があり、問題の長期化が懸念されている。 ブッシュ大統領は14日、アフリカなど途上国支援に総額2億ドル(約200億円)の緊急食糧支援を行うよう農務長官に指示した。食糧農業機関(FAO)によれば、昨年3月から1年間で、主要穀物の国際価格が、コメが約1,7倍、小麦は約2,3倍、トウモロコシは焼く1,4倍に上昇した。うち23カ国が「深刻な情勢」と警告する。 WFPは価格高騰の原因を、@原油高で、食糧や肥料の輸送コストが上昇、Aトウモロコシなどを原料としたバイオ燃料の増産、Bインドや中国などで生活水準が向上して食生活が変化した。などと分析する。そこに米サブプライムローン(低所得者向け住宅融資)問題で、株や債権市場が行き先不透明で投資が鈍り、投資ファンドなど大量の投機マネーが、穀物の先物取り引きに流れて価格が急騰したと分析している。さらにコメの主要輸出国のインドやベトナム、カンボジアなどが国内需要を優先させ、輸出を規制したことも価格高騰に拍車をかけた。 このような食糧不足は今までにない現象で、「飢餓の新側面」(WFP ジョン・パウエル事務局次長)の指摘や、「新しい飢餓状況」(バン・基文国連事務総長)という論文を米紙に寄せた。 FAOは特に影響が深刻な最貧国では、07年〜08年の穀物輸入代金が56パーセント上昇すると予測している。WFPは08年の援助資金が約5億ドル不足、各国に追加資金を要請している。世界銀行は食糧価格が下がる見通しが着かないことから、この問題が長期化するのを懸念している。 [コメント]投資ファンドなどの投機マネーが、サブプライムローンの「住」から、国際穀物の先物取引の「食」に移行した。「衣」「食」「住」のうち、「衣」に関してはすでに中国製品などで価格破壊が行われ、日本など先進国の衣料品工場はほとんどが中国に移転した。これで生活の基本である衣食住が革命的な変化を起こした。 食糧は石油と同じように、すべての産業の基本要素のひとつである。石油が値上がりすれば、原料だけでなく、輸送費も高騰して物価に跳ね返る。穀物の原料高騰はまさに同じことを狙って仕掛けられた投機マネーである。まさに最貧国の貧困を人質にとった投機作戦なのだ。 かつて90年代の前半に訪れたカンボジアで、現地の人からこんな話しを聞いたことがある。話しの真偽は保証できないが、その時に驚いたことを鮮明に覚えている。 「カンボジアでは年に4回、お米が取れる。水害や不作でも、3年に1回だけ豊作なら、家族が食べていける。雨期の水害は肥料やおかずの小魚を恵む。だからカンボジア人は一生懸命働かなくても活きていける。そのノンビリした人間性をベトナムやタイに狙われる」という。 目の前に広がるカンボジアの広大な農地に、日本式の農業を導入すれば、カンボジアは日本の食糧生産基地になると思った。そのように考えて戦乱が終わったカンボジアを歩くと、カンボジア南西部でジャングルを切り開いて作った広大は農地には、アメリカの有名企業(食品関係)の看板だけが立っていた。2〜3年後に行くと、そこに数件の家(小作人)が建ち、トラクターが走り回って、広大な緑の農地に変わっていた。 つい数年前までは、ポル・ポト派が支配する地域で、手つかずのジャングルが広がっていた場所である。あまりの急激な変化に驚いた。さらにタイ国境にはカジノが建設され、バンコクなど東南アジアの都市からカジノを楽しむ人が溢れていた。 このようなニュースを読むと、そのようなカンボジアの農地や産物が、世界の投機マネーで高騰しているのだろうと想像してしまう。なかなか日本人には見えづらい世界である。 |
李大統領訪米 在韓米軍、 世界展開も 米韓同盟再定義 合意へ (朝日 4月15日 朝刊) |
[概要]米韓両政府が19日に米国で開く首脳会談で、米韓同盟を再定義し、在韓米軍が世界的な展開を韓国政府が容認する代わりに、米国は南北朝鮮統一後も、「核の傘」を含めた軍事的関与を朝鮮半島で続けることになった。こうした考えを盛り込んだ共同宣言を、今夏にも「米韓未来同盟ビジョン」(仮称)とし発表する。 複数の関係者が明らかにした同盟の再定義は、韓国側が盧武鉉前政権の北朝鮮政策で傷ついた米韓関係を修復することを提案した。15日から訪米する李明博大統領が、ブッシュ大統領との首脳会談で協議する。 韓国側は米韓同盟を最重視することを意志表示し、本来、朝鮮半島に限ってきた同盟の協力範囲を世界規模に拡大。朝鮮半島外にも在韓米軍を円滑に派遣する「戦略的柔軟性」を認めた06年1月の米韓外相合意を確認し発展させる。韓国軍は国連平和維持活動(PKO)や国連安保理決議のない米国主導の有志連合に積極的に参加する。 米軍は南北統一後も朝鮮半島にとどまり、在韓米軍の海外展開で韓国の防衛力が低下しないように、偵察能力や精密打撃能力などで韓国軍を支援する。 当面は首脳会談の宣言文で発表を検討したが、今回は再定義作業の開始を宣言するにとどめることにした。7月にも予想されるブッシュ大統領の訪韓時の発表を目指すが、北朝鮮の反発も予測される。 [コメント]盧武鉉大統領の感情的な反米、反日、親北政策によって、朝鮮半島の軍事的な動きはほぼ停止していた。イラクに韓国軍を派遣しているが、それ以外の戦略的な進展は何もなかった。しかし現実的な李明博大統領の誕生で米韓同盟が一気に動き出した。それも米韓同盟は予想通りの動きを開始した。 ここで「米韓未来同盟ビジョン」(仮称)で表明されるいくつかの重要な戦略を整理しておこう。@ 朝鮮半島統一後の新国家はアメリカと軍事同盟を結び、在韓米軍は韓国に駐留を継続し、韓国から地球規模で出撃することができる。 A 韓国から出撃した米軍は、韓国内に自由に使える専用の基地を維持し続ける。 B北朝鮮が韓国に核兵器で威嚇したり、核攻撃を行った場合は、アメリカの核兵力で報復することを宣言する。 C在韓米軍が通常維持する兵力は、偵察能力を強化した小規模の部隊で、朝鮮半島有事には周辺海域などに緊急移駐してきた米軍が、空からの精密誘導爆撃や艦船から巡航ミサイルで攻撃を行う。D 米韓軍事同盟の範囲を地球規模に拡大し、韓国軍は米軍とともに戦い、米韓軍事同盟関係を強化する。・・・・・・・などというものである。 東西ドイツがベルリンの壁の崩壊で統一が行われた時、統一国家の国歌は西ドイツのものを使い、 憲法も西ドイツのものが使われた。さらに新生ドイツは軍事同盟のNATOにそのまま留まり、東ドイツはワルシャワ同盟軍から離脱した。韓国はそのあたりの教訓を学んでいると思う。 はっきりいって、この米韓首脳宣言は統一国家の新コリア国の誕生に備えたものである。韓国政府も北朝鮮の支配体制を変化させることを決意した。とりあえず中国やロシアも、新コリア国がアメリアかとの米韓同盟を継続させることに賛成するだろう。アメリカと離れて中国と同盟を結ぶと、東アジアは大混乱が生じることになり、中国であってもその政治・経済・文事打撃は耐えられないほど深刻になるだからだ。 李明博政権の誕生で、朝鮮半島情勢が一気に動き出す可能性が極めて高くなった。北朝鮮はこれから最も飢餓が苦しい4か月間を迎える。すでに北朝鮮では秋に収穫する稲作のために必要な田植えの種籾さえもないし、韓国からは化学肥料の援助が届いていない。中国が夏のオリンピック開催で身動きがとれない時に、北朝鮮が一気に崩壊する可能性が高まった。 日本も油断してはいけない。崩壊が確認された北朝鮮に、日本から食糧や医薬品の緊急移送に備えて体制を整える。また備蓄米など食糧ばかりか、医療などの支援体制を検討すべきである。 |
水・陸路開通 物やカネ南進 インドシナに 中国の奔流 存在感が強まり摩擦も 鈴木 真氏 署名記事 (ジャーナリスト・在バンコク) (産経 4月12日 朝刊) |
[概要]中国の影が南のインドシナ諸国に伸びている。メコン川の航路に続いてラオス経由の高速道路も開通、中国とタイは水路と陸路の2つの動脈で結ばれた。中国の人と物とカネの南進はさながら大河メコンの奔流のようだ。 先月末、中国、タイ、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマーの6カ国首脳は、ラオスの首都ビエンチャンに集まった。メコン流域諸国による拡大メコン地域(GMS)首脳会議である。温家宝首相ら中国、タイ、ラオス首脳はこの会議に合わせて南北回廊の開通を宣言した。これは中国の昆明からラオスを通ってタイのバンコクまでに至る全天候道路で、全長約1800キロを1日で走破できるようになった。メコン川流域の開発は、長い戦火が終わった1990年代に入って、中国を中心とした多国間の協力で始まった。 東南アジア最大の河川であるメコン川を国際航路とする利用は7年前に始まっている。中国、タイ、ミャンマー、ラオスの4カ国は2000年に通路協定を締結、翌年から自由航行が可能になった。対象は雲南省南部の思茅からラオスの古都ルアンプランバンまでの約900キロだ。中国は航路整備で500万ドルの資金を投じ、岩礁や浅瀬の爆破や浚渫(しゅんせつ)を行い、300トンの船まで航行できるようにした。 筆者は1年前、中国・雲南省からタイ北部のチェンセンまでメコン川を下ったことがあったが、定期客船を運航しているのは中国の会社だけで、行き交う貨物船も中国の船ばかりだった。チェンセンの南にある古都チェンマイでは孔子学院(中国語普及のための中国政府の機関)が開設された。 しかし中国の存在感を切実に感じているのは国境を接しているラオスだった。ビエンチャン近郊では大規模な工場団地と住宅地を作る計画が、中国とラオスの合弁で進んでいる。ここが中国移民5万世帯の巨大チャイナタウンになるという噂が流布し、住民に動揺が広がった。そこでラオスのソムサワット副首相がわざわざ記者会見を開き、「事実無根」と否定する事態となった。 GMS計画ではラオス経由のほか、ベトナムやミャンマーを通って中国とタイを結ぶ道路の整備や鉄道の建設も予定されている。中国の南方への進出には一段と拍車がかかるだろう。 日本も中国に対抗すべきという声もあるが、中国と日本ではこの地域とのかかわりに決定的な差がある。古来、中国本土から南への移民の波が続き、各国に巨大な華人社会を形成されている。例えば、タイの在留邦人は4万人だが、華人は推定900万人にも及ぶ。中国の影響力に日本が対抗できるはずがない。インドシナという呼称はインドと中国との間にあることから来ている。歴史を通じてこの地域は名前の通りに中国の前庭だったわけである。 [コメント]このHPでは昨日に続いて、中国の併呑政策を紹介する記事を掲載した。このインドシナ(東南アジア)やチベット地域以外で懸念されている中国の併呑地区は、極東ロシアの沿海州と、北朝鮮などがある。 極東ロシアの沿海州では、冷戦終結後にロシア人の居住制限が解除され、人々は暖かいロシア東部や南部に移住した者が多い。そのような極東ロシアの沿海部で深刻な労働力不足が発生した。そこに合法・非合法を問わずに、中国東北部から大量の中国人が流れ込んできた。間もなく沿海州一帯では、中国人移民がロシア人人口を超えることも推測されている。近い将来のウラジオに巨大なチャイナ・タウンが出現する可能性を否定できない。 北朝鮮の中国併呑策は、朝鮮族が古代王朝とする「高句麗」が、初期の都を中国の遼寧省に置いていたことから、朝鮮族は中国の一部族といういう歴史教育を中国が行っていることだ。韓国はそのような中国の歴史観に強く反発しているが、北京オリンピックでは韓国の選手が何らかのアピールを行う可能性がある。 このように中国の併呑政策は一時的な国策ではなく、まさに華僑の歴史とも匹敵する中国伝統の覇権政策なのである。それを考えれば、そのうち中国は日本も中国の一部と主張してくるのだろうか。 中国が太平洋に引いた第2防衛線は、日本列島から小笠原を経てグアムに至る線であった。それを考えれば、日本は中国の一部と言い出しかねない。中国の併呑政策は初期段階では軍事力に依存せず、もっぱら経済(カネ)や人やモノによって始まる。 |
チベット暴動1か月 中国 締め付け強化 ダライ・ラマの写真捜索 僧侶に反独立署名 強要 (読売 4月11日 朝刊) |
[概要]3月14日に中国チベット自治区ラサで大規模暴動が発生、四川省など3省に波及して間もなく1か月。地元政府による「治安回復宣言」の裏で、「力」と「思想」による締め付けが強化されていた。 デモが起きた甘粛省では依然、増派された軍、警察の駐留が続き、主なホテルは兵士などで貸し切りで満員だった。米国人旅行者が街を歩いても、警察からパスポートの提示を求められ、コピーまでされる有様だ。 地元のチベット仏教寺院・ラプラン寺では8日から、祖国統一を訴える愛国主義教育の特別講義が全僧を対象に始まった。「ダライ・ラマ14世は独立を企てる悪人、という文書に署名を強制された。こんなものは意味がない。彼は我々の心の中にいる」(同省出身の僧 36才)と憤る。同僧の案内でカギがかかった仏殿に入ると、中国政府が所持を禁止されたダライ・ラマ14世の写真が掲げられていた。別の20代の僧は、「ダライ・ラマと事件を結びつける共産党の宣伝に怒りが収まらない」という。四川省では、「デモ参加は自己の信念」と言い残し、首をかき切って自殺した僧もいるという。 四川省では騒乱が起きた後、チベット族の家に警官がいきなり来て、ダライ・ラマの写真を捜索するようになった。路上でも所持品検査が行われ、ペンダントなどに写真を入れて持ち歩くこともできなくなったという。 チベット自治区に通じる道では、10日夕、燃料補給車や大型の軍用トッラクなど軍用車両60台以上が確認された。長い車列は、軍の駐留が長期間する兆しだ。だが、ダライ・ラマをデモの「扇動者」と決めつけて対話を拒み、強硬姿勢をとり続ける中国政府のチベット統治が、新たな反発を生む悪循環につながっているようだ。 [コメント]この記事で驚いたのは、現地に派遣された中国軍がホテルを貸し切って駐留しているとことである。武装警官隊であれば完全な自己完結性を求めることはできないが、軍隊であればホテルを宿泊施設に使うことは常識外である。なぜなら、ホテルに宿泊しているなら、一階の出入り口にガソリンをかけて火を着け、外に出られないようにして窓から火炎瓶を投げ込めば、容易にホテルの火災で宿泊部隊を壊滅できるからである。もし中国軍が外征軍として訓練を受けたり、兵士に敵地で作戦中という意識があれば、ゲリラの攻撃から守りにくいホテルで宿泊することはありえない。残酷な話しで恐縮だが、ゲリラがその気になれば、消防車のタンクに石油を注入し、火事のホテルに※放水(石油)して火炎放射器のようにホテルを焼くこともできる。 この一例のように、中国軍は米軍のような外征軍として位置づけていないと思う。しかし中国人民解放軍は中国以外の場所で戦ったことがある。朝鮮戦争、中露国境紛争、中越戦争である。ところが人民解放軍の戦術は人海戦術だけで、兵員に大量の犠牲を出しながら、これといった戦果をあげていない。 人民解放軍という歴史的な経緯から、中国軍は外征軍として成長できないと思うようになった。アメリカ軍と同列の比較は無理で、そのことは意味がない。ならば中国軍の主たる任務は何か。それは”万里の長城”に象徴されるように、無形の城壁を自国周辺に中国軍で築くことである。それを城壁とは呼ばず、自国の防衛線と呼んでいるだけだ。中国は歴史的に異境人の侵入に苦しんだ経緯がある。だから防衛線の”万里の長城”の一部が崩されたときの危機感は、我々が想像する以上のものがあるようだ。まさに中国がチベットで行った過剰すぎる弾圧は、この危機感の表れではないだろうか。 中国が周辺国で覇権を拡大する方法は、軍事力ではなく、いつもいう併呑政策である。暴動の起きたラサ市では、06年の青蔵鉄道の開通で上海企業などの投資増で、人口35万人のうち、漢民族が20万人を超えたという。ホテルや観光業が一気に拡大したからだ。これが中国伝統の併呑政策である。02年にチベットの漢民族人口は6パーセントという統計がある。それがラサ市では数年で人口の半分(過半数)を超える移民を行うのである。 そして併呑した地域には軍隊や武装警官隊が移駐して、中国の城壁を築いて自国・防衛線を引くのである。このような中国軍の実態を見ないで、単に戦車や軍艦や航空機の数や性能の比較で、中国の軍事力を分析しても何も見えてこない。中国軍がホテルに宿泊しているということは、そこまで分析できる異常な現象なのである。 ※ 「火事のホテルに」を加筆しました。消防車の水タンクに石油(灯油)を入れて放水すれば、火炎放射器と同じになるという意味に誤解された人からメールを頂きました。 |
岩国、基地増強と並行して浮上 米軍住宅建設 火種に 「経済を圧迫」住民反発 (朝日 4月10日 朝刊) |
[概要]山口県岩国市で、米軍岩国基地の沖合展開のため愛宕山を削った跡地(平地60ヘクタール)を、大規模な宅地にする計画が破たん。その処理として平地45ヘクタールを国に売却することがほぼ決まった。防衛省は「米軍家族住宅の有力候補地」としてしている。経済の不振と続く基地増強。背景には基地が民間企業を押しのけ、地元経済発展の足かせとなってきた歴史がある。 岩国基地の沖合展開は08年度に完了する予定で、それを待って厚木基地(神奈川県)から空母艦載機58機が移転してくる。その日程と重なるように米軍住宅建設が浮上した。当初、愛宕山跡地は山口県と岩国市が住宅団地を建設する予定だった。しかし需要が見込めず頓挫、借金251億円が残った。その処理として国に売却することが決まった。この動きに愛宕山周辺の自治会の多くは反発し、近くに住む田村順玄市議は「国は住宅団地計画の頓挫を見越していたのではないか」と話す。 岩国基地の沖合移転は元々、墜落事故の危険回避と騒音軽減が目的だった。貴船悦光・元市長によれば、埋め立て分の陸地部分が市に返還されるはずだった。しかし最終的には現在の574ヘクタールに、埋め立て地が213ヘクタールが加わるのに、地元に返還部分されるのは5ヘクタールのみ。「新しい施設が増える」(防衛省幹部)との理由だ。新しい施設は戦艦(神浦・・・空母)が寄港できる水深13メートルの大岸壁が建設される。新たな基地埋め立ててで、古い基地が返還されるという地元の悲願が逆手に取られたという声がある。 基地交付金で地元が潤うという考えは、実際の集計では、岩国市の04年度の一般会計決算額と固定資産税額は、81年度と比較してほぼ2倍に増えている。しかし基地関係の土地からは固定資産税は入らず、基地交付金の額もほとんど増えていない。(田村市議の集計)。「米軍基地は市経済の発展に貢献していない」(田村市議)と指摘する。 空母艦載機の移転問題では、市は反対・容認の真っ二つに割れ、反対派の井原・前市長は選挙で敗れた。直後、防衛省は市庁舎建設補助金35億円の凍結を解除し、米軍再編交付金4億円の交付も決めた。選挙結果は艦載機の移転容認、補助金・交付金のメリットとなった。 空母艦載機の移転容認派で市長選挙に転出した福田良彦・現市長の、衆院山口2区補選が15日に告示され、再び山口で「基地と経済」が選挙で問われることになる。 [コメント]岩国基地周辺ではベトナム戦争の末期、リフレッシュ休暇でベトナムから来た米兵たちとよく遊んだ街である。広島市の繁華街にあったジャズ喫茶などで米兵と知り合い、友人のトヨタの空冷700CCエンジン※を積んだ中古のパブリカ(車種)で何度も岩国基地に送っていった思い出がある。 その頃、岩国基地の滑走路・延長線にある帝人工場の赤白(色)の煙突が異常に低く、それは基地に離発着する米軍機のために短くしたという話しを聞いたのを覚えている。だから岩国基地の沖合を埋めて、航空機が市街地や工場地帯の上空通過を避けるという話しに納得した。おそらく岩国市民もそのように信じたはずである。その埋め立て用の土砂を採った愛宕山の大規模住宅開発は、岩国市の基地共存も悪くはないと信じたはずである。さらに岩国基地を民間共有空港にする話しもあった。 しかし今は、すべてが御破算(ごはさん)になって、厚木から空母艦載機が移駐し、古い基地は返還されずに強化され、愛宕山の跡地には米軍住宅が建つという。すでに岩国基地は普天間基地から米海兵隊・航空隊の空中給油部隊を受け入れているので、岩国基地は本土で最大の米軍基地に拡大することになる。 そして岩国基地の周辺には、アジア最大の米軍弾薬庫である山田弾薬庫(広島県)と山陽自動車道で結ばれ、さらには佐世保米軍基地とも隣接した位置関係にある。これらはすべて朝鮮半島を睨んだ布陣で、朝鮮有事に備えて築かれた米軍の軍事施設である。山田弾薬庫は瀬戸内海に面した米軍・広弾薬庫と結ばれ、緊急時に弾薬の洋上備蓄を行ない、朝鮮半島方面への緊急移送ができるシステムができている。また米軍・秋月弾薬庫(広島・江田島)は精密誘導爆弾などの組み立てと最終調整を行い、短時間で岩国基地に運び込む後方支援能力を持っている。 軍事的には、ここに米軍の巨大な朝鮮半島シフトが構築・強化されているという指摘ができるのである。 岩国基地に米空母が接岸可能な桟橋の建設だが、これは横須賀基地(神奈川県)が海上交通の激しい浦賀水道に面していることや、羽田空港に近いことから、石油タンカーや旅客機の自爆テロに弱く、その避難先として岩国が活用されることを示している。しかし横須賀基地の政治性(東京に近く、首都圏にある)やハワイにはない高度な艦船修理施設のため、原子力空母が横須賀基地と縁を切ることはできない。そこで朝鮮半島有事では、本籍が横須賀で、現住所が岩国という使われ方をすると推測できる。 そのようなことを考えながら、基地容認派も反対派も、これからの岩国基地の問題を考えるようにお勧めする。また近い将来、朝鮮半島が統一され軍事危機の脅威が下がっても、米軍はいつでも使えるように岩国基地を手放すことはない。 ※最初、エンジンが500CCと書いていましたが、読者の方のご指摘で700CCとわかりました。訂正して、間違いをお詫びします。 |
駐留米軍 イラク駐留規模維持 大幅削減は適切でない (産経 4月9日 朝刊) |
[概要]イラク駐留多国籍軍のペトレイアス司令官は8日、7カ月ぶりに米上院軍事委員会の公聴会で、イラク情勢について報告した。注目の米軍兵力の削減については、治安回復のために昨年増派された陸軍5個旅団などを7月末までに撤退させる一方で、その後の兵力削減は45日間の評価期間に治安情勢の推移を見極め、改めて判断する方針を示した。これにより、ブッシュ政権が続く来年1月まで、約14万人の米軍駐留兵力が基本的に維持されることになった。 ペトレイアス司令官は米軍増派やイラク治安部隊の能力向上で、治安回復の効果を上げたが、国際テロ組織アルカイダ系武装組織や宗派勢力の活動を懸念して大幅な兵力削減が適切でないと見通しを示した。 [コメント]昨日の公聴会でわかったことは、次の米大統領がホワイトハウスに入るまで、ブッシュ政権はイラク駐留米軍を情勢が混乱するのを避けるため、現状を維持するということである。口の悪い言い方をすれば、ブッシュ大統領は何もしないで次の政権にイラク問題を丸投げしたということになる。 ブッシュ政権は昨年春からの陸軍5個旅団の増派で、イラク駐留米兵は最高16万8000人に達していた。(朝日新聞 4月9日 朝刊) それを元の14万人規模まで減らして、アルカイダや宗派間の動きを見るという考えである。なんら積極的な動きでないことは容易に理解出る。 またイラクから撤退する米陸軍5個旅団は精鋭の”ストライカー戦闘旅団”で、大型輸送機などの多用で、地球規模の緊急展開を重視して編制された部隊である。この部隊はイラクから容易に撤退できるが、同時に再派遣も容易な機動部隊なのである。 03年3月にイラク戦争が始まって9ヶ月が過ぎた頃、まったく好転しないイラク情勢に、「やがて米軍は切り札のストライカー戦闘旅団をイラクに投入する。それでイラク情勢が劇的に好転する」と話した国際政治専門家(テレビ番組で対談)を覚えている。そのストライカー旅団を投じても、イラクで暗躍するテロリストやゲリラを壊滅させることはできなかった。 とにかくブッシュ政権のイラク戦争では単純な誤算が多すぎる。独裁者フセインを権力の座から引きずりおろしても、イラク国民は米軍を白馬に乗った解放軍とは見てくれなかった。期待したイスラム圏の国からイラク駐留の多国籍軍に加わる国はいなかった。これではイスラム教対異教徒という構造になってしまった。旧イラク軍の武装解除が不完全だったために、155ミリ砲弾などを差し押さえることが出来ず、改造して威力のあるIED(路肩仕掛け爆弾)を大量に製造させ、米軍や市民に大きな損害と犠牲を被ってしまった。などなど。 アメリカの次期大統領は、ほぼオバマ候補に決まったという私の認識は変わっていない。あとはオバマ候補の現実的かつ積極的な対応に期待したい。 |
コラム 記者の目 「イラク状況好転」 まやかしだ 米兵の危機、 低下しただけ 「大爆発前の小康」の感 小倉 孝保 記者 (ニューヨーク支局) (毎日 4月8日 朝刊) |
[概要]3年半振りにイラクを取材した。今年3月、ブッシュ大統領はイラク戦争開戦から5年目にあわせて「現地の状況は好転した」と演説した。それをバクダッドのホテルで聞いて、現実離れの誤魔化した言葉の羅列と思った。ホテルのあるグリーンゾーン(米軍管理地区)周辺では、連日、迫撃砲弾や爆弾の音が響いた。明るい兆しはない。それが現地の実感だった。 バグダッド空港に到着すると、契約していた元英軍に勤務した英国系警備会社の男性が待っていた。重い防弾チョッキを手渡しながら、ホテルまでの状況を説明してくれる。「ひところよりやや迫撃砲などによる攻撃は減っている。しかし一部の地区ではアルカイダや系の民兵組織など、外国人を狙ったテロ、誘拐を狙う組織は今も多い」。 あらかじめイラク入りをする前に、取材したい事柄を挙げていた。▽フセイン大統領の故郷ティクリート ▽反米闘争の拠点だったファルージャ ▽シーア派の聖地カルバラやナジャフ 、などを訪問して住民の感情を探りたい。しかし米政府が言う「イラクの治安は改善傾向で、取材は可能」という説明は間違っていた。イラク人の助手は、「あなたが挙げた中で、外国人が取材できるものはほとんどない」という。結局、取材できたのはグリーンゾーン外でのバグダッド・ルポとイラク警察の同行取材だけだった。現状は米政府の説明とかけ離れていた。 取材してみると、マフディ軍の暴走はひどかった。「ガソリンスタンドの売り上げの20パーセントを脅し取る」「道路清掃などの公共事業の上前をはねる」「裕福な家庭の子どもを拉致して身代金を取る」。それらを米軍が知らないはずがない。それでも「イラク状況は好転」と言えるのか。 治安以外の問題も大きくなっていた。宗派間の憎悪は今後長きにわたり解消されないだろう。国造りを支えるテクノクラートは大量に国外に脱出した。政府職員の汚職体質は旧政権時代より何倍も汚い。問題の根本的な解決は何もされず、むしろ大爆発前の小康状態といった感さえ受けた。
[コメント]昨年の秋頃から、ブッシュ大統領が決断した米軍の増派によって、イラクの治安が劇的に改善され、米兵の犠牲者も激減してきたという報道が多かった。しかし私は疑っている。イラクで戦闘が少なくなったのは、米国内でイラク戦争が国民の支持を失い、大統領選挙よる政権交代で駐留米軍のイラク撤退が事実上見えてきたからと思っていた。 そのためマフディ軍などのは兵力の消耗を避け、資金や武器を補充し、来るべきイラク政権の主導権争いに備えている「補強」作戦と見ていた。この記事がいう大爆発とは、米軍がイラクから撤退(あるいは規模縮小)して始まるイラク政権の主導権争いである。そのためには、今は闘争資金をかき集め、兵力を温存(あるいは拡張)させて、十分な武器・弾薬を蓄積させる時期なのだ。 イラクのマリキ首相はそのことを強く警戒し、恐れているのである。そのことに駐留米軍が気がついても、へたにマファディ軍に手を出せば、次は米兵犠牲者の増加という数字で現れてくる。だからイラクの米軍は来るべき大爆発に備えて動きが取れないのである。 もう戦略(作戦)の失敗は兵士たちの努力(戦術)では補えないのだ。しかし何もせずにただ大爆発が起こるのを待つことも愚かである。その大爆発が中東戦争という新たな大規模戦争の導火線になる可能性もある。そのために日本は、国際社会は、何が出来るのか。何をするべきなのか。それが見えてこない。 |
@北朝鮮「軍事対応」を宣言 対韓国 武力衝突の危険も (毎日 4月4日 朝刊)
南北対話 A北朝鮮が「全面中止」 軍事境界線も遮断方針 (朝日 4月4日 朝刊)
北朝鮮 B「韓国と対話中断」 謝罪要求拒否に報復 C平壌、食糧配給を中断 韓国NGO 餓死者発生の恐れ (産経 4月4日 朝刊)
北朝鮮軍 D「南北対話を全面中止」 (読売 4月4日 朝刊)
(○番号は神浦が加筆) |
[概要]今日の全国紙・朝刊4紙で、北朝鮮関連記事の見出しを並べるとこうなる。何やら朝鮮半島情勢が怪しげな雰囲気になってきた。というのは北朝鮮が対韓国との緊張を高める”瀬戸際外交”に舵を切ったからだ。ーーー北朝鮮当局は、開城(ケサン)工業団地から韓国政府関係者の追放、黄海での短距離ミサイル発射、北朝鮮の労働党機関誌「労働新聞」で李明博大統領への名指し非難を開始した。李明博大統領が「北朝鮮が核放棄と経済解放を行えば、国際社会と協力して韓国も大規模経済協力を行う」とした”対北朝鮮政策”を揺すぶるためである。また李大統領を名指し非難したことで、李政権内で南北対立の危機感をあおり、李大統領を支えるハンナラ党が優位な状況での韓国総選挙で、野党を後押ししたい思惑もある。(読売 4月3日 朝刊)ーーーそのためなら、多少の軍事衝突も辞さないという強い意志を”軍事衝突”という手段で行う可能性が高まっている。 そこで今日の各朝刊のポイントを、重複を避けながら概要を説明すると、 @ 北朝鮮の海軍司令部は3日、韓国軍鑑3隻が同日正午前に、北朝鮮の黄海南道南方海域で領海侵犯し「重大な軍事的挑発行為」を行ったと発表。同様の事態が続けば「予想外の対応措置が伴う」と警告した。韓国軍は領海侵犯を否定。米韓が海上の軍事境界線とみなす北方限界線(NLL)の南側で通常の警備任務を果たしたと説明した。しかし北朝鮮はNLLを正式な境界線と認めていない。3日の警告で、北朝鮮がNLLの南側にいる韓国軍艦艇に武力衝突を仕掛ける可能性が高まった。 A 韓国軍の金泰栄・合同参謀本部議長が国会の人事公聴会で、「北韓(北朝鮮)に核攻撃の兆しが見れば核基地を先制攻撃する」と答弁したことで、北朝鮮は3日、この件で韓国政府の謝罪を求め、南北対話を全面中止し、韓国側当事者が軍事境界線を通過することを全面遮断することを明らかにした。
B 北朝鮮は3月末から連日、韓国批判を続け、1日には李大統領を初めて名指しで「逆徒」と呼ぶなど、言葉のトーンを強めた。この時期に緊張を高めるのは、4月末に予定されている米韓首脳会談への牽制の意味が大きいと観測されている。 C 韓国の非政府組織(NGO)で、北朝鮮の人権ウオッチ団体の「良き友人」は3日、ニュースレターで「平壌の食糧事情が極めて悪化しており、4月からの6ヶ月間、平壌のすべての区域で食糧配給が中断される」と明らかにした。「1990年代後半に起こった”苦難の行軍”時代にもこれほど長期間、配給が中断しなかった」と話す北朝鮮・幹部の話も伝え、5月以降に大量の餓死者が出る可能性があると指摘している。平壌をはじめ主要都市では、今月中にも餓死者がでるという噂がひろがり、住民を不安に陥れている。北朝鮮では今がちょうど共同農場で苗付け準備を行う時期だが、苗や肥料、ビニールシートなどの農資材入手が困難だという。 一方、中国政府は北朝鮮からの越境者を取り締まるために、3月から中朝国境の取り締まりを、突然、厳しく強化した。 D 韓国の聯合ニュースによれば、韓国の李大統領は3日、北朝鮮の動きに初めて言及し、「過去のやり方から少しは脱するべきだ」と慎重な対応を求めた。
[コメント]韓国のみならず周辺国にとっても、北朝鮮はなんとも迷惑な隣人である。援助が少なくなると勝手に難癖をつけて喧嘩を仕掛け、勝ち目がないと分かればアイタタタと叫んで大騒ぎを起こして国際社会の注目を集めようとする。以前、北朝鮮をヤクザ国家とよんだ人がいたが、まったくその通りだと思ってしまう。あいかわらず瀬戸際外交という恫喝を仕掛け、相手が怯えることに期待している。そのために自分自身の足元が崩れようとしているのに気がついてない。毅然とした対応が北朝鮮の自分勝手なわがままを阻止できる。 北朝鮮の核実験と自らの核保有宣言も、核兵器を持てば”先制攻撃の恐怖”に晒されるのは当然の結果である。本物の核兵器は案山子(かかし)ではない。核攻撃の兆候が現れれば、相手国は核攻撃を受ける前に先制攻撃で阻止することは軍人の務めである。韓国の金泰栄・合同参謀本部議長の答弁に全く問題はない。韓国と具体的なやり方は違っても、日本やアメリカや中国もまったく同じ方法を選択する。核武装すれば先制攻撃を受ける可能性が高まることを知らなかった北朝鮮の無知に驚くばかりだ。(核戦略では勝手な言い分は通用しない)。 いつも言うことだが北朝鮮の今の季節は、昨秋に収穫した穀物の米やイモなどの保存食料を食べ尽くし、厳寒の冬が明けて、人々が食糧を求めて移動を始める時期である。北朝鮮では4月末の連休頃から、夏野菜が採れる6月末までは、厳しい食糧不足が人々を苦しめる時期なのだ。 さらに今年は、秋には収穫が期待できる苗付けも出来ないとなると、失望した人々の怒りは予測不可能な状況を生み出してくる。その意味からすると、北朝鮮は核実験(06年)と李大統領の誕生で、今までにはない緊張に直面していると推測できる。金王朝で最悪の緊張状態である。 なお、軍事衝突の場所を、NLL海域付近に設定するのは、限定した海上であれば軍事衝突が広域に拡大するのを防げるからである。急な交戦に援軍を増派ができず、周囲の部隊に飛び火する可能性が低いからだ。北朝鮮はそのことを計算してNLL海域を指定している。これは、おもちゃの様な対艦ミサイルを発射して威嚇出来ると考えるのと同じ発想である。硬直した北朝鮮の体制では、それ以外の方法や手段で援助を請うことができないのも現実である。 |
タクシー殺人容疑 米兵きょう逮捕 イージス巡洋艦「カウペンス」 上等水兵(22) (毎日 4月3日 朝刊) |
[概要]神奈川県横須賀市でタクシー運転手の高橋正昭さん(61)が刺殺された事件で、県警は3日、米軍に拘束されているイージス巡洋艦「カウペンス」の上等水兵(22)について殺人容疑で逮捕状を請求し、日米地位協定の運用改善合意に基づき起訴前の身柄引き渡しを求める。米軍側は事件発生直後から捜査に全面協力する意向を示し、同日中に逮捕する方針。 2年前の強盗殺人事件後、米軍は兵士の門限や飲酒禁止時間を設け、地元の飲食店などが打撃を受けた。米軍は今回も2〜7日に同様の措置をとる。これに対し、米兵向けバーなどが軒を連ねる「ドブ板通り」では、飲食店の経営者が米兵の犯罪で犠牲になるのはドブ板の景気だと嘆く。 米兵の犯罪や事件に「反基地」の機運が高まる沖縄と比べ、旧日本軍の軍港であった横須賀は、今まで自衛隊や米軍と共存してきた。しかし地元の交流関係者たちは、米軍兵士の凶悪犯罪で「友好関係」が揺らぎだしてきたと実感している。 [コメント]横須賀の2年前の強盗殺人事件では、路上(マンション)の防犯カメラに映った主婦(56才)を足蹴りにする米兵の暴行画面が公開された。まさに暴行はリンチそのもので、見ていても気持ちが悪くなるほどの凶悪ぶりだった。しかし20年前なら、犯人の米兵は基地に逃げ込めば安全だった。米軍は犯人の兵士を日本の警察に引き渡さず、さっさと帰国させてしまったからだ。日米地位協定でそれが正当化されていた。 しかし95年に沖縄で発生した米海兵隊員(3名)が、女子小学生(12才)の拉致、集団強姦した事件で、沖縄県民の怒りが爆発し、在沖米軍への反基地運動が高まった。そこで日米政府は、日米地位協定の運用・改善をはかり、殺人や強盗事件など凶悪事件に限り、米軍側は日本の捜査当局に対し「好意的な配慮を払う」と合意文を付け加えた。たったそれだけある。 日米政府共に、日米地位協定の”全面見直し”という事態は避けたいという意図がある。全面改正こそは米軍が日本に駐留することを不可能にするからだ。すなわち今の日米地位協定こそ、米軍の日本支配の具体的な象徴(本質)であるからだ。 その在日米軍に日本は異例の高額である”思いやり予算”を献上していた。豪華な住宅や体育館はもちろんだが、米軍基地内のパーティーで使うナイフやフォーク、配膳をするボーイさんの制服まで、日本政府の大判振る舞い「思いやり予算」である。それが1978年の開始以来、今月4月に初めて予算執行が止まった。この機会に日本で在日米軍の駐留経費負担を議論するのはよいことと思う。安保ただ乗り論などといわせないためである。 |
グルジア ウクライナ加盟反対 ロシア、NATO牽制 米、ウクライナ支持 (朝日 4月2日 朝刊) |
[概要]2日から始まるNATOの首脳会談で、加盟を希望する旧ソ連圏のウクライナとグルジアの扱いが焦点になっている。米英は次期加盟を強く押しているが、ロシアは安全保障上大きな脅威になると激しく反発し、フランスやドイツは慎重な対応を見せている。 ロシアは。「ウクライナの加盟は、ロシアとの関係に深刻な影響を及ぼす」とカラシン外務次官が1日、下院・公聴会で警告した。さらに下院議員から、ウクライナがNATO加盟候補国に認定されれば、両国との友好協力条約(ウクライナにクリミア半島の領土保全を認める)を破棄すべきという主張が出た。これはロシアがクリミア半島の領土要求を蒸し返すと意思表示だ。また3月下旬に、ロシア下院はグルジアがNATOに加盟した場合、親ロシア勢力がグルジアから分離を求めているアブハジアと南オセチアの独立を承認するようにプーチン大統領と政府に求める決議を採択した。 旧ソ連で第2の大国だったウクライナに人口は4600万人。すでにNATO加盟を済ませたバルト諸国とは影響力が比べものにならない。国内には親ロシア的な東部と、欧米への志向が強い西部と分裂した状態にある。グルジアは欧州と中央アジア、中東などを結ぶ戦略上の要衝に位置している。また、チェチェンなど民族紛争の火種を抱える北カフカス地方とも国境を接している。 近隣国では、ロシアから天然ガスを含め大量のエネルギー供給を受けている。これ以上のロシアとの関係悪化は避けたいのが本音だ。NATOの決定には全加盟国の支持が必要なため、このままではグルジアとウクライナの加盟候補国認定は来年の首脳会談に持ち越されそうだ。 ブッシュ大統領は1日、ウクライナの首都キエフでユーシェンコ大統領、チモシェンコ首相と会談し、NATO加盟候補国としてウクライナとグルジアを認定することを強く支持すると表明した。ブッシュ大統領はルーマニアで開催されるNATO首脳会談に出席の後、ロシアのプーチン大統領と会談し、米国が主導するミサイル防衛(MD)網の欧州配備問題で合意を取り付けることを目指す。 [コメント]最近、01年に買った「西南アジア地図」(昭文社刊 9千万分の1 01年10月1日発行 500円)を見ることが多くなった。この発行年月日が示すように、アメリカの同時多発テロを受けて、間もなく始まる米軍のアフガン戦争のために緊急出版された地図である。しかしこの地図はチベットや中央アジア、それに今回問題になっているグルジアやウクライナを含んでいるので、最近、再び見る機会が多くなった。 そこで気がついたのだが、ウクライナの首都キエフとモスクワの距離の近さである。これでロシアの裏庭というよりも中庭までNATOが勢力を拡大したという脅威も分かる気がする。その上、グルジアはチェチェンのゲリラが活動しているカスカス山脈に接してる。ここにイランの革命防衛隊が浸透して、チェチェン武装勢力をサポートし出すと大変な事態になる。 そこまで緊張した一帯(火薬庫)を、ブッシュ大統領は本気で手に入れて親米政権を樹立する気はないと思う。むしろアメリカの欧州版MD配備で、ロシアから譲歩を得るために、ロシアの嫌うウクライナ、グルジアNATO加盟問題を利用しているのではないか。この地図を眺めていると、ロシアの危機感ばかり浮かんでくる。 |
新型 迷彩コート(外套)を開発 光、熱を遮断 車両にも応用可 防衛技術研究所が快挙 2012年にも実用化 (AF通信※ 4月1日 電子版) |
[概要]防衛装備品の研究・開発を行っている防衛技術研究所(防衛省所轄)は、1日、画期的な戦闘用迷彩コート(外套)の開発に成功したと発表した。これはノートパソコンなどの表示ディスプレーに使われる液晶画面を極限に薄くし、0,2ミリの厚さにもかかわらず、新開発の炭素材繊維でコーティングした結果、折り曲げたり、たたんで収納できるほか、雨天や雪といった自然環境(生活防水)に十分耐える品質になった。これを戦闘服の上に着用するコート(外套)に加工したり、車のシートカーバーとして使用することも可能だ。 発色のシステムは付属の小型パソコン(ベルト着用)で調色して、43万5000色のカラーを組み合わせで発光させる仕組み。腰に付けたパソコンを自動調色にセットすると、センサーが周囲の色に感応して、最も環境に近い色彩を発光することが出来る。兵士が移動していくと、自動的に調色が行われ、常に最適の色環境に変色することができる。またこのコートには赤外線を遮断するので、夜間などに敵の赤外線センサーで体温を探知されることはない。 さらに迷彩コート(カバー)が人や車両を覆うことで、膨らみや凹みの質感を、だまし絵よのように光線の強弱と陰影でなくすことができた。防衛技術研究所の開発担当官は、「これで兵士の全身を覆うころで、透明人間のような効果を得ることが出来、車両なども敵に察知されることなく移動が可能です」と誇らしそうに語った。一着のコストは1万着程度生産すれば100万円以下という試算もあり、これからの戦争を画期的に変化させるものとして期待されている。 すでに米国防総省の最先端兵器研究所から問い合わせがきているが、日本は武器輸出禁止3原則のため、米国であっても軍事製品は輸出できない(技術提供のみ)として、この迷彩コートの情報提供を拒んでいる。そのため、この迷彩コートが新たな日米防衛摩擦に発展する可能性があると指摘する防衛省高官もいる。 [コメント]この戦闘用・迷彩コートは、はたして開発可能かという問題ではなく、いつ、誰が、どの様に実用化できるかという点に関心が集まっていた。それを最初に実用化のめどを付けたのが日本ということになった。ここは防衛技術研究所の快挙を率直に喜びたい。 まさに兵士の透明人間化である。開発官に聞いた話しでは、演習場などの野外では数十メートルまで近づいても気がつく者はいないそうである。まさにRMA(軍事革命)についで兵士のステルス革命が始まった。日本はこの軍事技術を決して外国に公開せず、不必要な軍拡競争を起こさない配慮が必要である。 しかしあくまで日本は防衛的に使うべきで、専守防衛に沿った活用に限り、いやしくも海外に侵攻戦争を有利に戦うために使用してはいけない。また、開発関係者がこの軍事技術を中国などに漏洩した場合、懲役10年以下の「特別防衛秘密」に秘密指定するように提案する。 ※ AF通信とは、April Fool の略です。すなわち 「4月バカ」。すでに皆さんも気がついたと思いますが、この件で防衛省などに問い合わせなど、なさらぬようにお願いします。来年は写真(偽造)を準備して大作を仕掛けます。ゆめゆめご油断なさらないように。 |
※これ以前のデータはJ−rcomFilesにあります。