特別インタビュー

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水野敬也さん 自己啓発書「サブさ」に突っ込み 「夢をかなえるゾウ」を語る

水野敬也さん
水野敬也さん

 型破りな神様「ガネーシャ」が主人公を導くという、異色の自己啓発書「夢をかなえるゾウ」の発行部数が、先月末、100万部を突破した。ガネーシャが示す古今東西の成功法則に主人公が反発しながら挑戦し、その軽妙なかけあいも魅力の一つだ。著者の水野敬也さんは、デビュー作「ウケる技術」(共著、インデックス・コミュニケーションズ)やDVD「温厚な上司の怒らせ方」(ビクターエンタテインメント)など、これまでさまざまな活動で注目を集めてきた。水野さんに話を聞いた。

-- 本作を書くきっかけは。

 「三日坊主のための成功法」があればおもしろいと思いまして。ぼくはいつも自己啓発書を読んで、そのときは書いてあることを実行するんですが、だいたい続くのが3日ぐらい。その後は、続けられなかった自分にへこむんです。だからそうならない、ハードルの低い自己啓発書があったらいいと思いました。ただ、当初は、見開きに一つ成功法則が書いてあるような形を考えたのですが、全然おもしろくなかった。「なんでつまんねぇんだ」と考えてみて、本の一番大事なポイントは、読む前と読んだ後で、読者が「自分は変わった」と思えないとだめだと思ったんです。そこで、これはストーリーが必要だということで、当時「サラリーマンと神様」という、まったくべつの絵本のアイデアがあったので、これを被せてみました。その後、おもしろい神様は誰だろうと世界の神様を調べていたら、ガネーシャが一番おもしろかったんです。特に顔が。

-- 一般的な自己啓発書とは、ずいぶんスタイルが違いますね。

水野敬也さん
水野敬也さん

 自己啓発書を多く読んできた人間として、そのだめな部分が見えていたんです。まず自己啓発と聞いて、ちょっと気持ち悪いと思う。なぜなら著者が教祖、読者が信者という関係だから。要するに、突っ込みがないんですね。あとは、成功した人が書くというのは、説得力はあるものの、単純に「自慢じゃねぇか」と。それと一般的な自己啓発書は「この本を読んで、あなたはお金持ちになるよ」などと読者の期待をあおるのですが、結局、魔法が解けるのも早いんです。1週間1カ月と現実を生きてみると、そんなにうまくはいかないんですよね。

-- 自己啓発書をよく読まれるとのことですが。

 自己啓発書と恋愛マニュアル本はよく読みましたね。中学・高校時代、女の子としゃべったこともない「暗黒の6年間」を経て「モテるために大学に行く」と。で、大学に入ってモテるかなと思ったら、全然モテない。そこで、恋愛マニュアル本を読みはじめました。やがて就職活動となると、就職マニュアル本や自己啓発書を読む。自分に自信がないんです。ただ、読んでいても「これは違うぞ」と、あまのじゃくな視点もあるんですね。もともと世の中のものを「減点法」で見るくせがありまして。特にすごい人と会うと、ついその人の欠点を探すところから始めてしまう(笑)。器が小さいというか。恋愛マニュアル本もそうですが、「恋愛マニュアル本を読んでいるおれってサブい」ということは、誰よりも自分が分かっています。でも「サブい」という思いがあっても、一方で「モテたい」という思いもある。この両方がせめぎあっているからこそ、それを笑いという手段で緩和するスタイルができてきたのかもしれません。

-- 「ウケる技術」から本作まで、少々時間が空きましたが。

水野敬也さん
水野敬也さん

 「ウケる技術」が売れたあと、あるビジネス書の著者がアドバイスをくれまして。「こうしたらもうかるよ」と。で、当時、右も左も分からないピュアな人間だったので(笑)「じゃあ、もうけなきゃ」と。当時、メルマガやブログを使ってビジネスをするというのがはやっていたので、そちらを研究していました。特に2005年あたりは「お金持ちになるぞ」と、一番考えた時期です。でも結局、同時に手がけていたプロジェクトと、どっちつかずでうまくいきませんでした。その後、幼なじみの古屋雄作(演出家)が、自分のDVDをTUTAYAに並べたいというので「ビジネスよりもモノづくりをやろう」と、古屋をサポートし始めました。その中で「温厚な上司の怒らせ方」が生まれたりしたんです。

-- これまで様々なことをされてきましたね。

 全部、今に至るのに必要な経験でした。というのも、ぼくが思うに、まずエゴから始まらないとダメだと思うんです。自分が楽しいと思えることを、どんどんやっていく。例えば「MIZUNONNO(ミズノンノ)」というプロジェクトをやっていた時期があるんですが、ファッションリーダーを目指すために、まず持っている服を全部燃やして全裸から始めたら、おもしろいんじゃないかって。それで実際やってみたんですけど、やってみるといろんなものが見えてくるんです。「お金にならない」とか「誰かに迷惑をかけてしまう」とか。どんどん世界が見えてきて、最終的に「みんなが喜ばないと、そんなには気持ちよくない」というところに行き着くんですね。エゴから始まり愛に向かうという流れです。つきつめていくと成功法則というのは、よく言われていることですが「他人の喜びを自分の喜びにちゃんと、自然に書き換えられるか」ということなんですよね。

-- 読者に一言お願いします。

水野敬也さん
水野敬也さん

 ダメ出しが苦手な男なんです。どれだけ褒められても、一言のダメ出しが心にひっかかってしまいます。というわけで、次のいい本を待つのであれば、とにかく褒めてください。突っ込みはちゃんと自分で入れます。自分の感性は、誰よりも自分が一番疑っていますから。

<プロフィール>

水野敬也(みずの・けいや)1976年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒。2003年に刊行されたデビュー作「ウケる技術」で注目される。他に「BADLUCK」(インデックス・コミュニケーションズ)や「LOVE理論」(大和書房)などがある。また、DVD作品「温厚な上司の怒らせ方」を手がけるなど、活動は多岐にわたる。

2008年5月8日

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