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胡・中国主席:来県 歴史的きずな強調--チベット問題で抗議活動も /奈良

 ◇厳戒態勢の中、歓迎

 中国の胡錦濤国家主席は10日、法隆寺や唐招提寺を視察後、奈良市の県新公会堂で荒井正吾知事らと会談した。胡主席は中国と奈良の歴史的なきずなを強調。県側は歓迎一色で、会場は友好ムードに包まれた。一方で、訪問先の周辺ではチベット問題への抗議行動も続出。県警は過去最大規模の3000人を超える厳戒態勢で警備した。【中村敦茂】

 国家元首の奈良訪問は92年の米国・ブッシュ大統領以来。県新公会堂での会談は、予定の2倍の約30分間に及んだ。

 胡主席は「法隆寺や唐招提寺は両国の友好往来の証し」などと繰り返し日中の文化面でのつながりの深さに言及。「(中国から渡り唐招提寺を開いた)鑑真和上の精神を受け継いで中日友好を推進したい」などと、「戦略的互恵関係」を目指す外交において、文化交流促進にも力を入れる考えを示した。また「日本の皆様と触れ合い、中日友好の大いなる将来性を感じた」と5日間にわたった訪日の成果を強調した。同席した冬柴鉄三国交相は「2010年の平城遷都1300年にはぜひもう一度ご来県を」と述べ、北京五輪の成功にエールを送った。

 レセプションホールの昼食会では荒井知事らと、観光産業や内需拡大などについてリラックスした様子で語り合ったという。

 会場周辺や最寄りの近鉄奈良駅前の国道沿いなどでは、雨の中、レインコート姿の大勢の警官や警察車両が警戒。胡主席が車で県新公会堂を離れるのに合わせ、「フリー、チベット」と叫んで車に近寄ろうとする男性もいたが、警官に取り押さえられ、大きな混乱にならなかった。

 ◇友好/デモ/再見…ドキュメント

 中国の国家主席として、初めて奈良を訪れた胡主席。来県を巡る10日の動きを追った(数字は時・分。24時間制)。

 8・15 法隆寺の南大門前に多くの警官がものものしく並ぶ。古谷正覚執事長は「無事にお参りしていただけることを祈るだけです」。

 9・00 寺の近くに住み、ボランティアガイドもしている石原孝子さん(70)は「近くに住む人間として、国家主席に法隆寺を見てもらえるのはうれしい」と話す。

 9・47 胡主席を乗せた車が法隆寺付近に差し掛かった時、観光客らの中から2人の若い男性が「フリー、チベット(チベットに自由を)」と叫び、警官に取り押さえられる。スーツのポケットからチベットの旗を取り出した男性の姿も。男性は「チベットの問題を我が身に置き換えるといたたまれない。何か伝えなくてはと思った」。

 9・48 胡主席を乗せた車が法隆寺の南大門前に到着。車を降りた胡主席が大野玄妙管長や荒井正吾知事と笑顔で握手。

 9・53 大講堂や上御堂を拝観。大野管長から、中国の文化を学び日本を平和な社会にしたいと願った聖徳太子の話を聞いた胡主席が「両国の人民は仲良く平和であればいいですね」と話す。

 10・25 胡主席の唐招提寺到着前、チベット問題に抗議する約50人が駐車場でチベットの旗や「FREE TIBET!」と書いたプラカードを掲げてシュプレヒコール。

 10・40 胡主席が唐招提寺南大門に到着。松浦俊海長老から「創建1250年を迎えます」などと説明を受けて笑顔。

 11・03 駐車場で中国国旗を掲げた中国人数人とチベット支持者らがもみ合いに。

 11・30 唐招提寺の御影堂で、雅楽を演奏した南都晃耀会の木村寛会長(73)は「雨の中、演奏するのは格別な趣がある。胡主席も喜んでもらえたのでは」と話す。

 11・31 平城宮跡到着。「熱烈歓迎」の横断幕を掲げ「日中友好、中日友好」と声援を送る留学生らに手を振り朱雀門へ。

 11・35 冬柴鉄三国交相の案内で朱雀門に登壇。「2010年にはぜひ奈良を訪れて」などの話に笑顔で応える。

 11・40 唐招提寺南大門前で休憩所を営む仲村繁夫さん(80)は「日中友好が深まることを願います」と笑顔を見せる。

 11・45 十輪院(奈良市)でチベット暴動の犠牲者追悼法要終了。橋本純信住職が「お経の声がとても元気よく、チベットに届いているのではと思うと感極まった」と声を詰まらせる。

 11・58 荒井知事らとの会談開始。

 12・00 京都から奈良市にドライブに来た梶泰武さん(67)は「福田康夫首相は、チベット問題などにもっと強く注文してほしかった。本当の友人ならそんな態度を望むはず」と辛口の評価。

 12・08 県新公会堂で歓迎演奏をした天理高吹奏楽部キャプテン、松永理仁さん(17)は「演奏でき、うれしく思います」。

 12・28 胡主席が荒井知事に鑑真像を贈呈、除幕。

 13・30 胡主席が県新公会堂を出る。見送りの園児らが中国語で「再見」。

 13・33 男性3人が「フリー、チベット」と叫ぶなどして胡主席の車に走り寄り警官に取り押さえられる。

 13・40 奈良ホテル着。

 13・45 昼食会に出た藤原昭奈良市長は「市民レベルの友好は意味があると感じた。草の根の国際交流が地方公共団体の果たす役割」と感想。

 14・13 県庁前に「日中友好」を掲げた観光用の時代かごが現れる。運営する「やじきた屋」の大西尚さん(52)は「訪問に合わせて歓迎の気持ちを表した。ギョーザ問題や歴史認識を巡る対立はあるけれど、来県とは別の問題。奈良へ来て良かったと感じてもらえれば」と話した。

 14・53 奈良ホテル出発。

 15・10 大阪府に入る。

 15・35 JR奈良駅前に集まった約200人のデモ隊が「チベットに自由を」などと声を上げながら出発。

 15・56 デモ隊が猿沢池に到着し、デモを終了。

 16・02 デモに参加した大阪府岸和田市、NGOメンバー、重綱篤さん(28)は「中国は人権問題にも目を向けてほしい」。

毎日新聞 2008年5月11日 地方版

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