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あっぷるLINK:社会・地域 十和田市立中央病院・新本館が完成 /青森

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 ◇不安癒やせる場所に--最新機器入れ配色考慮

 05年9月から建設を進めていた十和田市立中央病院の新しい本館が完成し、7日から診療が始まった。世界最先端の放射線治療機器「トモテラピー」も導入するなど最新鋭機器がそろっているだけでなく、明るい配色にこだわり、芸術作品も随所にちりばめるなど、医療のイメージを一新する病院として注目される。【喜浦遊】

 新本館は、1963年に建てられた旧館の老朽化に伴って新築され、延べ面積約2万6300平方メートル。1、2階が外来、3~6階が病棟。病床数は計379床で、総工費は約140億円。

 同病院の建設に深くかかわってきた蘆野(あしの)吉和院長は05年11月、福島労災病院外科筆頭部長から十和田市立中央病院長に就任。福島労災病院ではがん治療に携わり、1980年代前半から鎮痛薬の予防投与を始め、在宅ケアにも積極的に取り組んできた。現在は全国で講演をし緩和ケアの普及に努めており、現場を見続けてきた豊富な経験が今回、一つの形になった。

    ◇

 具合が悪いときに行くところ。それが多くの人が考える「病院」だ。だが蘆野院長は「病院は地域文化の中心になるべきだとずっと思ってきた。ミュージアムのような雰囲気作りをし、患者に限らず、来る人の不安を癒やせる場所にしたい」という。

 そのため、フロアごとにテーマを決めて色彩を統一。十和田のよさを再認識してもらうため、新緑の黄緑や紅葉のオレンジなど十和田の四季をイメージし、地元の写真家が撮った八甲田連峰やおいらせ渓流の写真を飾った。絵画や彫刻も配置し、1階には寄贈されたグランドピアノも。現在は市内の音楽家による演奏会を画策中だ。

 2階のレストランはウッドデッキ付きで、春は目線と同じ高さに官庁街通りの桜が広がる。蘆野院長は「患者でなくても、十和田市現代美術館の帰りにこっちも寄ってもらうなど、文化的情報も発信したい」という。

 医療機器は、東北初、全国で10台目の導入となる「トモテラピー」が目玉だ。がんの形に合わせて放射線を多方向から照射し、患部をピンポイントに狙うため正常組織の損傷が少ない。同病院は導入により、県内外からの患者増を見込んでいる。

 こうした対策の根底には「病気でもその人らしい生き方ができるように」との考え方がある。これまで同病院に放射線科はなく、患者は他の病院を頼らざるを得なかった。トモテラピーの導入でがんの初期から終末期まで、一つの病院で継続した治療が受けられるようになった。

 蘆野院長は「病状や生活スタイルに合わせ、楽に生きるための治療をする。それが医療だと思う」と理念を話し、そのためには病院を地域に開かれた明るい印象のものにする必要があるとしている。

 同病院は、在宅ケアに移行していくなかで、病院に自由に出入りしてもらい、何かあったらすぐに助けられるような施設を目指し、全国に取り組みを発信したい考えだ。

毎日新聞 2008年5月12日 地方版

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