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【主張】医師不足 地域と診療の偏在なくせ

2008.5.12 02:42
このニュースのトピックス主張

 仕事のきつさに勤務医が疲れ切って病院を辞め、産婦人科や小児科が閉鎖されていく。救急隊が連絡しても「医師の手が足りない」と病院に断られる。どれも医師不足の深刻化で、日ごろ見聞される光景である。

 医師不足には大別して(1)医師数そのものの不足(2)地域的偏在(3)診療科ごとの偏り−の3つがある。医師不足の問題を解決しないと少子高齢化の進展とあいまって医療が根本から揺らぎかねない。

 平成18年の人口1000人当たりの日本の医師数は2・1人で、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均を下回る。厚生労働省の試算でも需要に対する医師数は不足している。それゆえ厚労省と文部科学省は医師の定員(医学部の学生数)を増やしてはいる。しかし、医師の養成には時間がかかる。まずは可能な地域的偏在をなくすことから取り組みたい。

 厚労省が18年12月末時点の届け出をもとに、女性と子供それぞれ10万人当たりの産婦人科と小児科の医師数を都道府県別に初めて集計したところ、最多と最少でいずれも倍以上の開きがあった。都道府県内でも都市部に医師が集中し、郡部に少ないとの調査結果もある。間違いなく地域的に医師が偏在している。

 厚労省は医師数が足りている地域から医師不足の地域に医師を短期間派遣するシステムの構築を進めている。この対策を全国でもっと活性化させる必要がある。

 一方、拘束時間が長く、勤務がきつい診療科ほど医師が減る診療科ごとの偏りもある。産婦人科や小児科、麻酔科、救急医療を中心に勤務医が不足し、彼らがさらに過重労働となる。

 厚労省は(1)医師の事務を補助する医療クラーク(事務員)制度を導入する(2)診察時間を延長した診療所に対する報酬を手厚くして開業医に患者を分担する−といった対策をとっている。こうしたきめの細かい対策を施していくことも重要だろう。

 根本的には国民ひとりひとりが健康を維持する努力を若いときから怠らないことが大切だ。そうやって各自が病院にかかる回数を少しでも減らすことも立派な対策になるだろう。

 政府は医師不足の問題を含めた医療体制整備のビジョンを5月中にもまとめる方針だ。国民が真に安心して希望が持てる医療展望を描いてほしいものである。

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