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反移民・反EU イタリア新政権、いきなり右旋回

2008年05月10日17時30分

 【ローマ=喜田尚】イタリアのベルルスコーニ新政権が早くも「右旋回」の気配だ。内閣は8日就任式を終えたが、01〜06年の前回中道右派政権中に過激な反移民、反イスラム教の言動で辞任させられた元閣僚が復帰するなど地域主義政党「北部同盟」が影響力を拡大した。経済でも欧州連合(EU)の政策を疑問視する閣僚が多く、あつれきが懸念される。

 21人の閣僚中、北部同盟は4人だが、ボッシ党首が選挙制度改革や党是の連邦制実現を担う制度改革相に就任。第2の重鎮マロニ氏が内相に就くなど要職を握った。

 政権はベルルスコーニ首相の「フォルツァ・イタリア」と国民同盟の2党による「自由の国民」に北部同盟が加わる構成。中道連合が離脱し、右派色が強まった。

 波紋を呼ぶのは行政改革担当相のカルデロリ氏だ。前回ベルルスコーニ政権で制度改革相だった06年2月、デンマーク紙が預言者ムハンマドの風刺漫画を掲載しイスラム世界で抗議が広がった際、その漫画を印刷したTシャツでテレビに出演。リビア・ベンガジで激怒した群衆が伊領事館に押しかけ、死者が出る事件となった。

 北部同盟は同氏の副首相就任を強く求めたが、同氏は国内のモスク建設予定地にイスラム教徒が忌む豚を持ち込む運動を提唱するなど、言動を改めていない。リビアの最高指導者カダフィ大佐の次男が同氏の閣僚復帰に反対する声明を出す事態になった。

 ベルルスコーニ政権は前回も外国人への滞在許可条件を厳しくするなど、もともと移民規制に熱心だ。新政権では収入の下限など新たな移民受け入れ条件を設ける動きがある。

 一方、フォルツァ・イタリアからは首相に次ぐ重鎮のトレモンティ経済・財政相が復帰したが、ボッシ北部同盟党首に近く、反グローバリゼーション派。プロディ前政権は膨らんだ財政赤字をEUの協定内に抑え込んだが、新政権は橋建設など大型公共投資や減税を掲げる。

 また、アリタリア航空への伊政府からの3億ユーロ(約480億円)の融資が禁止された政府補助にあたるかどうかEUが審査しているのに対し、ベルルスコーニ首相は「妨害するなら国有化する」と息巻いている。

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