過去6回挑んだ高校女子の将棋3大大会で、負けたのは1局だけ。3月の選抜大会で2連覇を果たした時、相手がリベンジを誓った。「次は負けないよ」。8月の選手権3連覇に向け気合が入る。勝ち気な一方で、将棋の魅力を「お年寄りから子どもまで、仲良くなれること」と愛くるしい。
小学3年の時、友達から将棋教室に誘われたのがきっかけ。「30秒以内に指せるようになれ」。職人かたぎの厳しい師匠に鍛えられた。練習や対局で何度も泣きながら続け、中学2年の時には初めてプロに勝った。「序・中盤が弱いけど、最後は逆転する展開」と自己分析する。「いくら攻めても、シュートを決めないと勝てない」。将棋の詰めをサッカーに例える。
進学を目指し勉強にも集中する。通学電車の中で手にするのは英単語カードと詰め将棋集。どちらも、自信を深めるアイテムだ。「英語で書かれた詰め将棋集があれば、一石二鳥なのになあ」。学校では、秋の文化祭に向けてジャズダンスの練習に励む。級友と踊る楽しさは、勉強にも将棋にも必要な気分転換だ。
「大事な対局の時はドキドキするけど、(態度は)平然としてる。それで相手をビビらせる」。笑顔の中の勝負師のまなざし。今春高校に入学しライバルとなった妹にも、注がれるのだろう。【嶋谷泰典】
【略歴】室谷早紀(むろや・さき)さん。大阪狭山市で公務員の父、母、妹と4人暮らし。府立生野高3年。大学の経済学部系を志望する。17歳。
毎日新聞 2008年5月10日 0時14分