「近所の金魚は弥富のきんちゃん」(愛知県弥富市)、「キムチの気持ち」(岐阜県各務原市)--タイトルだけでも脱力感の漂うこれらのご当地ソングが、「ゆる歌」としてネットなどで話題になっている。ゆるキャラ界のトップアイドルといえば滋賀県の「ひこにゃん」だが、お隣の岐阜・愛知県から新たなブームの火がつくか。
「近所の金魚~」「キムチの気持ち」も、ともに作詞作曲は、岐阜県在住のジャズサックス奏者、小島勇司さん(28)。作品を「ジモうた」、自らを「ご当地ソングライター」と名乗る。「金魚、金魚、かわいいあの子は弥富の金魚……ランララーン いつでもみんなの人気者」「各務原、各務原、各務原キムチ~」と覚えやすいメロディーに乗せて、ひねりのない歌詞が繰り返されると、耳から曲が離れない。知らず知らずに口ずさんでしまう。
この「ゆるさ」の起源は、やはり当地のゆるキャラにあった。「キムチの気持ち」は各務原キムチのキャラクター「キムぴ~」を、「近所の金魚~」は、金魚の生産で有名な弥富市のキャラクター「きんちゃん」をモチーフにしたという。「ゆるキャラからイメージすると、どうしても音楽もゆる~くなりますねえ」と小島さん。
プロモーションビデオまで脱力しているのが「近所の金魚は弥富のきんちゃん」だ。小島さんの大学時代の後輩で、ポップグループ「ぶどう÷グレープ(ぶどうぐれーぷ)」のボーカル、近藤久美子さん(27)が、赤と白の“金魚色”のミニワンピースを着て、幼稚園児のお遊戯のように踊る。曲は昨年12月に発表し、「弥富市のPRに」と市にもちかけたところ市側も大喜び。今では市のイベントだけでなく、幼稚園などでも流されるほどの“ヒット曲”に。それぞれの園で、オリジナルの振り付けを考え、楽しんでいるという。
一方の「キムチの気持ち」は、07年6月にCDを発売し、1000枚が完売目前だ。キムチで都市おこしを展開する各務原を応援しようと作曲したところ、市の児童合唱団「かがみのキッズ」が合唱バージョンとして録音するなど、一気に広まった。「街を歩いていたら、子どもが『キムチの気持ち』を歌っていたので、うれしくなりました」と小島さん。韓国の公共放送、KBSでも、「日本のキムチ」を紹介する番組で流されたという。
従来は、演歌をイメージする人も多いご当地ソング。小島さんは「ジモうたとして、広い世代に支持される歌になってほしい。日本各地で作っていきたい」と“全国展開”へ意欲満々。「その土地に住んでいなくても、ゆるキャラでイメージし、可能な限り足を運べば、曲作りは可能です」と語る。
その言葉通り、最新作は岐阜を遠く離れた北九州市小倉の名物「小倉ロールケーキ」のイメージソング「くるくるロックンロール」。近いうちに岐阜のコミュニティ局、FMわっちのインターネットラジオから流れる予定だ。小倉ロールケーキのゆるキャラ「くるる」からイマジネーションがわいたという新曲、今度も聞いたら忘れられない? 【江刺弘子】
2008年5月10日