2008年05月11日(日)
医師や看護師の4割、「院内暴力」を経験 山梨大病院、法的措置も検討
医師や看護師ら医療スタッフが患者やその家族から暴力・暴言を受ける「院内暴力」が、全国の病院同様、山梨大医学部付属病院でも問題化している。同病院のアンケートでは、看護師の約4割が患者から何らかの「暴行」を受けていると“告白”。病院側は激務に加え、「院内暴力」によるストレスが離職の要因の1つと位置付けており、「状況が改善しなければ『医療崩壊』が起きかねない」として悪質なケースは法的措置も視野に厳しく対処する考えだ。
「おれの薬だけ処方がなぜ遅い。説明をしろ、院長を出せ」。昨年秋、同病院1階の受付で中年男性が声を荒らげた。応対に出た職員が「特別に遅いわけではない。もう少し待ってほしい」と説得したが、男性は大声で罵声(ばせい)を浴びせ、立ち去った。
病院が昨年まとめた看護師対象のアンケート(回答者342人、回答率88・8%)では、過去3年以内に「患者から暴力や暴言を受けた経験がある」が42・4%に上った。内訳は暴言(44・4%)が最多。暴力(37・5%)、男性患者に体を触られるなどのセクハラ(15・6%)が続いた。
暴言の内容は「看護師の説明が不十分だったり、予定通りにいかないと怒鳴る」(24・7%)、「ストレスのはけ口として看護者に暴言や無礼な身ぶりをする」(20・7%)が目立った。暴力は、疾患によって判断能力が一時的に低下した患者による無差別的な行為が最多だったが、「診察に不満を持った患者にたたかれた」例もあった。
同病院によると、自分が思っていた疾患と異なった診察内容に腹を立て、1日に何度も不平不満の電話をかけてくる「ハードクレーマー」も増えているという。
同大医学部医事課の堀口幸典課長は「患者の指摘が妥当ならば要求にも応じるが、最近は理不尽な内容があまりにも多い。一方的なクレームの対応に時間をとられ、診療活動や病院事務に影響が出ている」と指摘。「暴力や病院内の機材の破壊など悪質なケースは法的措置も考えなければならない」と話す。
同病院の常勤の看護師383人に対する退職者数は、2004年度39人(10・2%)、05年度48人(12・5%)、06年度61人(15・9%)、07年度46人(12%・0)と1割超の水準で推移。理由は結婚や出産が多いが「患者の暴言、暴力に耐えられずに辞める人も少なくない」(医学部総務課)という。
|
|
|