すべての中国人が北京オリンピックや今回の聖火リレーを支持しているわけではない。東京・豊島区内のビルの一室で、ある中国人のグループが密かに活動していた。
彼らは「民主中国陣線日本分部」のメンバーだ。中国からの亡命者が中心で、日本から祖国の民主化を求める活動を続けている。
作成中のプラカードには「人権問題が改善されない限り、オリンピックを開く権利はない」と書かれている。このグループが作ったチラシには毛沢東とヒトラーの写真が並べられている。
○王天増さん(67)
「2人は同じ独裁の人。天安門事件で何千人も死んじゃった。死んだ人は市民もいるし、あるいはたくさんの学生…大学の学生…中国人…」
○民主中国陣線日本分部・李 松主席
「中国は、やはり最低限の報道の自由、あるいは国民が政治を選択する自由を与えるべきだと思います。」
聖火リレー前日の4月25日、李松さん一行は長野に向かった。前日に現地入りしたのには理由があった。
○李松さん
「(自分は)数が少ないから。他の団体が入ってきているので、これ(他の団体)に参加できるかどうか現場を見て、もう一回判断する。」
4月25日正午過ぎ、北京オリンピックに反対する団体が、抗議デモを行う会場に到着した。
チベット問題を非難する内容の横断幕を掲げたグループが「悪魔の聖火リレーを粉砕するぞ」と連呼しながら現れると…
○記者
「(李松さんたちはこのグループに)加わらないんですか?」
○李松さん
「参加しない。(相手の)民族を憎いという人たちとは一緒にならない方がいいです。」
夜、チベットを支援する別の団体が集会を開いた。"今度こそ一緒に抗議活動ができるメンバーを探したい"。会場には李松さんの姿があった。
○李松さん
「確かに私は漢民族です。漢民族とチベット民族の戦いではありません。自由と独裁の戦いである。」
長野聖火リレー前日の25日午後、成田空港に降り立ち、多くのカメラマンに囲まれたのは「国境なき記者団」事務局長、ロベール・メナール氏。
○記者「何かひと言!」
○メナール氏「後で会見しますからその時お話しします。」
国境なき記者団は、3月にギリシャで行われた採火式の際、手錠でかたどられた五輪の旗を掲げたほか、各地で激しい抗議活動を繰り広げてきた団体だ。
○メナール氏(東京・外国特派員協会で)
「明日は日本の法律を尊重しながら平和的にデモを行います。」
記者会見を終えたメナール氏はその足で一路長野へ。道中、警察車両に追走されながらの移動となった。
そしてリレー当日、メナール氏は確かに平和的な抗議活動を行っていた。
○メナール氏
「ここ(長野市・善光寺)で抗議の座り込みをします。」
静かな抗議に徹しようというメナール氏。だがリレーコースに向かった彼を待ち受けていたのは、激しい罵声だった。
○中国人男性「彼は全世界の嫌われ者だ。」
聖火リレー混乱の発端となったメナール氏は、中国の人々から目の敵にされていた。彼の行動は行く先々で妨害行為にあった。
○中国人女性(メナール氏に向かって)
「なぜ、中国人をそんなに嫌うの!どうして多くの中国人を傷つけるの!」
意見の異なる人々が自由にデモを行う姿を見て、メナール氏は最後にこう呟いた。「これこそ民主主義だ」と。