今年から、新しい記念日として「地質の日」がスタートした。うかつにも十日の当日になって初めて知った。
 地質や地質学への関心は一般に薄い。親しみを持ってもらいたいと、日本地質学会や資源地質学会の呼び掛けで定められた。一八七六(明治九)年五月十日に日本初の本格的な地質図「日本蝦(え)夷(ぞ)地質要略之図」ができたことにちなむ。
 地質の日事業推進委員会のリーフレットは、地質は鉱物資源や温泉、美しい景観といった豊かな恵みを人間に与える一方で、地震などの災害ももたらす。人間社会に深くかかわっていると強調する。当たり前に踏み締めている大地の重要性をあらためて思った。
 地震におののきながら地質学には興味なしというのは、確かにおかしい。増税や年金制度に不満を並べつつ政治には関心を持たず、選挙にも行かないのと同じかもしれない。
 地質学者の松田時彦氏は著書「活断層」の中で、数千年、数万年動いていない断層でも専門家はいきていてまた活動すると考える。ある地域で有史以来地震がなければ人々は今後も大丈夫と考えがちだが、それは間違いと諭している。
 地質や地質学に一層関心を持てば、専門家のそうした時間スケールの感覚を多少でも共有できるのではないか。地震への備えも変わってこよう。