がん対策「やる気」に地域格差 7府県で未策定2008年05月11日08時57分 全都道府県に策定が義務づけられている「がん対策推進計画」を7府県が、国が求めた昨年度末の期限を過ぎてもつくれなかったことが、朝日新聞社の調べでわかった。一方、策定済み40都道府県のうち3県が、がん死亡率の削減率で国を上回る数値目標を掲げるなどした。自治体の「やる気」に差が出ている。
計画は、今後数年間にわたる地域ごとのがん対策戦略。策定の遅れなどは、死因トップであるがんの治療体制の整備にも影響する。 朝日新聞社が47都道府県に尋ねたところ、青森と新潟、三重、滋賀、大阪、奈良、岡山の7府県は、07年度中に計画をまとめていなかった。 理由に「細かな最終調整に手間取った」「同じ時期に新しい医療計画も策定していた」などを挙げる県が多い。 滋賀県は計画をつくる協議会を一度も開かず、最も遅れている。今月末に初会合を開き、年内策定を目指したいという。担当者は「昨年は保健師の全国大会に忙殺されるなど多くの事情が積み重なった」と説明する。 大阪府は1月に素案を出したが、翌月就任した橋下徹知事が進める財政再建策のため作業が止まった。予算措置を求め、7月末にまとめたいという。青森は5月、残る4県は7月以降になる見込み。 青森県と大阪府は、75歳未満のがん死亡率がワースト1位と3位(05年)だ。 厚生労働省は「国の計画は昨年6月に出し、時間は十分あったはず。遅れている自治体には個別助言もした」と説明。7府県について、08年度予算のうち計画策定に伴う補助金(全国計13億円)を「支給できない可能性が高い」という。 一方、「10年以内に死亡率を20%減」とする国の計画より高い目標を掲げたのは兵庫、和歌山、島根の3県。 25%減を掲げた和歌山県は、ワースト5位を踏まえて高い目標を立てた。「他県と同じ削減率では、達成しても死亡率の高さが改善されない」と担当課。同じく25%減を掲げる兵庫県も「全国平均との差を縮めるため」という。 このほか、神奈川県は、「7年以内にベスト10位入り」を目標にした。05年はベスト22位と全国中位。乳がんなど他県より死亡率の高い部位を中心に対策を強化する。 早期発見につながるがん検診の受診率については、宮城、山形、兵庫の3県が、国の計画「50%以上」を超える目標を立てた。 また、22道県は、国が健康増進計画に数値を入れなかった成人喫煙率の削減目標をがん計画に盛り込んだ。 国の基本計画の策定にかかわった患者団体「癌(がん)と共に生きる会」の海辺陽子副会長は「数値目標は自治体のやる気を測る材料。住民は計画がきちんと実行されるか、修正すべき点はないか監視する必要がある」と話す。(石塚広志、林敦彦) ◇ 〈都道府県がん対策推進計画〉 昨年施行されたがん対策基本法で都道府県に策定が義務づけられ、厚労省は07年度中の策定を求めた。(1)75歳未満のがん死亡率を10年以内に20%減らす(2)5年以内にがん検診の受診率を50%以上にする(3)患者やその家族の苦痛を軽減して生活の質をあげる――などの目標を設定する国の基本計画をもとに、地域の事情に応じて策定する。 PR情報この記事の関連情報暮らし
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