<せんぱばんぱ>
「日米中のうち一番大事なパートナーは?」と外務省が東南アジア諸国連合(ASEAN)6カ国で世論調査した。中国が30%、日本28%、米国23%の順。
振り返ると、かくのごとき中国台頭のキッカケが、97年のアジア通貨危機であった。米国がバカをやらかしたのだ。
米国はその3年前、メキシコの金融危機では救済に奔走した。ところがアジア通貨危機の第1号のタイの危機には知らん顔。東南アジア諸国は米国の薄情を知り、以後、米国離れを強める。
日本提案の「アジア通貨基金」構想も「円経済圏を作る気か」とつぶしてしまった。中国も反対に回った。あのころの日本は金融力で中国を圧していた。それを封じて、中国の台頭を許した。米国の短慮のきわみ。
まあ、日本だって大きな顔はできない。三洋証券の倒産で外貨が取れなくなった邦銀は、韓国から1兆7000億円も資金を引き揚げた。韓国を金融危機に追い込んだ責任は日本にもある。
中国だけが人民元の切り下げをせず頑張ったと褒められ、以来グッと重みを増すに至った。
危機の後、日本の呼びかけでアジア諸国は2国間の資金融通協定を結んで為替市場の混乱に備えた。これを今度、多国間の協定に衣替えし資金枠も800億ドル(8兆5000億円)に4割近く拡大するという。ASEANと日中韓の財務相会合で決定した。
これは、つまり、アジア通貨基金ではないか! 日本人は悲願成就に快哉(かいさい)を叫ぶべきか。さてね。逆かもしれない。
日中が拠出額1位の座をめぐって譲らず、容易に決着しない情勢だ。10年前なら議論の余地なく日本だったのに。両国がこだわるのは、それがアジアの通貨盟主の座にほかならないからだ。
ちゃんとした国際機関に、という話もある。しかし、本部は日本? 総裁は日本人? イヤな予感がする。(論説室)
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毎日新聞 2008年5月11日 東京朝刊
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