◎ミシュラン新版発行 「星付き」獲得へ常に磨きを
三つ星の格付けで知られるミシュランの日本版旅行ガイドが来春、新たに出版されるこ
とになった。これまで高い評価を得た観光地でも格下げになる場合があるだけに、昨年、北陸で唯一、三つ星に輝いた金沢市の兼六園も、県民自らが名園の名をさらに高める意識を持って、最高峰の風格に磨きをかけたい。
もちろん、ミシュランガイドの格付けは、あくまでも同社独自の基準で観光地や施設を
評価した一つの目安なのだが、その星の数が「権威」として観光客の動向に多大な影響をもたらすことは、昨年、三つ星効果で急増した兼六園の欧米客数にも表れている。
ミシュランの記者はすでに訪日して各地を取材しているそうだが、兼六園だけでなく、
二つ星を得た金沢地区や輪島のキリコ会館、一つ星の能登半島など県内の観光地や施設も、「星付き」でガイドに名をとどめるよう、自治体や関係団体は、自然体の中で、常に、もてなしや美観の向上に努めていきたい。
来春、初の日本版が発行されるミシュランの旅行ガイド「ギドベール(緑ガイド)」は
、同社のガイド本の中でも、ホテルやレストランの格付けで有名な「ギドルージュ(赤ガイド)」とともに世界的に知られている。
日本版は、昨年四月に先行的に発行した実用版ガイドをグレードアップした内容となる
。同実用版では、無印から三つ星まで四ランクで全国九百三十八カ所が掲載されており、石川県からは無印も含め掲載数は三十六カ所を数えるが、日本版発行にあたり再度ふるいに掛けられるようだ。評価をさらに高めるため、気を抜かず施設整備やサービスの向上に今後も努力していく必要があるだろう。
金沢の兼六園周辺について言えば、金沢城跡が来月にも国史跡に指定される見通しとな
り、主計町の重要伝建地区選定とも合わせ、世界遺産登録をめざす大きな一歩となる。一帯の付加価値が重層的に高まることは、ミシュランの評価を上げ、特に教養豊かな欧米客を呼び寄せる力にもなるだけに、欧米を照準に、これまで以上に魅力をアピールしてもらいたい。
◎宇宙基本法成立へ 独自の宇宙政策持ちたい
自民、公明両党が提案したが、「安全保障にも資する」とした点で、野党の一部から軍
事利用に道を開くものだなどと批判され、継続審議になっていた「宇宙基本法」が一転して今国会で成立する見通しとなった。宇宙政策は政治主導で一元化せよとの民主党の主張を、与党側が受け入れたためだ。
新法の成立に伴い、内閣府に首相を本部長とする宇宙開発戦略本部が設けられ、宇宙政
策の指令塔として開発の理念や諸施策推進の基本計画を策定するほか、法施行後、一年をめどに文部科学省、経済産業省、国土交通省など各省にまたがっている宇宙関連の政策立案機能を見直し、内閣府に設置される「宇宙局(仮称)」に一元化する。新法を足掛かりに持てる技術を生かして独自の宇宙政策を持ちたい。
日本初の人工衛星「おおすみ」が打ち上げられたのは一九七〇年二月だった。人工衛星
を打ち上げ、軌道に乗せる技術は平和利用にも軍事利用にも使える。区別することがどだい無理だったのだが、平和目的に限るとした一九六九年の国会決議に基づき、「非軍事」の名の下に、たとえば誘導装置なしで人工衛星を軌道に乗せる工夫をするなど、むちゃな枠をはめられたため、米国の技術に依存し、米国の政策に振り回されるようなことも生じた。
今は各国並みになったが、無理を強いられた分遅れをとることになったといえる。それ
でも国際宇宙ステーションに日本の実験棟「きぼう」の建設を着手できるまでに成長した。コンピューターが小型化しながらも性能は逆に高度になったように、宇宙開発の手段である人工衛星の開発も小型化・高性能化へ向き、各国はその開発にしのぎをけずっている。
日本の宇宙開発予算は年間三千億円程度で、世界の開発予算の75%を占める米国の十
分の一以下だ。その米国は日本の技術を高く評価している。米国との連携も軽視できないが、複数の小型衛星を組み合わせて一つの優秀なシステムとして運用することを目指したい。