【Ｒｅ：社会部】テロはまだ続いている

　拉致被害者の家族会が先月末から、米国・ワシントンを訪れました。拉致問題が解決しないなかで、米国が北朝鮮のテロ支援国家指定を解除しないよう、米政府・議会関係者に働きかけるためでした。

　「（解除への米国の姿勢は）厳しくなっている」。増元るみ子さん＝拉致当時（２４）＝の弟、照明さん（５２）は、こう語り、訪米中には「指定継続」が発表されました。背景には、北朝鮮の核問題で米国内に慎重論が強まっていることがあるようですが、それだけではないような気がします。

　家族が初めて「拉致は現在進行形のテロ」との言葉を掲げ、渡米したのは平成１３年。指定理由に日本人拉致問題が明記されたのは、そうした家族の働きかけが実ったからです。照明さんは、解除問題が浮上した昨年も渡米しました。テロ指定が踏みとどまっているのは、家族らの「拉致は続いている」との訴えが作用しているからではないでしょうか。

　訪米を前に、家族会は全国規模の集会を東京で開きました。集会も今年で１０年目。「また集会を開かねばならない悲しい現実。また『今年こそは』という言葉を使わねばなりません」。家族会代表で、田口八重子さん＝同（２２）＝の兄、飯塚繁雄さん（６９）は訴えました。八重子さんが拉致されて間もなく３０年。テロは決して終わっていないのです。（亨）