ミャンマー:軍事政権、国民投票を強行…被災一部地域延期

ミャンマーを襲ったサイクロンの進路
ミャンマーを襲ったサイクロンの進路

 【バンコク藤田悟】ミャンマーの新憲法案の賛否を問う国民投票が10日午前6時(日本時間同8時半)から、サイクロン「ナルギス」の被害が大きかった一部地域を除く全土で始まった。同国で全国的な投票が実施されるのは90年の総選挙以来18年ぶり。軍事政権は憲法承認を経て2010年に総選挙を実施し、民政移管すると公約している。

 サイクロン被害を受けて、アウンサンスーチー書記長率いる最大野党「国民民主連盟」(NLD)が中止を求めたほか、国連の潘基文(バンギムン)事務総長や欧米諸国から延期を促す声が上がっていたが、軍事政権は強行した。

 国営テレビはこの日早朝から繰り返し投票風景の映像を流し、「国家発展を願う人は『賛成』に投票を」と呼びかけている。

 新憲法案は、88年の軍事クーデターに伴って停止した74年憲法に代わるものとして、軍事政権主導で策定された。国会議席の25%を国軍司令官が指名するほか、大統領資格に「軍事の見識」を要求するなど、軍の権限維持を担保している。

 一方、大統領や議員は「外国人の恩恵を受けていない」ことを条件とし、英国人と結婚していたスーチーさんを政治から排除している。

 軍事政権は、国連による国際監視団の受け入れを拒否。国営メディアや翼賛団体を動員し、国民に「賛成」を強要する大運動を展開した。事前投票であらかじめ「賛成」を記入した投票用紙が配布されるなどの事例も報告され、公正さに疑いが持たれている。

 新憲法案の承認には投票の過半数の賛成が必要。投票が24日に延期されたのは、ヤンゴン管区の9割とエヤワディ管区の3割の区域で、約2700万人の全有権者の約15%に相当する。午後4時(日本時間同6時半)の投票締め切り後、開票作業に移るが、集計結果の発表時期は明らかにされていない。

 ◇ミャンマー新憲法案の骨子

一、国家は連邦制とする。首都はネピドー

一、国家元首は大統領(任期5年)とし、「政治、行政、経済、軍事」の見識が必要。正副大統領候補3人から全議員の投票で選出する

一、国会は地域代表院と民族代表院の2院制。各4分の1は国軍司令官が指名する

一、大統領と議員は外国人の影響や恩恵を受けていてはならない

一、軍が国防に関して独立した権限を持つ

一、政治における軍の指導的役割を可能とする

一、非常事態宣言に際し、大統領は国軍司令官に全権限を委譲できる

一、大統領、国防相、国軍司令官ら11人で国防治安評議会を構成し、超法規権限を有する

一、憲法改正には全議員の75%以上の同意が必要

毎日新聞 2008年5月10日 11時14分(最終更新 5月10日 13時26分)

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