与党は道路財源を維持する法案を来週衆院で再可決する。首相が明言した一般財源化と矛盾する対応だ。ここは思い切って法案修正するのが一番分かりやすい。今のままでの再可決は賛成できない。
道路整備に特定せずに、社会保障、教育など幅広い分野に予算配分するのが一般財源化論だ。
福田康夫首相はそれを閣議決定するといっている。九日の参院審議では「清水の舞台から飛び降りるような決断をした」と語り、一般財源化方針から後戻りしない覚悟を吐露した。
この日の委員会で道路財源を十年続ける特例法改正案が野党の反対多数で否決された。週明けの参院本会議でも否決される。首相の言う通りに来年度から一般財源化するにはこの特例法の廃案が最大の「担保」になるはずだ。
ところが、首相も与党も衆院で十三日に再可決、成立させるという。矛盾しているのではないか。
一般財源化に反する形で道路の特別扱いを継続させようとするのは理解に苦しむ。首相の一大決心の信ぴょう性も怪しくなる。
一般財源化は与党党首間で合意したし閣議決定もする、だから実現の「担保」は十分だ、成立させないと臨時交付金を支給できず自治体に迷惑をかける−。これが再可決への政府側の理屈だ。
首相は、政府提出の改正案は衆院で可決されているため政府が修正することはできないと答弁。協力姿勢を見せなかった民主党を批判した。こうした言い分も理解できなくはないが、閣議決定を「担保」とするのは無理がある。
内閣支持率は20%台を割り込んでいる。回復の兆しも見えない中で来年度の話を約束しても、結局はほごになるとみられても仕方あるまい。自民党道路族がにらみを利かす総務会で、野党が指摘する曖昧(あいまい)な了承手続きで済ませていることも懸念を増幅させる。
野党攻勢に苦しみながら、ここまで歩み寄った首相である。与党が修正案をまとめて協力を呼び掛けるしかない。ねじれ国会の一側面である。再可決に走るより慎重に事を運んではどうか。
仮に、提案に民主党が頑として応えないのであれば、責めは同党が負うことになろう。首相が野党を説得する努力も尽くさないのでは「国民目線」の政権運営とはいえないのではないか。
福田政権下では二回も再可決に踏み切っている。そのたびに国民の気持ちが遠のいている現実をもっと重く受け止めるべきである。
この記事を印刷する