七月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)に向けたG8労働大臣会合が十一日から十三日まで新潟市で開かれる。「労働と環境」がテーマだが、貧困や雇用問題もしっかりと議論すべきだ。
毎年開かれるサミットでは事前にさまざまな分野別会合が開催される。今年はすでに気候変動・クリーンエネルギーおよび持続可能な開発に関する閣僚級対話(G20)が開かれ、労相会合後には環境、エネルギー、財務大臣会合などがある。
日本で労相会合が開かれるのは一九九七年以来二度目だ。主議題は昨年のサミットの結論である「持続可能な社会の実現」。これをもとに労働者一人一人の人生を充実させる仕事と生活の調和(ワークライフバランス)や、環境に優しい働き方などを話し合う。
このうち環境に優しい働き方では経済・産業構造の転換に加え環境産業への労働移動や技術革新に対応した人材育成など「グリーンジョブ」の推進を取り上げる。
温暖化対策は今や世界的な緊急課題であり、これを会合で取り上げるのは当然だ。世界の平和と安定した社会の持続も、地球環境の改善なくしては具体化しない。
だが労相会合では、やはり根本問題である貧困や格差対策、労働政策を議論することが重要だ。
今回の会合には欧州連合(EU)や国際労働機関(ILO)、経済協力開発機構(OECD)の政策担当者、そして環境問題の議論を深めるためにタイとインドネシア両国を招いている。世界の経営者団体や労組の代表も参加する多角的な会議になっている。
一番熱心なのがILOである。先月下旬には専門家会合を開き、グリーンジョブとILOの目標であるディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)との調和を訴えた。環境対策と雇用創出の両立は可能との立場だ。
ILOによれば世界には約十三億人の働く貧困層が存在する。また先進国クラブと呼ばれるOECD加盟国でも、相対的貧困率の一番高いのは米国で二位は日本である。
経済が成長すれば格差は是正されるはずだったが、最近の米国や日本などでは成長と同時に格差が拡大しているとの分析もある。
市場経済が世界の主流となった現在、公正な所得分配や労働者の均等待遇など基本的な雇用・労働政策がますます重要になっている。労相会合ではこうした点をしっかりと討議してもらいたい。
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