現場に残された多数の遺留品、一部は人目につく状態で放置された遺体…。京都府舞鶴市で府立東舞鶴高校浮島分校1年、小杉美穂さん(15)が殺害された事件は、犯行発覚を遅らせようと偽装した形跡の一方で、現場の状況からは「無防備」とも言えるほどのずさんさも目立つ。小杉さんの所持品を遺棄現場近くに捨てるなど場当たり的な犯行の色合いが強く、舞鶴署捜査本部は犯人が突発的に殺害したとの見方を強めている。
小杉さんは8日朝、自宅から約2キロ離れた朝来(あせく)川沿いの雑木林であおむけに倒れているのが見つかった。遺体に着衣はなく、ほぼ全身に土や枯れ葉がかけられていたが、片方の耳と手の指の一部が見える状態で、穴を掘ったような跡はなかった。
遺体発見現場近くでは、小杉さんの携帯電話や財布、手提げバッグ、着衣などが数メートルの間隔で落ちているのが見つかったが、履いていたとみられるジーンズや下着などは見つかっていない。こうした遺留品はいずれも川の中州の上に捨てられ、水につかっていなかった。しかも携帯電話は電源が入ったままで、発信電波から位置が比較的探知しやすい状態だった。
ただ遺体が見つかった雑木林は、新興住宅地と工場が混在する地域で、幅約4メートルの川を渡らないとたどり着けず、のり面近くの傾斜地で足場も悪い。近所の人の話では、地元住民もめったに出入りしないという。
また9日の司法解剖の結果、死因は重い鈍器で激しく殴られたことによる失血死と判明したが、首には植物のつるか細い枝のようなものが何重にも巻かれており、犯人が捜査の混乱を狙った可能性もある。
捜査本部は、過去の事件と比べ、稚拙な手口が目立つ点にも注目。小杉さんが現場付近に土地勘のある人物と接触した後、事件に巻き込まれたとみて、小杉さんの足取りを調べている。
◇
小田晋・帝塚山学院大学教授(犯罪精神医学)の話「遺体を隠そうとしたのだろうが、体の一部が見える状態だったり、多くの遺留品を現場に残した点はあまりに無防備で稚拙だ。現場の状況からは衝動的な犯行とみられ、犯人の精神年齢は低い可能性が高い。被害女性を執拗(しつよう)に痛めつけて、首に木の枝を巻き付けた点などに、死体に対する屈折した思想もうかがえる」
◇
小杉さんが在籍していた浮島分校の本校となる府立東舞鶴高校で9日午前、全校集会が開かれ、小杉さんの冥福を祈った。
午前9時前から体育館で行われた集会には、生徒約800人が参加。黙祷(もくとう)をささげた後、田口生夫校長が複数で登下校したり、夜間の外出をひかえるなど安全に注意するよう呼びかけた。
田口校長は集会の後、報道陣に「今のところ生徒には大きな動揺もない。一刻も早く事件の解決を望みます」と話した。
◇
■卒業文集に希望「輝きたい…」
「沢山悩んだりしたけどその度、誰かの優しさに助けられてきました」。小杉美穂さんは今春、舞鶴市立白糸中学校の卒業文集に、悩みながらも感謝の心を持って強く生きようとする気持ちをつづっていた。
文集には、自分を支えてくれた周囲への感謝の言葉が並ぶ。不登校に悩んだ中学生活だったものの、「一生青春でありたいからこの卒業は新しい出逢いの前触れだと思っています。うぇーい!!」と高校生活への期待も。
そして後半には、大好きだったという「T・M・Revolution」の、強く生きようというメッセージが込められた歌詞の一節も添えられていた。
【関連記事】
・
失踪当日の夜、男と一緒 京都・舞鶴高1殺害
・
物静かな少女に何が 京都・舞鶴の女子高生殺害
・
「なぜ、娘が…」舞鶴高1女子の母親が手記
・
京都・舞鶴の遺体は15歳女子高生と確認
・
雑木林に女性遺体、高1少女か 7年前の少女刺殺事件との関連も