ここから本文エリア きょういく@東京
小中連携「わかる授業」2008年05月09日
小学校から中学校に、勉強も人間関係も無理なく移行できるように、三鷹市が開校した公立の小中一貫校「にしみたか学園」が3年目を迎えた。三鷹方式は、新校舎で小中学生が一緒に学ぶ「併設型」と違い、既存の校舎をそのまま活用する「連携型」とよばれ、財政事情が厳しいほかの自治体からも視察が相次ぐ。教師や子どもは離れた校舎を行き来しなければならないが、現場では、小中の教師がチームで教えるなど「わかる授業」に工夫をこらしている。(寺下真理加) 「にしみたか学園」は06年4月に開校した。といっても、以前からあった井口小、第二小、第二中を一つの学園とみなして運営するもので、校舎はそのまま。小学校の英語、中学の数学など4教科で、双方の教師が出向いて教えるほか、月1回の研究会を開き、個々の児童・生徒の理解度や、クラス内の交友関係、性格などを共有する。 4月下旬に、中学3年の数学「基礎コース」の授業を見た。中学と小学校の教師2人がチームで教えていた。 この日は、平方根の計算。中学教師が教壇に立ち、「2乗と、かける2は違うんだったよね」と説明を始めた。 「ルート4は、何かける何? ルート9は」と尋ねると、生徒は「2かける2は4、だから2」「ルート9は3」と答える。「正解。だからルートの外に出せる」と教師が導くと、生徒から「よっしゃ」などと声があがった。 ここからが、小学校教師の出番。本当に疑問が解消されたか、教室を歩き回り、生徒たちのノートをのぞき込んで確かめる。「先生、質問でーす」「この場合は?」。小学校時代から知っているという親近感もあり、生徒たちは気後れせずに呼び止める。 数学教師の平井邦明・中学副校長は、「数学の場合、中学になると、急に数式や記号などの抽象的な概念を使って考えることになるため、戸惑ってつまずくことが多いんです」と説明する。小学校の教師がいれば、わからなくなった時点で、小学校の算数に戻って教えることができ、疑問を放置せずにすむ。「わかる授業」になるのだという。 教育熱心な保護者の存在が、小中一貫校を側面から支援する。たとえば、数学は、習熟度別に発展、定着、基礎の3コースに分かれて受講。基礎コースでは小・中の先生が2人つくが、定着コースでは、先生1人に「サポート隊」と呼ばれる保護者らがつく。ボランティアで小中学校の保護者310人が登録しており、事前に勉強会を開き、教師から教え方の指導を受ける。読み聞かせや職場訪問なども手伝う。 小学校では、3年生の後半になると、教科ごとに教える教師が替わる「教科担任制」を体育や理科など一部の教科で導入する。 児童らは中学校の授業スタイルに慣れることができ、教師は苦手分野を専門の先生に教えてもらえる。 ◆欠かせぬ教師の相互理解 「中学校進学を急激な段差でなく、徐々に慣れるスロープに」と、第二中の校長を兼務する大嶺せい子学園長は力を込める。専用の自転車で5分かかる校舎を行き来することもあり、限られた人数の教師たちで時間割りを編成するのは一苦労だ。小中学校の「相乗り」を充実するには、教師たちの互いの仕事への理解も欠かせない。 課題もあるが、市教委は今年度新たに、にしみたか学園と同じ方式で「連雀学園」など3学園を開校。来年度中には3学園を加え、全7学園の一貫化を予定している。 にしみたか学園の場合、隣り合う第二小と第二中をつなげる道路をプール横に設けた以外、大きな設備投資はない。一貫化に伴う予算増は、補充した講師の手当や、保護者や地域と学校運営を話し合う協議会の経費などだ。「新しいハード(施設)を作る経済力のある自治体は少数派。三鷹の挑戦への関心は高い」といい、外部の視察も積極的に受け入れている。 ◇公立小中一貫校◇ 公立小中一貫校には、にしみたか学園のように学習指導要領にのっとった現行の6・3制に基づくものと、文部科学省から特区の指定を受け、4・3・2制など独自の教育課程を設けるものがある。 都内では、まだ小中一貫校は珍しいが、同じく2年前に開校した品川区の日野学園は、三鷹方式とは対照的だ。文科省の指定を受けた小中一貫校として55億円をかけて校舎を新設。独自の教育課程や教材も作り、注目を集めた。また、三鷹市は学区内の子どもが通うのに対し、品川区は学校選択制をとっている。 マイタウン東京
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