【北京・大塚卓也】穀物の輸出を厳格に制限している中国で、コメや小麦などを密輸出する動きが相次いで発覚し、中国税関当局は食品輸出の承認を受けた企業への検査・監督強化に乗り出した。国際的な穀物の価格上昇が続く中、国内の価格が抑制されていることが密輸出の動機とみられるが、食品類の供給不足懸念が高まっているだけに、中国政府は消費者の不安沈静化にやきもきしている。
中国国営新華社によると、杭州税関(浙江省)は先月15日、コメ400袋計7トンの密輸出事件を摘発した。この事件以外にも、4月以降に輸出許可のない企業や認可企業の虚偽報告4件を摘発し、押収穀物はコメ7トン、小麦粉33トンに上った。寧波税関(同省)も最近、44トンの穀物密輸案件を摘発したという。
農業分野でも急速な市場化を進める中国だが、穀物類の多くは、農家などから各省の糧食局が買い上げて市場に供給するルートが主流で、政府統制色が依然強い。貧困層の食糧確保を重視しているため、価格は「国際価格の30~70%にとどまる」(関係者)とされ、過去には穀物の生産高が大きく落ち込み、食糧備蓄の大量放出と緊急輸入に追い込まれたことがある。
温家宝首相は3月の全国人民代表大会(国会に相当)で、価格高騰が続く食品の国内供給を優先するため、穀物類の輸出を厳しく制限する一方で、コメ、小麦、トウモロコシなどの穀物生産農家への補助金を引き上げる奨励策導入を表明した。
毎日新聞 2008年5月9日 20時13分