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昨年秋、アルバム『Hummingbird in Forest of Space』リリース後に行われたアリーナツアーでは、スケールのデカい圧倒的なパフォーマンスを見せつけた吉井和哉。今回は、ファンお待ちかねのライブハウスツアーだ。Zepp Nagoya ２daysは両日ともにソールドアウトだったこともあり、開演前からプレミアムな高揚感が会場を包んでいた。
〈Introduction〉に導かれ姿を現した吉井は、白いＴシャツ×黒ジャケット×スキニーパンツと、とてもナチュラルな出で立ち。それなのにロックスターのオーラは膨れ上がり、存在感がパンパではない。青色の照明が印象的だった〈Do The Flipping〉でクールに幕開けをキメて、〈Biri〉で熱を大放出。Guns N' RosesやNine Inch Nailsにも在籍していたJosh Freese(Dr.)を始め、理想のメンバーが揃ったバンドをバックに、吉井は全身から喜びを放射しながら歌う。そんな彼を目の前に、オーディエンスも嬉しさを爆発させた。すると、ここで早くもTHE YELLOW MONKEYの楽曲が登場。〈サイキックNo.９〉だ。“COME ON R&R 念じてGO　前進あるのみバイブレーション”――このツアーを象徴しているかのようだ。ブラックホールを脱出し、オープンスタンスな自由を手に入れた今の吉井は、無敵。彼を突き動かす大きな力に、自らを明け渡したように見える。
その後もアッパーなナンバーをたたみ掛け、Ｒ＆Ｒのミラクルは続いていく。そんななか、突如〈Tactics〉のリフが鳴り響き、会場は歓喜の絶叫。してやったりの吉井は、コール＆レスポンスを繰り返しながら、オーディエンスとの距離をさらに親密にした。ここで空気を一転し、悲しくも美しい世界へ。〈CALL ME〉の壮大で切ないメロディーと言葉の一つ一つが、心に深く響き渡る。続いては〈HATE〉。2006年に行われた伝説の武道館公演で、この曲は「カート･コバーンに捧げます」と紹介されたそう。戦場の兵士だけではなく、何者かと戦っているすべての人へ、そして吉井自身へ向けた歌だったのか。叫ぶような強い歌声が、胸を締めつけた。
後半戦は、吉井の専売特許である危うくギラついたロックを連続。〈I WANT YOU I NEED YOU〉では、間奏でステージに寝そべり、前列のファンと見つめ合ったり、手に触れたり。ラッキーな女子たちは、とりあえず誰も失神せずに踏ん張った模様。「マンチーが出そうですか？」と言い放ちつつ〈マンチー〉で超テキトーに盛り上がり、「明日もがんばれよ！」と〈WEEKENDER〉たちに希望をプレゼントし、「毎日つらいことがたくさんあると思うけど、小さな奇跡は必ず起こるから。待っていてください」と言って〈シュレッダー〉を吉井節全開で歌い上げ、本編を締めた。今の吉井には、どんなモードもしっくりとハマる。ますます軽やかに、しなやかに進化するこの人の魅力は、とどまることを知らない。
とある男子から会場全体へと飛び火した男気あふれる「ヨ･シ･イ！」コールに呼び戻され、メンバーは再びステージに。吉井は、黒インナー×艶やかなフクシア色のシャツにチェンジした。そして、「オレたちとキミたちの歌を聴いてください」と言って〈TALI〉を歌いだしたが、“寝過ごしたり”を延々リピート･･･。たまらず演奏をストップさせた吉井は、「何回寝過ごしとんの！」と自己ツッコミを入れていた。これにはメンバーも会場も爆笑。こんな茶目っ気たっぷりのハプニングが目撃できて、かなり得した気分になった。さらに、テレキャスターを抱えて〈見てないようで見てる〉を演奏！　意表を突く選曲で、得した気分が加速させたところで、とうとうラストナンバー〈Shine and Eternity〉へ。「ここにいるキミたちは、偶然でここに集まったんじゃないと思うんだよ。なんか繋がってると思うんだよ」と、みんなの心を解き放ち、一つにしていく吉井。“hey ALL, hey ALL”――心地よいリズムに揺られながら、会場は声と笑顔で応える。最高にハッピーな光景だ。吉井は“恵みのShine”で、この空間にいる全員を優しく包み込んだまま、「シャチホコヘッド･ミラクル」の幕を閉じた。

ライブレポーター：安井幸代