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連載企画「闘う臨床医」(6)地域が「医療」を守る 兵庫県立柏原病院の試み (3/3ページ)
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地域住民が「医療」を守ってくれる−。想像もしなかった取り組みに和久医師は心を打たれた。「退職は撤回します」。賛同した地元医師会も夜間の「応急診療室」を近くの総合病院に設置し、若手開業医らが交代で診療を始めた。
成果は徐々に現れた。小児科の夜間や休日の時間外患者は前年比の約4分の1に減り、医師の激務は緩和された。
さらに、大学医局に戻った医師から志願者が急増し、今年4月には医師2人が常勤医として名を連ねた。「ようやく存続のめどがついた」。和久医師は目を細める。
地域住民の運動の輪は今も広がっている。「地域医療の再生モデル」として、全国各地から問い合わせが絶えない。「これこそが地域医療の崩壊を食い止める住民からの大きな運動だと尊敬申し上げます」。1月には舛添要一厚労相から守る会事務局にこんなメールも届いた。
「医療崩壊という焼け野原の暗闇に浮かび上がった小さな灯火(ともしび)」。和久医長は、医療従事者と地域住民が新しい医療体制を模索するこれまでの活動をこう表現する。
「運動は革命的であり、疲弊した医師たちの心が救われた。この奇跡の連鎖を全国に広げたい」。泣き虫で知られた顔がほころんだ。
(白岩賢太、植木芳和)