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連載企画「闘う臨床医」(6)地域が「医療」を守る 兵庫県立柏原病院の試み (1/3ページ)
兵庫県中東部の中核的医療機関「県立柏原(かいばら)病院」(丹波市)に勤務する小児科医長の和久祥三さん(41)は昨年3月、悩み抜いた末に5月いっぱいでの退職を決めた。
新臨床研修制度の影響で医師不足が深刻化。近くの公立病院が産科を休止したため新生児の患者が急増し、月平均の時間外勤務は100時間を超えた。4月には小児科医2人のうち1人が院長になり、外来診療を1人で担う状況が差し迫っていた。
パンク寸前の現状を2年越しで訴えたが、周囲の反応は冷ややかだった。夜間診療の当番医など救急医療の協力を訴えた報告会でも、地元の開業医に苦悩を理解してもらえず、人目もはばからずに悔し涙を流した。
平成14年に45人いた常勤医(うち小児科4人)は、症状が軽いのに救急外来を訪れる「コンビニ受診」で疲弊し、19年には26人にまで減った。
和久医師は「燃え尽きるような形で退職する医師が後を絶たなかった。救おうとする患者に苦しめられ、訴訟の重圧もつきまとった。患者も医者も命の綱渡り状態だった」。和久医師はそう振り返る。