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失われた「情」 リアルにみせる 舞台「瞼の母」演出 渡辺えりさんインタビュー (2/4ページ)
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また今回の試みとして、通常カットされる場面も含め脚本に忠実に上演するが、時代がかった台詞回しはしないという。「これまでの作品イメージを持った人は驚くかもしれませんが、筋は浮き立つと思います」
渡辺はかつて「瞼の母」をモチーフに、「瞼の女(め)」という作品を発表した。この中では理想の母親を求める引きこもりの青年に加え、家庭の犠牲にならざるを得なかった母親も描いた。“男性目線”で作り上げられた「瞼の母」のイメージへの違和感が作品を生んだとも解釈できるが、本家に立ち戻る今回も「女の立場で演出する」という。
「男の人が演出すると、忠太郎はカッコ良くなる。でもそれはやりたくない。ヤクザはカッコ良くないんです。身内が危険にさらされることが、どれほど女には嫌なことか。それに戯曲をよく読むと、おはまが忠太郎を拒否するのは当たり前なんです」
今は名料理屋を切り盛りするおはまを忠太郎が訪ねた日は、淡州の藩主主催の大切な催しの当日。おはまは一旦(いったん)は忠太郎を追い返すが、思い直して後を追う。「忠太郎が後から来た母親に会わず、去るのは、大きくとらえて一つの自立という風に見えればいいと思っています」