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失われた「情」 リアルにみせる 舞台「瞼の母」演出 渡辺えりさんインタビュー (1/4ページ)
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今や歌舞伎か大衆演劇でしか見られなくなった長谷川伸の名作「瞼(まぶた)の母」を、演出家・渡辺えり(53)が手掛ける。しかも配役は、生き別れた母親を慕い続ける番場(ばんば)の忠太郎に草ナギ剛(くさなぎ・つよし)、母おはまに大竹しのぶと「股旅(またたび)もの」のイメージからはかけ離れた顔ぶれ。「従来と違う、リアルな現代劇として構築します」と話す渡辺は、80年近く前の作品をどのように現代の観客に伝えるのか。
「草ナギ君が33歳、大竹さんが50歳で、役年齢とほぼ同じ。お母さんと思ったら若く綺麗(きれい)な人が出てくる、そのショックをみんな受けてほしい」。幼時に生母と生き別れた長谷川の体験に基づいた名作。ともすれば「お涙ちょうだい」になりがちな物語を渡辺は今回、リアルさにこだわって演出する。
ただ演出作業は予想以上に困難だったようだ。「自分でもショックだったんですが、日本人なのに140年前の芝居をするのが難しい。日本人は戦後、アメリカナイズされ過ぎて“外国人”になってしまった」。3月末から始まった稽古(けいこ)で、渡辺はまず作品分析に1週間かけた。若い俳優に台詞(せりふ)の意味を解説し、作品を解釈して共有する作業からスタートした。