来日中の中国の胡錦濤国家主席は、経済団体との会談や企業の視察などの日程を積極的にこなし、経済面でも「関係強化の旅」を続けている。9日はJFEホールディングスのリサイクル工場(川崎市)を視察し、10日は松下電器産業本社(大阪府)を訪問する。中国は急速な経済成長を遂げた一方で環境問題が深刻化しており、関心は日本の省エネルギーや環境技術に注がれている。
「進んでいる日本のリサイクル技術を中国にも紹介してほしい」。9日午前、JFEホールディングスのリサイクル工場を視察した胡主席は、ペットボトル再生の現場を見て目を輝かせた。
製鉄業界ではJFEのライバルである新日本製鉄の方が中国との関係が深く、財界からは「なぜJFEなのか」との声が上がっていた。経済産業省などによると、中国側が「省エネやリサイクルに関する施設を見たい」と要望し、リストアップした中から選ばれたのがJFEだった。
JFEの工場がある川崎市は、かつて深刻な大気汚染問題を抱えていたが、現在は企業と行政が一体となって環境都市づくりに取り組んでいることも中国側の興味を引いたようだ。
一方、10日に訪問する松下電器は、78年にトウ小平副首相が来日し創業者の松下幸之助氏(いずれも故人)と親交を深めて以来の関係にある。今回の訪問では同社の環境技術に話が及ぶとみられる。
両国の経済関係はかつて、日本が中国の経済成長を支援する立場だったが、今では「垂直関係から水平関係に変わった」(外務省幹部)。一方で日本が依然、優位に立つのが省エネや環境分野だ。
7日の福田康夫首相との首脳会談では、エネルギー・環境分野で重点的に協力することで合意。両政府の共同プレス発表では、水質・大気汚染防止の取り組みや、地球温暖化防止のための二酸化炭素排出削減など多数の環境関連の協力が盛り込まれた。一方、資源に乏しい日本にとっては、中国に埋蔵量の多い鉱物資源に関する協力などが成果で、両国の経済関係の強化は今後、環境・資源を軸に進む見通しだ。【平地修、森有正】
毎日新聞 2008年5月9日 20時49分(最終更新 5月9日 21時13分)