日本介護福祉士養成施設協会の田中愽一副会長兼理事は5月8日、国内に2434校(定員計2万5577人)ある介護福祉士養成施設の充足率について、「2008年度には60%を切るのでは」と述べ、介護職に就くために養成施設に入学しようとする学生がさらに減るとの見方を示した。厚生労働省の「介護労働者の確保・定着等に関する研究会」(座長・大橋勇雄中央大大学院教授)でのヒアリングで述べた。
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介護福祉士の資格を取得するには、高校を卒業後に2年以上(福祉系大学などを卒業の場合は1年)養成施設に通う方法と、国家試験を受験する方法とがある。養成施設ルートの場合は卒業と同時に資格が得られ、学費は2年制で約200万円。
同協会の調べによると、養成施設の定員に対する入学者の割合(充足率)は、介護保険制度が発足した2000年度には90%にまで上がったが、以降は年々低下し、07年度には70%弱にまで下がった。今年度はまだはっきりした数値は出ていないが、田中副会長は「60%を切るのでは。大変厳しい状況だ」と述べ、養成施設への入学を考える学生が減っている現状に懸念を示した。
田中副会長は学生の応募が奮わない理由として、低賃金やそれに見合わない重労働など、介護職の現場が労働環境として厳しいという認識が高校の指導現場に行き渡っており、進路に選択しないよう教師が勧めていると指摘。「社会的認識を変えなければ、なすすべがない」と述べた。
田中副会長は介護職に対する社会的認識を変えるための方策として、▽介護福祉施設の定員の半数以上を介護福祉士にするなどの配置基準の新設▽資格給のアップ▽実習費用の個人負担の免除−などが考えられるとした。
職場への定着促進策については、「夜勤は宿直ではない。おむつ交換や徘徊(はいかい)への対応があり、亡くなる人もいる。2,3人で何十人を見るのは不可能」と訴え、夜間の介護職の配置を増やせるような介護報酬上の評価を求めた。また、介護職には若い女性が7−8割を占めているものの、小規模事業所などでは産前・産後休暇や育児休暇などが取れないため、出産や育児への支援体制の整備も要請した。また、厚労省が昨年度から検討を開始した、認知症など専門分野で認定する上級資格の「専門介護福祉士」の創設について、「ぜひやってほしい」と述べ、介護福祉士のキャリアパスに組み込むよう要望した。
これに対し、同研究会の河幹夫委員(神奈川県立保健福祉大教授)は、養成施設の充足率の低下や、卒業生と就労現場とのミスマッチなどについて、「看護の世界の15年前の状況と重なっている」と指摘し、看護の市場を参考にする必要性を示した。
更新:2008/05/09 11:54 キャリアブレイン
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08/01/25配信
高次脳機能障害に向き合う 医師・ノンフィクションライター山田規畝子
医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。