道路関係税の暫定税率法案や特例公債法案の再可決に続いて、13日にも道路財源特例法の再可決が見込まれている。08年度予算を昨年末の決定通り執行する国会手続きはまだ続いているが、同時並行的に、09年度予算編成作業が始まっている。財政制度等審議会財政制度分科会は建議に向けた論議を4月から開始している。政府税制調査会も近く09年度税制改正に向けた審議に入る。
ここ2、3年の予算編成は、企業業績の好調を主因とする税収増加で、国債発行の抑制が可能だった。歳出面でも公務員人件費の抑制や公共事業の見直し、社会保障水準の引き下げなどで対応してきた。しかし、09年度は簡単ではない。
歳出面では基礎年金の国庫負担を3分の1から2分の1に引き上げる政府公約の実施がある。そのためには2兆3000億円の財源が必要となる。また、福田康夫首相はガソリン税の暫定税率再可決後の会見であらためて、生活者重視の姿勢を強調した。年金のみならず、医療や介護などへの配分も焦点になる。
7月の北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)や5月末のアフリカ開発会議(TICAD4)を受け、温暖化対策や途上国援助での配慮も必要だ。
ところが、景気が踊り場に入ったこともあり、すでに税収は頭打ち傾向にある。消費税率引き上げや個人所得税の引き上げ・課税ベース拡大といった抜本的税制改革による増収策も、政治が選挙にらみの状況下では実現は容易でない。このままでは、国債発行が増加に転じたり、福祉など社会サービスの更なる切り下げによる政府への不信増大は避けられない。
そうした事態を招かないためには、憲法などで国民に保障されている社会サービスの水準を明確にするとともに、それを維持していく財源確保の手段を国民に提示すべきだ。歳出に見合った歳入を基本的には税で確保するということだ。無駄の徹底的な排除は当然のことだ。
安心や安全にかかわる医療、介護、教育などの立て直しは政府が取り組むべき緊急課題だ。ただ、今の財政状態ではじり貧になってしまう。財政がそうした機能を発揮できる歳入構造に持っていかなければならない。このためにも、歳入、歳出を切り離して考えるわけにはいかない。
基礎年金の国庫負担率引き上げが好例である。今の税収でまかなっていくことが困難ならば、消費税率の引き上げを行うのか、道路特定財源の一般財源化で一部をまかなうのか、抜本改正までの間、一時的に特別会計の積立金を充てるのか、などの検討が必要だ。地方分権推進のため、権限移譲に見合った自治体の税財源移譲も急ぐべきだ。
そうしたことをやってこそ財政の再生である。
毎日新聞 2008年5月9日 東京朝刊