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2008年5月9日

 異様な厳戒の中で五輪聖火のチョモランマ登頂に成功した、と報じられた。世界の最高峰に火をともすという、かつての中国皇帝でも思いつきそうな大芝居である

エベレストの英語名を中国では使わないが、チョモランマはチベットの呼称である。聖火はともったが、ダライ・ラマ側との「対話」が進んだという報道は聞こえてはこない

チベットには3人のラマがいる、と教えられた。本当はダライとそれに次ぐ少年高僧の2人なのだが、中国はダライ側の高僧を認めず、別の少年をラマに仕立てている。ダライ側の少年僧は長い間、当局の軟禁下にあるとされている

自分に都合のよい「指導者」を操り人形のように使うのは、列強の植民地支配で用いられた手段である。前世紀の遺物のようなやり方がまだ、まかり通っている。チベット人の協力がなければ登頂は無理だから、聖火ランナーも山を知る現地の人が動員された。ご都合主義の「混成部隊」である

チベット騒乱がなかったなら、最高峰の聖火を手放しでたたえていたかもしれない。美しくない舞台裏まで見えてしまった芝居である。


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