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  がん ! 患者会と相談窓口全ガイド


がん ! 患者会と相談窓口全ガイド

いいなステーション(⇒HP) 編、編集協力 池上英隆・野末 遥・平原憲道

1,680(1,600)円 A5 280頁 978-4-385-36267-0

初めての全国がん患者会ガイドブック。約200の患者会や各種相談窓口がわかる。定例会や電話での相談、講演会、機関誌などから連絡先まで。さらに全国のがん拠点病院やがん情報、書籍一覧、一般相談窓口と盛り沢山。

2007年 5月 5日

はじめに 本書の利用にあたって 目次 いいなステーション代表(和田ちひろ)紹介 「2章 仲間をみつけよう」の一部、紹介 「3章 インターネットでの患者の交流サイトも続々誕生!」の一部、紹介 見本ページ




●はじめに

 今日、国民の2人に1人ががんを罹患し、3人に1人がこの疾患で亡くなると言われています。

 2006年6月16日に「がん対策基本法」が制定されたこともあり、国を挙げてのがん対策は今後進んでいくと思われますが、現状には多くの問題点があるのもまた確かです。例えば、患者の住む地域や医療機関、または医師によって治療成績に大きな格差が存在することはかねてから指摘されています。同時に、刻々と進歩する医学技術の動向を踏まえて最善の治療法を選択するには、患者側に大きな負担がかかると言われています。いずれにせよ、現在のがん治療において、患者が情報収集力を磨きながら治療を進めていくことが重要だと言えるでしょう。がん闘病はまさに「情報戦」なのです。

 しかし実際には、「がん難民」(自分に最適な質の高い医療を受ける場を見つけることができない患者)という言葉が使われるように、患者が適切な情報に無事たどり着くのは、まだまだ難しいというのが現状のようです。

 もちろん、情報は治療や闘病全般に対する不安を取り除くには強力な手段となりえますが、それは利点ばかりではありません。例えば、治療の副作用やリスクの詳細を知ることは、時として闘病意欲を失わせるほど強い衝撃を与える情報になるのです。「賢い患者になろう」、「積極的に治療に参加しよう」というスローガンは無論正しいのですが、最初からそんなふうに病気と向き合える強い人はそれほど多くはいません。

 最初は誰だって不安にさいなまれ、怖くてたまらないはずです。

 でも大丈夫。どんな種類のがんにも、あなたと同じ苦しみを体験した「先輩患者」が存在しており、闘病をナビゲートしてくれるでしょう。また、あなたの悩みを受け止めてくれる電話相談や、さまざまな意思決定を支援するサービスも用意されています。これらから得る貴重な情報が、希望の光となることでしょう。

 本書は、あなたが「がん」と言われたら次にどうすればよいかを、主に「情報武装」という視点から書いています。がん関連情報の入手方法や各種相談サービス、そして患者会やインターネット上の交流サイトの情報まで、利用可能な情報源が幅広く収録されています。

 本書が、がん治療と向き合う上であなたに寄り添う頼もしい一冊になれば幸いです。

いいなステーション 代表 和田ちひろ



●本書の利用にあたって―患者会(2章)、患者交流サイト(3章)の内容と活用方法―

■掲載情報について■

 本書では、2006年7月から2007年3月までに調査に回答くださった「患者会」162団体(2章)、インターネット上で双方向のコミュニケーションが取れる場を提供している「患者交流サイト」のうち、サイトの管理人より掲載許可を得た約50サイト(3章)を掲載しています。

■カテゴリーの分類方法について■

 がんを部位別に分け、女性に特有のがんは「女性のがん」、子供に多いがんは「小児のがん」とまとめて別カテゴリーにしました。分類は原則として患者会が申請したとおりになっています。部位を限定せず全域のがんを扱っている場合には、「その他のがん&市民活動グループ」の中において「がん全般」と称しています。またこの中にはターミナルケアや命の問題に取り組む市民団体も含まれます。

■掲載順について■

女性のがん/血液・リンパのがん/消化器のがん/小児のがん/呼吸器のがん/頭頸部のがん/眼のがん/その他のがん&市民活動グループ

※なお、3章「インターネットのがん患者交流サイト」は、さらに細かな病名区分になっています。

■患者会の相談窓口を利用しよう■

 2章の各患者会の名前の右にマークのある団体は「相談窓口」を開いています。その方法は各種ありますので、本文を確認の上、連絡してみて下さい。

■なお、患者会の連絡先、住所、TEL、FAX、メール、ホームページは、引っ越しほかに伴い変更になる場合もあります。



●目  次

はじめに  1

まえがき―本書の利用にあたって  2

1章 がんと言われたら…
○情報を味方につけよう
○各種の相談窓口を活用しよう
 3

がんと言われたら… 4

(1)がん情報を調べよう 6

■まず、国立がんセンターのHPから「がん情報サービス」を見よう! 10
■がんの診療ガイドライン――標準治療とは? 12
■MindsのHPにはガイドラインが紹介されています 13
■患者会ではいろいろな冊子を作成しています 14
■部位別おしゃべり会 16

(2)電話相談を活用しよう! 18

■全国のがん拠点病院の相談支援センター 18/癌研有明病院の電話相
談 19/東京都 医療機関案内サービス ひまわり 19/がん 心のケア ほっとライ
ン 20/東京医療相談研究会 21
■日本対がん協会では、いろいろな相談窓口を開いています 22

(3)セカンドオピニオンを求めよう! 25

■セカンドオピニオン・ネットワーク 26
■セカンド・オピニオンを推進させる会 26

(4)日本医療コーディネーター協会に相談しよう! 28

(5)がんの医療者たちの支援活動もあります! 31

■キャンサーネットジャパン 31

(6)がん経験者だからできる支援活動もあります! 34

■乳がん体験者コーディネーター養成講座 35
■がん患者生活コーディネーター養成講座(VOL-NEXT主催) 36
■患者会を立ち上げる:ブーケ 37
■患者会を立ち上げる:淳彦基金 38
■患者講師になる! 39

2章 仲間をみつけよう
○全国の患者会の活動を紹介
○ターミナルやホスピスを考える市民グループの活動も紹介
 41

仲間をみつけよう! ―患者会とは? 42

女性のがん

アイリスの会 45
マンマの会 パセリ 46
森の会-筑波メディカル・ピンクリボンの会 47
前橋協立病院外科外来 ポピーの会 48
笑みの会 49
あけぼの会 50
イデアフォー 51
ソレイユ 53
ひまわりの会 54
NPO法人 ブーゲンビリア 55
声を聴き合う患者たち&ネットワーク「VOL-Net」 56
千葉乳がん患者の会 ねむの会 57
乳癌患者会「新樹」 58
ピンクリボンの会「ソフィア」 59
マリア ビヴァーチェ 60
ラ・ヴィアン・ローズ 61
山梨まんまくらぶ 62
乳がん最前線患者の会 63
ひまわり会 64
BCSG石川 65
友愛会 66
EMLの会 67
乳がん医療プラスα・ブーケの会 68
NPO法人 リ・ヴィッド 69
三重県乳腺患者友の会「すずらんの会」 70
関西医科大学病院 ひまわりの会 71
虹の会 72
大阪QOLの会 73
オンライン乳がん患者グループGT4 74
近畿大学附属病院 乳がん患者会「わたぼうし」 75
いちごの会 76
のじぎくの会 77
QOL“輪唱”岡山Andante 78
乳癌患者友の会 きらら 79
乳腺疾患患者の会 のぞみの会 80
いぶき会 81
あすかの会 82
ハートの会 83
ほっとマンマの日 84
オードリーの会(おおいた乳がん患者の会) 85
大分県立病院乳ガン患者会 やよい会 86
宮崎虹の会 87
若葉会 88
ひめやしの会 89
アスパラの会 90
子宮・卵巣がんのサポートグループ あいあい 91
ウイメンズ・キャンサー・サポート 93
NPO法人 女性特有のガンのサポートグループ オレンジティ 94

血液・リンパのがん

NPO法人 グループ・ネクサス 95
NPO法人 白血病研究基金を育てる会 97
財団法人 骨髄移植推進財団 98
12Bnet 99
NPO法人 日本からHTLVウイルスをなくす会 100
日本骨髄腫患者の会 101
淳彦基金を育てる会 102
血液疾患患者の会 フェニックス・クラブ 103
骨髄移植体験者の会 TOMORROW―あしたの会― 104
NPO法人 血液患者コミュニティ ももの木 105

消化器のがん

胃を切った人友の会 アルファ・クラブ 106
ハーモニー・ライフ 108
社団医法人 日本オストミー協会 109
日本肝臓病患者団体協議会 110
東京肝臓友の会 111
大阪肝臓友の会 112
ブーケ(若い女性オストメイトの会) 113

小児のがん

財団法人 がんの子供を守る会 114
小児がんネットワークMNプロジェクト 116
ボタニカルキッズ★クラブ 117
NPO法人 ファミリーハウス 118
ファミリーエージェンシー 119
かがやく未来(腫瘍性疾患児とともに歩む会) 120

呼吸器のがん

マスカットクラブ 121
肺癌について考える会 122

頭頸部のがん

青森喉友会 123
岩手喉友会 124
秋田県喉頭摘出者福祉団体 秋笛会 125
立声会 126
福島声友会 127
NPO法人 栃木県喉摘会 128
NPO法人 埼玉銀鈴会 129
社団法人 銀鈴会 130
NPO法人 日本喉摘者団体連合会 132
京葉喉友会 133
山梨県喉頭摘出者福祉会 134
静鈴会 135
福井県喉友会 136
京都喉友会 137
三重喉友会 138
NPO法人 関西喉友会 139
新声会 140
香川喉友会 141
愛声会 142
高知県喉友会 143
久留米喉友会 144
福岡筑声会 145
NPO法人 大分豊声会 146
宮崎県向声会 147

眼のがん

すくすく 148

その他のがん&市民活動グループ

ペイシェントアクティブ びわの会 149
がん患者と家族の会「かたくりの会」 150
秋田県肺がんネットワーク「あけびの会」 151
がんを考える「ひいらぎの会」 152
茨城よろこびの会 153
1、2の3で温泉に入る会 154
がん患者と家族の会「たんぽぽの会」 155
どんぐりの会 156
NPO法人 在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク 157
終末期医療を見つめるリフォレスト 158
癌と共に生きる会 159
NPO法人 ジャパン・ウェルネス 160
NPO法人 生と死を考える会 161
患者の集い・モミの木 162
国会がん患者と家族の会 163
NPO法人 千葉・在宅ケア市民ネットワークピュア 164
放医研患者友の会 165
支えあう会「α」 166
千葉県東?地区生と死を考える会 167
蕗のとう 168
NPO法人 日本がん患者団体協議会 169
NPO法人 明日の医療を考える会 170
NPO法人 ガンの患者学研究所 171
がん患者支援プロジェクト 172
灘ガンマンクラブ“GMC” 173
がん患者会「コスモス」 174
かながわ・がんQOL研究会 175
長野よろこびの会 176
NPO法人 いずみの会 177
サイコロクラブ 178
患者と家族と遺族の会 きらら会 179
がんを明るく前向きに語る・金つなぎの会 180
いずみの会 181
がん患者グループゆずりは 182
がんを語る有志の会 183
はりま粒友クラブ 184
生きがい療法実践会 185
がんの悩み電話相談室 おかやま 186
びわの葉の会 187
NPO法人 がん患者団体支援機構 188
緩和ケアを考える会・広島 190
びんご・生と死を考える会 191
NPO法人 周南いのちを考える会 192
徳島緩和ケア研究会 193
高知がん患者会「一喜会」 194
北九州がんを語る会 195
リンパ浮腫に対する弾性着衣の保険適応を実現する会〜鬨の会〜 196
リンパの会 197
リンパ浮腫にとりくむ会 りんりん 198
リンパ浮腫患者グループ あすなろ会 199
岩手にホスピス設置を願う会 200
群馬ホスピスケア研究会 201
NPO法人 ホスピス研究会 さいどばいさいど 202
在宅ホスピス協会 203
仏教情報センター・仏教ホスピスの会 204
ホスピスケア研究会 205
ホスピス研究会 OKAZAKI 206
あいちホスピス研究会 207
豊橋・生と死を考える会(ラムズイヤーグループ) 208
ぎふホスピス運動をすすめる会 209
NPO法人 日本ホスピス・ホームケア協会 210
NPO法人 日本ホスピス在宅ケア研究会 211
広島・ホスピスケアをすすめる会 にじの会 212
市民ホスピス・福岡 213

3章  インターネットのがん患者交流サイトも続々誕生 ! 215

■女性のがん

乳がんメーリングリスト TEDDY BEAR 218
まゆりんの乳がん騒動記 218
子宮癌・卵巣癌患者情報交換サイト「うさぎの本宅」 218
cheeez!ちぃの子宮がん体験記 218
子宮頸癌と異形成 218
卵巣嚢腫摘出記 218
はじめてのハラキリ―卵巣境界悪性腫瘍にみまわれて― 218
こぶの闘病日記 218
メルモメーリングリスト 218

■血液・リンパのがん

白血病談話室(ルークトーク) 219
あくび行進記 219
海好き 219

■消化器のがん

肝細胞癌サイト Dark Side 219
Voice ―日本のがん治療を考える― 219
Heaven's Door 219
GIST患者のための情報ページ 219

■小児のがん

小児がん みんなの闘病記 219
輝く子どもたち 小児がん・白血病 219
天使になった子供たち 「ひとりじゃないよ。一緒にいるよ」 220
髄芽腫・PNET家族のフォーラム 220
小児脳腫瘍コミュニティ@ちば 220
じゅんジュンJUNちゃんの闘病記 220
友紀野のタンポポ畑 220
小春日和 220

■呼吸器のがん

ゆるりと肺がん記 220
Casa Esperanza 220
Tamyのつぶやき(肺がん闘病記) 220
カイネ・ゾルゲン 220

■頭頸部のがん

SACHI ROOM 221
脳腫瘍のメーリングリスト 「うるる」 221
北国の頸髄損傷・重度脊髄障害広場 221
何とかなるさっ! 221
お世話になります 221
Everlasting World 221
「菌状息肉症」って何だろな? 221
甲状腺集まれ〜 221
今を大切に笑って生きる事。 221

■泌尿器・男性生殖器のがん

闘病の森 222
メッセンジャー 余命宣告をぶっ飛ばして! 222
腎細胞ガンになって考えたこと 222
はからずもがんと暮らしぬ 222
前立腺癌 私の場合 222
ひげの父さんのソウルフルワールド 222
患者が書いた前立腺癌の治療記録 222
睾丸腫瘍ホームページ 222

■がん全般

癌掲示板 222
がんふぉーらむ 222

4章 拡大するがん患者パワー 223

埴岡健一
医療ジャーナリスト/東京大学医療政策人材養成講座特認助教授/日経メディカル編
集委員

5章 全国のがん拠点病院

  ―相談支援センターを活用しよう!  247

巻末資料 ―がんの書籍リスト  261

索引



●いいなステーション代表(和田ちひろ)紹介

1972年愛媛県生まれ。1995年慶應義塾大学文学部人間関係学科卒業。1998年同大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。国立医療・病院管理研究所(現国立保健医療科学院)医療政策研究部協力研究員(1998〜2001年)、杏林大学保健学部助手(1998〜2002年)、医療専門チャンネル「ケアネットTV・メディカルch.」にて、「患者さんに選ばれるクリニック・そこが知りたい増患定着12のコツ」の番組パーソナリティ兼プロデューサー(2002〜2003年)を経て、2003年11月に、患者さんの“あったらいいな”の声を収集し、医療機関にフィードバックする目的で「いいなステーション」を設立。その後、東京大学医療政策人材養成講座特任教員を務める(2004〜2006年)。現在、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別研究助教授、厚生労働省医療施設体系のあり方に関する検討会委員、NPO法人ヘルスケア・リレーションズ理事長、財団法人正力厚生会専門委員会委員などを兼任。

主な著書に、「みんなの『こんな病院あったらいいな』が実現する本」(共著、日総研出版)、「ナースがつくる患者に選ばれる病院」(日本看護協会出版会)、「全国『患者会』ガイド」(監修、学習研究社)、「患者と減らそう医療ミス」(翻訳、エルゼビア・ジャパン)などがある。



●「2章 仲間をみつけよう」の一部、紹介

■患者会とは

 患者会とは、同じ病気や障害、症状など、患者体験に何らかの共通項を持った人が集まり、悩みや不安を共有したり、情報交換をしたりする会のことです。会によっては、定期的な例会を開催しているところもありますし、会報を発行しているところもあります。また電話相談を行っているところもあります。

 日本での患者会は、1948年に結核患者たちが「日本患者同盟」を作ったことが始まりです。その後、「全国ハンセン氏病患者協議会」ができ、主に生活保障などの権利要求や偏見排除といった社会運動が活動の主眼とされてきました。60年代に入ると、「サリドマイド児親の会」(63年)、「水俣病患者同盟」(74年)など、公害・薬害による賠償を求める会が相次いで発足します。その後、様々な病気や障害、難病ごとにグループが形成されてきました。

 最近では、いくつもの患者会が集結し、政策を動かすまでの力を持ち始めています。2006年6月に成立した「がん対策基本法」ができるまでの患者会の積極的な動きについては第4章に詳しく書かれていますが、ひとつひとつの会が草の根レベルで活動していた時代から、2005年を機に、がんの患者会が会の垣根を越えて一丸となり、がん対策に大きな影響を与えはじめています。

 患者会には、患者同士の交流を目的とした会や情報発信や勉強会の開催に主眼を置く会、そして前述したように政策提言などを積極的に行う会など多様なものが存在し、それぞれの目的を持って活動をしています。また病院によっては、1章16ページで紹介したように病院主催で患者同士の交流会を開催しているところもあります。静岡県立静岡がんセンターでは、がんの部位ごとに「患者家族集中勉強会」を開催し、患者や家族にがん発生のメカニズムや治療法などについて学んでもらう機会を提供しています。かかっている病院の看護師や医療ソーシャルワーカーなどに、院内での患者会について聞いてみるとよいでしょう。

■患者会の機能

 患者会のように患者が仲間として集まり、悩みを打ち明けることでもたらされる医学的効果については、アメリカのスピーゲル博士の研究が知られています。進行性乳がんの患者さんを対象に行われた研究では、定期的に会合に参加した患者さんとそうでない患者さんとで、その後の生存期間に大きな開きがあったこと、同様に、抑うつなどの精神状態においても、会合に参加した患者の方がより健康的であったことなどが示されました。日本でも、がんセンターの内富庸介先生が同様の研究を行っており、やはり精神的な安定などに影響があると指摘しています。

 「患者会」というと、かつては圧力団体のイメージさえあったため、医療従事者は積極的に関わることに抵抗があったようですが、最近では患者さんの精神的サポートを担うひとつの社会資源として、医療者からも見直されてきているようです。東京大学医療政策人材養成講座が2005年にがん治療に携わる医師327名を対象に行った調査では、9割以上の医師が「患者会の活動は非常に重要である」と答えています。一方で、「受け持ち患者に患者会に関する情報提供を行ったことがある」と答えた医師は3割にとどまっています。情報提供しない主な理由として、「活動の内容がよくわからないから」、「適当な患者会が存在しないから」といったものがあげられていました。つまり、患者会の存在自体は重要であると認識しつつも、実際の患者さんに紹介する段になると活動の内容や会の所在そのものが不明なために紹介できないというのが現状のようです。また、医師自身が関わっていたり、会に参加した人からの情報を直接に得ていないと、医療者としては患者会を無責任に勧められないという気持ちもあるようです。

 それらを踏まえて、患者会の今後の課題としては、それぞれの会の活動を積極的に社会に知らしめていく必要があります。そのひとつの手段として、ホームページを立ち上げることが考えられますが、実際には、患者会のうちホームページがあるのは3分の1に過ぎません。また、情報更新の作業を行うにもスタッフが不足していると嘆く患者会リーダーも多いでしょう。今後さらに重要となる継続的な広報活動を行うためにも、組織としての「患者会マネジメント」技術を啓蒙することも、今後の課題といえましょう。

■参加する際の留意点

 初めて患者会に電話をするとき、「何を聞かれるのだろう、何を言われるのだろう」という不安を抱くことでしょう。私も祖母が胃がんと言われた際、胃がんの患者会に電話をしたのですが、その際、「失礼ですが、どのような理由でお問い合わせいただいたのでしょうか?」と聞かれ、どこまで詳しくプライベートなことを話すべきか戸惑った覚えがあります。相談するために受話器を持って電話してみたものの、具体的に自分が何に悩んでいるのかが整理できておらず言葉につまることもあるでしょう。電話に応じてくれる人は沢山の相談を受けていますから、あなたが言葉足らずでも十分に気持ちを理解してくれると思います。ただし、患者会を主催している人の多くは無償のボランティアとして活動を行っているということは、忘れないでおきたいものです。主催者の多くは自身ががん、もしくは家族や大切な人ががんを患った経験がある人がほとんどです。彼ら自身の体調が悪いときや、家族の介護に疲れているときもあるかもしれません。特に、患者会の連絡先電話番号として公開されているものの中には、代表者の自宅の電話番号がある場合も少なくありません。あなたの方に余裕があるときは、夜間などの時間帯には配慮しましょう。また、電子メールで連絡がとれるところも増えていますので、まずはそちらを活用すると良いでしょう。

 また、活動目的や参加者の年齢、性別などは会によって異なるため、対象とする疾患や部位が一致するからといって、必ずしもあなたに合う会であるとは限りません。年代や性別、重症度などによって、興味の対象や議論の内容にも自ずから違いが出てくるからです。ひとつの会に過度に期待することはせず、「自分とは合わない」と感じたら違う会を探してみるなどして、柔軟な姿勢で臨むことをお勧めします。

 最後に、患者会の定例会などに参加し、他の患者さんの話を聞いたり、自分の悩みを打ち明けたりすることは、患者本人にとっては負担になることもあります。その場合には、家族や友人がまず参加して様子を報告したり、会報を取り寄せてみるなどして様子をうかがい、患者さん自身の機が熟すのを待つことも大切です。

■がんの主な患者会

 本章では、がんの患者会162ヶ所を部位別に紹介しています。またターミナルケアやホスピスを考える市民活動などもあわせて掲載しています。 連絡先やHPアドレスなどは、引っ越しほかの理由で変更になることも考えられます。ご了解下さい。

 また、連絡先の公開情報は各患者会のご希望の形にしてあります。例えば、住所の欄を公開したくない場合は ―― などのスタイルになっています。ご了解下さい。



●「3章 インターネットでの患者の交流サイトも続々誕生!」の一部、紹介

■「患者コミュニティー・サイト」とは

 インターネット上で患者同士が交流できるホームページ(以下、サイト)のことを「患者コミュニティー・サイト」と呼びます。そこは、同じ病気や障害を持つ人同士が、地理的な制約を超えて集うことのできる仮想的な「交流の場」です。コミュニティー・サイトでは、掲示板(BBS)、メーリングリスト、チャットの全てまたはいずれかを用いて、双方向のコミュニケーションをとることができます。

 ITの進化と共に1990年頃からインターネット利用が急速に普及し、日本でも90年代後半から個人が比較的簡単にサイトを開くことができるようになりました。その流れに合わせて、患者個人が自分の疾患に焦点を当てたパーソナルなサイトを持つ事例が増えるようになりました。それらは徐々にコミュニティー機能を追加し、類似する疾患を持つ患者同士が密接に情報交換をしたり悩みを打ち明けることのできる「交流の場」へと発展していきました。

 いわゆる「リアル(仮想的でない)」の患者会と比較すると、患者コミュニティー・サイトにはいくつか大きな特徴があります。その一つが、「より細分化された病名で患者同士が出会える」というものです。一例として、「髄芽腫(ずいがしゅ)」という小児脳腫瘍のひとつである疾患の事例を見てみましょう。かつては、「小児がん」という共通項で集まる患者会の中から、親達が「小児脳腫瘍」という共通項で集まる人を個人的に探し、さらにその中で十数%を占める「髄芽腫」の人を探していくというプロセスが必要でした。しかし、疾患名や情報ニーズが細かくなればなるほど、ぴったりとマッチする同じ患者を探すことは難しくなります。特に、患者数が極めて少ない病気の場合、リアルな場ではなかなか出会うことができませんでした。この制限を越えるものとして期待されているのが、患者コミュニティー・サイトなのです。

 ここで米国に目を移すと、著名な映画監督スティーブン・スピルバーグ氏らにより設立された、大規模な小児の患者コミュニティー・サイトが存在します。氏らは「スターライト・スターブライト子供財団」を設立し、ITを駆使した「スターブライト・ワールド」という仮想空間を運営することで、病気や年齢、性別に応じて病気の子ども同士が出会う交流の場をつくっています。そこで子どもたちは、不安や悩みを共有し、互いに励ましあうことができるのです。例えば、抗がん剤で髪の毛が抜けたショックをメールで話し合ったり、互いの頭に巻くバンダナを動画の画面で見せ合ったりして、同年代の子ども同士が病院や自宅療養をしながらにして交流を楽しんでいます。こうした取り組みによって、子どもの孤独感が解消されたり、自尊心が高まるなどの効果を実証する研究も行われています。

 このような交流を可能とする仮想空間が必要なのは、なにも子どもだけではありません。年齢を問わず誰もが、よりす早くかつ的確に医療情報を収集でき、患者同士で悩みを共有できるような仕組みが、インターネット技術を駆使すれば実現できるはずです。いいなステーションでは、医療ベンチャー企業の株式会社メディエイドと一緒に、患者同士が出会い、体験的知識を共有・蓄積できるコミュニティー・サイトを、最新の次世代型ネットコミュニティー機能を通じて実現するプロジェクトを目下開発中で、2007年秋ごろオープンの予定です。

■参加する際の留意点

 患者コミュニティー・サイトのメリットは多々ありますが、気をつけるべき点もいくつかあります。特に、患者同士で交わされた医学的な会話を鵜呑みにせず、必ず専門家に再確認をするという慎重さが求められます。治療法や対処法は患者個人のケースで差が生じるため、掲示板の書き込みやメーリングリストで交わされた情報だけを信じて勝手に治療法を追加したり、医師に無断で中断したりすることはとても危険です。闘病経験者が立ち上げているサイトで交される医学的会話は、必ずしも医学的根拠に基づいたものではなく、あくまで「一患者の経験」を通して得た知識からの発言だということを忘れてはいけません。

 また、仮想的な空間でのやり取りのみだと、ちょっとした言葉のあやなどがトラブルに繋がることもよくあります。機会があればオフ会(インターネット上で知り合った仲間と直接会って交流する会)に参加するなどして、「バーチャル(仮想的)」だけではなく「リアル」な場所にも顔を出し、それら二つのバランスをとりながら総合的に交流していくことでよりよい関係を築くことが出来ると思います。

■がんの主な患者コミュニティー・サイト

 本書では、星の数ほどもある患者コミュニティー・サイトの中から、サイトの管理人の持つ情報量や情報の更新頻度に関して、極めて管理が行き届いていると思われるものを厳正し、約50サイトを紹介しています。掲示板の場合、誰かの相談に対してすぐに返信がなされているか、そのコメントが適切か、内輪話のみで盛り上がっていないかなどが指標となっています。また、サイト全体の更新頻度やリンク集、闘病記などの充実度も参考にしています。最終的には、私自身または家族が病気になったとき、この掲示板に書き込み、相談したいと思うか否かで判断しました?

 各サイトの管理人には、いいなステーションが直接連絡をとり、2007年2月末日時点で掲載承諾が得らえたものを載せています。また紙面の都合上、患者会がない疾患のコミュニティー・サイトを優先的に掲載しています。


乳がん/まゆりんの乳がん騒動記 ⇒ HP /管理人は千葉県がんセンターで闘病経験を持つ相談員として活躍中。「まゆりんの本棚」には、がんと向き合うための書籍が厳選して紹介されています。

子宮体がん/子宮癌・卵巣癌患者情報交換サイト「うさぎの本宅」 ⇒ HP /子宮がん・卵巣がんの治療体験情報を集めた情報交換サイト。体験談、掲示板、メンバー制のコミュニティーなどコンテンツが豊富。

子宮体がん/cheeez!ちぃの子宮がん体験記 ⇒ HP /がん治療の体験記、病気や血液検査に関する解説などがあります。

子宮頸がん/子宮頸癌と異形成 ⇒ HP /子宮頸部異形成とHPV、円錐切除術の専用掲示板があります。体験談や情報コーナー 「子宮頸部異形成のあれこれ」があります。

卵巣嚢腫/卵巣嚢腫摘出記 ⇒ HP /初心者、手術準備など病状別のコンテンツがあり便利。掲示板「天玉同好会」には多 くの書き込みがあります。

卵巣嚢腫/はじめてのハラキリ―卵巣境界悪性腫瘍にみまわれて― ⇒ HP /体験記のほかに手術後の傷跡や摘出した臓器の写真、病気の解説やリンク集がありま す。

胞状奇胎(絨毛がん)/こぶの闘病日記 ⇒ HP /MRIの画像、抗がん剤の副作用による頭髪の画像、血液検査のデータなど詳しい資料 があります。

婦人科がん/メルモメーリングリスト ⇒ HP /婦人科系癌のメーリングリストです。病気に関する情報交換をしたり、気楽に遠慮な く話せる場所となることを願って開設されました。

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