2008年05月06日
新司法試験再現答案（民事系）。
GW特別企画っぽくてなんか良いですね。
＜取り扱い注意＞
これはあくまで一つの解答であって、それにすぎません。
厳密に分析するなら、答案を比較すべきです。
そういう再現答案集を予備校が売っているので、それも適宜参考にしてください。
＜お願い＞
使えた、でも使えない、でも良いので、感想をいただけると嬉しいです。
民事系 221.43/300
順位はこんなもんで、各々の科目では、私より上の人はたくさんいます。
設問はこちら。出題の趣旨はこちら。
民事系は特に、分量が多いので、どこが合っているのか間違っているのか、
分析がよく分からないです。
予備校でも分析の仕事をしていましたが、結局よく分からなかったです。
傾向として何となく言えるのは「とりあえず、いっぱい書こう」。
露骨に間違えたところもあるけれど、キニシナーイ。
第１問
［設問１］
（１）選択すべき手続
�。兌劼�スポーツ施設の運営事業を承継する場合
Ｑ社がスポーツ事業を承継する場合は、事業そのものを直接移転できる包括承継としての合併や会社分割（会社法７４８条以下）、あるいは個別承継としての事業譲渡（４６７条以下）が考えられる。その中で合併や会社分割は反対株主に株式買取請求権が生じてしまうため（７８７条１項）、Ｑ社は株式買取請求権が生じない手続を求めている以上は採用できない。よって個別承継としての事業譲渡を採用すべきである。
�■兌劼�当該スポーツ施設をショッピングセンターに転用する場合
Ｑ社がスポーツ事業を承継せず単にスポーツ施設だけを得ようとする場合は、後述のように手続が重い事業譲渡を採用する必要はなく、単にスポーツ施設についてＰ社とＱ社で売買契約を結んで譲渡すればよい。これには株式買取請求権は生じない。ただし、当該スポーツ施設がＰ社にとって重要な財産である場合は後述のように特別の手続が必要になる。
（２）手続の進め方
�。兌劼�スポーツ施設の運営事業を承継する場合
事業譲渡は、一定の事業目的のために組織化され、有機的一体的に機能する営業用財産を譲渡し、これによって営業活動を承継させ、当然に譲渡会社が競業避止義務を負うものを言う。基本的には営業用財産の売買契約であるので、Ｐ社およびＱ社で事業譲渡契約を締結すればよい。
しかし、譲渡会社は当然に競業避止義務を負うなどして企業活動に重大な影響を及ぼすため、会社の実質的所有者である株主の関与が強化されている。すなわち４６７条１項で１号は事業の全部の譲渡、２号で事業の重要な一部の譲渡に株主総会決議の承認が必要とされており、これは特別決議が必要である（３０９条２項１１号）。
本件ではＰ社はホテル事業及びスポーツ事業の二つの事業を営んでおり、そのうちスポーツ事業を譲渡するのは事業の一部であると言える。するとこのスポーツ事業が「重要な」事業の一部かが問題となり、そうだとすると株主総会決議が必要となる。重要かどうかの基準の一つとして、その事業にかかる資産の価額の総資産に占める割合が考えられる。４６７条１項２号が譲渡する資産の帳簿価額が総資産額の２０％を下回るときを一律に総会決議が不要としているのは、２０％くらいなら重要でないと言えるだろうと考えていると言えよう。逆にそれを大幅に上回るようであったならば、重要であると言いやすくなる。本件ではスポーツ事業部にかかる資産の帳簿価額はＰ社の総資産額の約４０％を占めており、２０％を遙かに上回るのであって、充分に重要であると認めることができる。従って、Ｐ社側では株主総会特別決議が必要となる。
一方営業を譲り受けるＱ社は、競業避止義務など企業活動に重大な影響を及ぼす義務が生じるわけではないので株主の関与はそれほど必要とされず、事業の一部譲り受けの場合は株主総会決議は必要ではない。ただし、事業の全部譲り受けの場合にはその額が多大になって会社の事業活動にも影響を与えかねないので決議が必要とされる（４６７条１項３号）。本件では前述の通り事業の一部譲渡であるので、Ｑ社側では決議は不要である。
�■兌劼�当該スポーツ施設をショッピングセンターに転用する場合
スポーツ事業を承継しないでスポーツ施設だけを譲渡したい場合は、競業避止義務などが生じてしまう事業譲渡ではなく、単なる施設の売買をすればよい。競業避止義務なども生じないし、額も少額であるのが普通なのでＰ社、Ｑ社とも株主総会決議は不要となる。ただし、重要な財産である場合にはその判断を慎重にさせるため、３６２条４項１号で取締役会の専決事項とされている。
当該財産が会社にとって重要な財産かについては法は直接基準を定めていないが、総資産に占める割合、旧来における処分についての取り扱い、事業活動に与える影響などを考慮するべきである。
Ｐ社にとっては、スポーツ事業部門にかかる資産の帳簿価格はＰ社の総資産額の約４０％を占めており、またスポーツ事業部はスポーツ施設の運営事業であって、その資産のほとんどはスポーツ施設そのものであると考えられるから、スポーツ事業の資産のかなりの部分はスポーツ施設その物であると考えられる。すると当該スポーツ施設はＰ社の資産総額４０％のうちのかなりの部分を占める財産であると言える。また、スポーツ事業の要であると考えられるため、その譲渡は旧来はなされておらず、慎重に行われていたと考えられる。またスポーツ事業の活動が困難になるのであり、事業活動に与える影響は大きい。以上から考えると、Ｐ社にとって当該スポーツ施設は重要な財産であり、その処分には取締役会決議が必要だと考える。
一方譲り受けるＱ社にとっても３６２条４項１号で重要な財産の譲り受けは取締役会の専決事項とされている。ここで「重要」かどうかはＱ社にとって重要かで判断すべきである。譲り渡し側にとっては重要であっても、譲り受け側の事業規模からすればごくごく小さいと言うこともあり得るからであり、その場合は慎重な判断は必要ないと考えられるからである。本件ではＱ社の事業規模などは必ずしも明らかではないが、Ｐ社にとってはかなり重要な財産の譲り受けであり、その額もＱ社にとっても決して低くはないと思われ、重要な財産に当たりうる可能性があるので、念のため取締役会で決議すべきであると考える。
［設問２］
（１）事業譲渡契約書第１条について
事業譲渡契約書第１条２項には「本事業に関わる甲の資産及び負債は、乙に譲渡される」とある。しかし事業譲渡は前述の通り個別承継であって、包括承継と違って負債は当然には承継されない。債権者としては債務者が変わる免責的債務引受になってしまうので、債権者の個別の合意が必要となるはずである。にもかかわらず本条項はあたかもＰ社とＱ社の合意だけで負債が移転できるような書きぶりであるが、債権者の合意を取らなければこのような効果は生じないので、無意味な規定になる可能性がある。
（２）Ａの利益相反の可能性について
ＡはＰ社の代表取締役とＱ社の取締役を兼任している。その中でＡは契約書３条において本事業を１０億円で譲渡する契約をしてしまったがこれはスポーツ事業の事業価値及びスポーツ施設の資産価値よりも遙かに低い。これはＰ社の利益を犠牲にＱ社の利益を図るものとして利益相反行為になるおそれがある。利益相反行為で会社に損害を与えた場合は４２３条３項で任務懈怠が推定される。
利益相反は３５６条１項２号に定められており、「取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき」とされている。この趣旨は取締役が権限を利用して会社を犠牲に自己又は第三者の利益を図ることを防止することである。そうすると、会社が犠牲にされる場合は自己又は第三者の名義であるときには限られないから、「のために」は「計算で」、の意義、つまり経済的利益を帰属させるため、と広く解釈すべきである。ただし、利益相反は類型的に会社に危険な行為を特に規定しているのであるから、全く無関係な第三者の経済的利益を図るということはあまり想定できないと考える。すると、その第三者は当該取締役と何らかの経済的な関係がある場合に限ると解釈すべきであると考える。
これを本件についてみると、ＡはＱ社の取締役ではあるが代表権はないため、Ｑ社に帰属した経済的利益を自分に有利に帰属させよう業務執行することができない。また取締役の職務執行の対価としての報酬は賞与も含め全て３６１条１項で株主総会決議が必要となっており、Ａが自由に報酬を増やす形で自己に利益を還元することはできない。するとＡがＱ社の大株主でもない限りはＱ社に利益が帰属してもＡが経済的利益を受けることはなく、類型的に危険な行為であるとは言えない。すると第三者であるＱ社のために利益相反行為をしたとは言えないと解する。そうすると当該契約がＰ社の取締役会で承認されたことは３６５条１項及び３５６条１項の利益相反行為についての承認ではないということになる。
しかし、利益相反行為ではないとして４２３条３項で任務懈怠が推定されないとしても、善管注意義務（３３０条及び民法６４４条）、忠実義務（３５５条）違反として４２３条１項の任務懈怠一般として責任を負いうるのは当然である。本件では時価の半額近い値段でスポーツ事業をＱ社に売却しており、Ｐ社は莫大な損を受けた。これは代表取締役としてのＡの任務を懈怠したと容易に言うことができよう。またそのことにＡは過失があると思われる。するとＡは４２３条１項所定の責任を会社に対して負うことになり、またこれは株主代表訴訟（８４７条１項）の対象にもなる。
（３）決議取消の可能性について
前述の通り譲渡会社からすると事業譲渡は競業避止義務などを伴うため会社に大きな影響を与えるがゆえに株主の関与が強化されている。その趣旨から考えれば、会社の実質的所有者である株主が最終決定をすることが事業譲渡の要件として必須であって、株主総会決議が必要であるにもかかわらずそれを経なかった場合はその事業譲渡は絶対的に無効なると解さざるを得ないとすべきである。本件では確かにＰ社では総会決議がされているものの、後述の通りそれが取り消される可能性があるのであって、そうすると結局決議がなかったことになって事業譲渡の要件を欠き、無効になってしまう可能性があるのである。
本件ではＰ社の総会決議にＰ社の議決権総数の４０％を占める株主であるＱ社が議決に賛成している。前述の通り事業譲渡に必要な総会決議は特別決議であり３分の２の賛成が必要であるから、Ｑ社が賛成していたと考えざるを得ない。すると、Ｑ社が自己に著しく有利な価格で事業を譲り受ける決議に賛成したとして、８３１条１項３号の「特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされた」として決議取消自由に当たりうる。しかもその場合は同２項で裁量棄却の対象になっていないから、取消の訴えが提起された場合は必ず取り消されてしまうことになる。すると前述の通り事業譲渡そのものも無効になってしまうのであって、非常に不安定な状態にあることになる。
（４）契約書１２条について
契約書１２条はＰ社及びＱ社で事業譲渡契約を合意解除できる旨を定めている。しかし前述の通り事業譲渡は株主にとって重大な影響を及ぼすため、総会決議の対象となる場合の決定は株主総会の専決事項とされているのである。しかるに合意解除は債務不履行解除や取消と違って一般的には新たな合意解除契約として遡らずにその時点から現状復帰するものであり、新たに事業譲渡をし直してＱ社からＰ社に移転するのに他ならないと考えられる。するとその場合は本来新たに株主総会決議が必要となるはずなのに、このような合意解除ができる旨の条項を入れておけば株主総会決議を経ずに合意解除ができるのか疑問が残り、条項が無効の余地があると考える。将来の条件付きの承認というのもありうるが、将来については将来の株主がそれぞれ事業譲渡の可否を決定すべきであり、現在の株主が底まで処分することはできないと解するべきである。すると条項１２条はやはり無効の余地がある。
以上
第２問
［設問１］
（１）債権譲渡担保の法的性質
私は、譲渡担保契約は、担保的な構成と所有権的な構成があるが、その契約によって当該目的物や債権の帰属を確定的に債権者に移転するい所有権的な構成を取るべきと考える。債権譲渡担保については担保権としての性質も強いものの、形式は債権譲渡の要件を全て備えるのであって債権譲渡ではないというのは難しく、担保的性質は精算義務のところで考慮すればいいと考える。また契約の仕方によっては担保的な性質の強い譲渡担保契約も設定しうると考えるが、少なくとも本件においては、債権を譲渡する旨の合意があり、また動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律（以下特例法）の登記による対抗要件具備（特例法４条１項）もすぐにされており、外形上も債権譲渡の形式が強いのであって、これを債権譲渡ではないとするのは困難である。よって少なくとも本件では所有権的構成を採用して、確定的にＡＢ間の債権がＸに移転したと構成すべきである。
（２）各要件事実の検討
�，砲弔い�
所有権的構成を採るならば既にＸには債権が確定的に移転しているのだから、その事実だけでＸはＢ及びその連帯保証人Ｙに債権の行使ができるはずである。そして債権の移転についてはＸＡ間の債権譲渡担保契約があることを主張立証すればそれで充分なはずであり、貸金債権の発生原因事実は譲渡担保契約の要素でもないと考えられるので、主張立証は不要であると考える。
�△砲弔い�
債権譲渡登記をしたことは特例法４条１項及び民法４６７条により債権譲渡における第三者対抗要件を備えたという意味である。ここで一般的に対抗要件の具備は請求原因ではなく権利抗弁に対する再抗弁であると考えられている。なぜならまず法律要件分類説からすれば対抗要件の具備は実体法上の目的物の移転や債権の帰属の移転の有効要件とはされていないので、請求原因とするのは難しい。また相手方が争うか未定なのに常に原告に請求原因で主張させなければならないというのも酷である。一方で対抗要件がないことを証明するのは悪魔の証明として困難であるから被告に負担させることは妥当ではないため、被告側には争う旨の権利抗弁にして、さらにそれに対する再抗弁として対抗要件具備を原告に主張させれば妥当な結果になる。以上により第三者対抗要件を備えたことは請求原因として主張する必要はない。
��について
譲渡担保を実行する旨の通知は、担保的構成であるならば債権の帰属を確定させる意味があるが、所有権的構成を採用している以上は債権の帰属の変更を加える意義はなく、単に債務者が弁済して債権を受戻せる権利を消滅させて精算義務を生じせしめるだけである。すると既にＸに債権が帰属している以上は実行通知にはそれを変更する意味はないので、請求原因として特に主張する必要はない。
また、ＸＡ間の貸金契約においてはＸは実行通知まではＡに代金の受領権を留保しており、それまではＡのみが代金を回収できるのであってＸは代金を回収できない趣旨だと思われる。しかしこれは通常の譲渡担保契約の要素ではなく、付款である。付款は自らにとって有利な結果を求める側が主張立証すべきであり、本件ではＸに受領権がないと主張したいＢとＹ側で「まだ通知がないからＸには受領権がないはずだ」と主張立証する抗弁である。従って請求原因でＸが主張立証する必要はやはりない。
�い砲弔い�
債権譲渡の事実及び特例法登記がなされたことについて登記事項証明書を交付して通知することは特例法４条２項により債務者対抗要件である。そして�△能劼戮芯未蠡亶獲弖鏘馮�は一般的には再抗弁であって請求原因ではない。従ってこれも請求原因で主張する必要はない。
［設問２］
�，砲弔い�
まず、共同訴訟人独立の原則は、弁論主義の考え方に基づくものであるということができる。弁論主義とは訴訟資料の収集・提出を当事者の権能かつ責任とする建前のことである。民事訴訟法は私人間の実体法上の紛争を扱うものであって、実体法上は私法上の権利につき私人の自由な処分が認められているので、その訴訟法的反映として、民事訴訟法においても私的自治として、明文はないものの当然の内容として弁論主義が認められるべきである。弁論主義の内容としてＡ当事者が提出していない事実による裁判の禁止、Ｂ争いのない事実についての裁判所の判断の拘束、Ｃ職権証拠調べの禁止があげられる。そして共同訴訟人独立の原則で問題となるのはＡである。
民事訴訟法３９条は共同訴訟の一般則として共同訴訟人独立の原則を定めているが、４０条の必要的共同訴訟を除いた通常共同訴訟を念頭に置いており、通常共同訴訟は本来別訴でも良いものを便宜的に併合しただけにすぎないのであって、弁論主義の性質が大きく修正されることはない。すなわちＡの内容がそのまま当てはまるのであって、当事者にとってはたまたま便宜上併合されたにすぎないのであり、弁論主義のＡの内容からはされるはずもない自分が提出してもいない事実によって裁判を受けるいわれはないのである。従って共同訴訟人独立の原則はその弁論主義の内容であるＡ、つまり自分の提出していない事実によって裁判をされることがないという原則を確認しただけにすぎないのである。
一方で、共同訴訟人間の証拠共通の原則は、自由心証主義（２４７条）の考え方に基づくものであるということができる。自由心証主義は証拠のついての評価を裁判官の自由な心証に委ねている。ここで共同訴訟人独立の原則を支える本来は別々の訴訟であるはずだという考え方を貫くと、ある一つの証拠から得られる心証は、一つの歴史的事実として一つの心証であるはずなのに、それを区々にするには裁判官に自由な心証を歪めすぎることになる。そこで証拠評価については共同訴訟では一つの証拠から一つの心証だけ得て良いとして証拠共通の原則が採られているのである。従って証拠共通の原則は、本来便宜的に併合しただけにすぎない通常共同訴訟において、個別訴訟と同じ扱いにするという点をやや修正し、自由心証主義を重視した結果だと言うことができる。
�△砲弔い�
本件においてはＸＹ間の訴訟でＡ・Ｂの各担当者の証人尋問が終わってからＺの訴訟が併合されている。ここでの問題は、証人尋問が終了した時点で既に裁判官の心証が形成されてしまっており、Ｚにとって不利な状態から訴訟を開始しなければいけないおそれがあるということである。Ｘの訴訟尋問の巧拙によっては証人尋問についての反対尋問が適切になされているとは限らず、場合によってはＺの不利を見越してなれ合い的な訴訟がされてないとも限らない。通常訴訟ならばＺはゼロの心証から開始できるはずなのに、併合されたことによってこの訴訟状態をそのまま引き受けてしまい、不利になるといった問題点がある。
この解決としては、まず後から訴訟に参加したＺについてはＺの援用がなければＺに対して証拠を及ぼすことができないとすることが考えられる。しかしこれは結局一つの証拠について援用の有無によって心証を区々にすることを強いるものであり、自由心証主義をゆがめることになるため、到底取り得ない。
すると解決手段としては、１９０条では何人についても証人となる義務が定められており、証人となる回数についても特に制限はないから、Ｚが証人申請した場合は裁判所はこれを取り上げてもう一度証人尋問を行い、Ｚの尋問を経て改めて心証を形成すべきである。職業裁判官ならばもう一度正しい証人尋問を行うことができれば前の誤った心証を排除することが可能であると考えられるので、これによって問題を解決できると考える。
［設問３］
�。悖全屬遼［Т愀犬砲弔い�
ＸＡ間では３６００万円の消費貸借契約が締結されており、その担保としてＡＢ間の将来債権について譲渡担保契約が締結されている。
本件では将来債権の譲渡が行われているが、将来の債権であっても債権者、債務者、金額、発生原因などによって特定がなされている以上は譲渡は有効であり、ただ事業活動を不可能したり他の債権者を大きく害するような包括的・長期の将来債権の譲渡は公序良俗違反（９０条）違反となりうる。本件では債権者Ａ、債務者Ｂ、発生原因は基本契約に基づく売買契約、額も明示されており特定に欠けるところはなく、また基本契約は３年間だけであり、譲渡も３年分だけであるし特定の債務者に対する債権だけであるから、事業活動を不可能にしたり他の債権者を大きく害するとまでは言えず、公序良俗違反で無効とも言えない。従って本件での譲渡担保契約は有効である。
そして、ＸＡ間の消費貸借契約のうち、第１回弁済と第２回弁済は既に行われ、合計１６００万円が弁済され、現在は２０００万円の債務が残っている。また［設問１］で検討した通り譲渡担保契約につき所有権的構成を採ると、ＡＢ間の債権は既にＸに確定的に帰属しているのであり、Ａが弁済期に債務を払えずＸが担保実行の通知をしたことは、Ａの受戻権を消滅させて、Ｘに精算義務を課すだけにすぎない。本件では後述の通りＸが取得したＡＢ間の将来債権は合計２７００万円であり、２０００万円との差額７００万円につき、ＸはＡに返還して精算する義務を負う。これがＸＡ間の法律関係である。
�■悗裡抖擇咤擇紡个垢訐禅瓩硫槌�
まずＹに対しては、ＹはＢの連帯保証人であり、連帯保証人には民法４５４条で催告、検索の抗弁がないので、Ｂに対して請求できるものはそのままＹに対しても請求できる。前述の通りＸは確定的にＢに対する将来債権を取得しているのでそのままＹに対しても請求できるのが原則である。しかし本件での問題はＢに対する債権がＺにも二重に譲渡され、Ｚが対抗要件を備えたためＸとＺとの優先関係が問題になり、Ｘが必ずしも全額を請求できなくなるのではないかと思われる点である。
Ｘは平成１６年９月１３日に最初に特例法上４条１項の登記を備えて債権者対抗要件を備えている。しかしその後Ｚは平成１７年に第１回から第４回までのＡＢ間の売買債権について確定日付のある通知をＢに送り、債権者対抗要件及び債務者対抗要件を備えてしまった。
ＡＢ間の第一回売買分５００万円については、Ｘが特例法４条２項の通知、すなわち債務者対抗要件を備える前にＢがＺに弁済したものである。ここではＢには債務者対抗要件は一つしか届いていないのであり、ＢにとってはＺは唯一の債権者であって、Ｚに弁済することは何ら不自然なことはなく、有効な弁済となり、この５００万円の債権は消滅してしまう。よってＸはＢおよびその保証人Ｙに対しては請求できなくなる。また債権者対抗要件ではＸはＺに優先しているのでＸからＺに対して不当利得返還請求ができるとも考えられるが、Ｘは債務者対抗要件を備えていない以上はもともとＢ及びＹに対して全く請求ができない状態であったのであり、そもそも利得がなかったのであるから、Ｚが利益を得たとしてもＸには損害がなく、不当利得返還請求権の要件を満たさないためＺに対しても請求はできないと考える。
第二回、第三回売買分合計２７００万円についてはＸが特例法４条２項の通知をしていて、Ｂには誰が債権者であるかの情報が伝わっている。そもそも４６７条以下の債権譲渡における通知の趣旨は、債務者に誰が債権者であるかの情報を集約させ、インフォメーションセンターの働きをさせることである。そうだとするとＸが特例法４条１項の登記をした時点で、優先する第三者対抗要件をＸが備えたのだと、特例法４条２項の通知によってＢは情報を得ることができるため、Ｂにとってはどちらが優先される債権者か理解することができ、インフォメーションセンターとしての働きをすることができる。よってＢは先に通知を受けたＺではなく本来優先すべきと分かっているＸに対して弁済すべきであり、ＸはＢに対して２７００万円を請求できる。そしてその保証人Ｙに対しても同じく２７００万円請求できるのである。
第四回売買分４００万円についてもＸは特例法４条２項の通知をして債務者対抗要件を備えたが、問題は瑕疵担保責任によって第四回売買が解除されてしまったことである。この瑕疵は直ちには気付かないものであったので商法５２６条１項により６ヶ月以内に瑕疵を発見すれば良いところ本件では一ヶ月で発見できているのでこの要件を満たす。また商品の価値自体を失わせるような重大な瑕疵であり、契約の目的を達することができないので民法５７０条及び準用する５６６条１項の要件を満たすため解除の要件を満たし、解除が可能である。そして特例法４条２項の通知は同項と１項により４６７条の通知があったものとみなされるので、４６８条２項の規定がかかる。４６８条２項では通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由は譲受人に対抗できるとある。通知があったのは平成１７年１０月８日であり解除の意思表示がされたのは１０月１９日であるから通知の後であり、通知を受けるまでに生じた事由ではないためＢは譲受人Ｘに解除を対抗できないとも思える。しかし債務不履行や瑕疵担保責任による解除はもともと双務契約に内在するものであり、これが債権譲渡という債務者が関われない偶然の事情によって解除できなくなったりするのは妥当ではない。よって譲受人が当該債権がそもそも双務契約に基づく債権だと知っていた場合は、その双務契約であるという事由が債権譲渡通知の前の事由であると考えるべきである。本件ではＸはＡＢ間の契約が売買契約の売掛代金債権だと知っており、双務契約の事実を知っているからこれに当てはまる。従ってＢは解除をＸに対抗でき、ＸはＢ及びＹに５００万円を請求できない。
一方でＢはＺに対して特に何も考えないで特に何の留保もせずその譲渡を承諾してしまっている。４６８条１項は債務者が譲渡につき異議なき承諾をした場合は譲受人に対抗できるはずの事由が対抗できなくなるとしている。ここで異議なき承諾をするとは「異議がない」と積極的に明示する必要はなく、単に承諾すればいい。本件ではＢは漫然と承諾してしまったが、このような場合でも異議なき承諾があったとされてしまう。するとＢはＺに対しては解除の抗弁を対抗できず、Ｚに５００万円を弁済しなければならない。
するとＸはＺに優先するにもかかわらず５００万円を得られず、逆にＺはそれを得ることになるため、不当利得返還請求が可能になるとも思われる。しかしこれは第一回と同じであり、ＢはＸに対して有効に解除の抗弁を対抗できるのであり、ＸはそもそもＢに対して請求できなかったのであり、何ら利得がなかったのであって、Ｚが利益を得たとしても何らの損害もないのである。従って不当利得返還請求権の要件を満たさず、請求はできない。
以上により、ＸはＹに対して２７００万円、Ｚに対して０円請求できることになる。
［設問４］
（１）Ｙに考えられる主張
Ｙとしては請求異議訴訟の中で反射効理論を主張することが考えられる。反射効とは実体法上の依存関係がある場合にそれを訴訟に反映すべく、他の訴訟の結果をそのまま及ぼそうとする考え方のことである。例えば本件で問題となっている保証については、実体法上は主債務に対して附従性があり（民法４４８条参照）、主債務がないのに保証債務がないということはありえない。これを民事訴訟に反映すれば、主債務を争う訴訟で主債務がないと判断された以上、保証債務があることはありえないのだから、それを保証債務を争う訴訟においても援用できるとすべきである。本件でもＸＢ間の訴訟で主債務がないと判断がされているため、これを保証債務を争う請求異議訴訟の中で主張することが考えられる。
また、実体法上の依存関係だけでは根拠として充分ではないが、既判力との対比においても反射効理論の正当化を考えることができる。既判力が認められる根拠は当事者が手続保障が尽くされた訴訟で全力で争うことができた場合は、その結果について自己責任が生じ、また蒸し返しを防止するために必要であるからである。手続保障が尽くされて自己責任があると言えるのは原則として当事者なので民事訴訟法１１５条１項１号は既判力の主観的範囲について原則として当事者を定めている。そして２号〜４号はいずれも類型的に代替的手続保障がなされているかそもそも手続保障が必要でないものであるため既判力が正当化できる。逆にそれ以外のものは手続保障がされているとは言えないので既判力を及ぼすことができず、明文なき既判力の拡張は安易には認められない。しかし反射効理論で問題となる実体法上の依存関係においては、例えば債権者は主債務者との訴訟で手続保障を尽くされて全力で争った上で敗訴したわけであり、自己責任としてもはや争えないとしても不当ではなく、またそれを保証人に対して請求するのは実質的には紛争の蒸し返しであって不当である。すると既判力そのものではないものの、手続保障による自己責任及び蒸し返し防止の趣旨とも調和的である。これも反射効理論を正当化する根拠になる。
（２）Ｘの反論
まず第一に、仮に反射効理論を認めうるにしても、本件では保証人の訴訟であるＸＹ間の訴訟が先に確定してしまっているのであり、後に主債務者の訴訟であるＸＢ間の訴訟が確定したことは民事執行法３５条２項の口頭弁論終結後の新事由にはならないはずである。同条の定める口頭弁論終結後の新事由は実体法上の変化があったことを意味するが、判決の確定は形成判決でもない限り実体法上の変化をもたらすわけではない。本件は給付訴訟なのでそのようなことはない。すると判決が確定しただけでは口頭弁論終結後の新事由にならないので、本件のように保証人の訴訟が先に確定してしまった場合は反射効理論についてそもそも主張することができないと反論することが考えられる。
次に第二に、Ｙの主張する自己責任及び蒸し返し防止の趣旨についてはもっともであるが、本件ではＹは自ら先に争っているのであってＹにも自己責任があり蒸し返し防止が適用されるべきで、またＹは自ら全力で争えるはずにもかかわらずＢが適切に処理してくれるだろうと勝手に思いこみ欠席によって敗訴したのであって、これについてはＸに何の落ち度もない。にもかかわらず一方的にそれに反する主張をするのはまさにＹによる紛争の不当な蒸し返しであって、Ｙこそ既判力の趣旨からすれば請求異議訴訟での主張を封じられるはずであると反論することが考えられる。
（３）Ｙの再反論
口頭弁論終結後の新事由ではないというＸの反論については既判力の正当化根拠から反論することができる。口頭弁論終結前の事由が既判力の時的限界によって封じられるのは、前訴では手続保障が与えられて十分主張することが出来たのにあえて主張しなかった自己責任として蒸し返し防止が必要となるからである。すると、その趣旨からすれば前訴で主張可能性がなかった事由については既判力による遮断を正当化する根拠に欠けるのではないかと考えることができ、口頭弁論終結後の新事由は類型的に主張可能性がないものにすぎないと考えることもできる。
これを本件についてみると前訴ではＸＢ間の訴訟はまだ確定していなかったので、Ｘが確定的に敗訴するということは前訴で主張可能性が全くなかったのであり、手続保障が与えられず既判力による遮断の根拠を欠くと言える。よってＹとしては口頭弁論終結後の新事由ではないものの後訴である請求異議訴訟において主張することは妨げられないと主張することが考えられる。
次にＹにも蒸し返し防止の責任がかかるというＸの反論については、有効な再反論はやや難しいが、自己責任とは全力で争った場合に相手方がもはやこれ以上の争いはあるまいと信頼するがゆえに蒸し返し防止の義務を負うと考えれば、訴訟を通じて欠席して何の争いもしなかったような場合は相手方にそのような信頼が生じるとは限らず、何かの理由でもう一度きちんと争う可能性が残されていると考えることもできる。するともう一度きちんと全力で争うことが必ずしも蒸し返しとして不当すぎるわけではないと解することができる。
これを本件に見ると、確かにＢが適切に処理してくれると思いこんだＹにも落ち度はあるが、Ｙは終始欠席して何らの攻撃防御方法も提出しなかったのであるから、Ｘとしてはこれ以上何かＹに反論されることはないだろうと期待するにはやや不十分であったはずだとＹは主張することができると考えられる。
以上
恥ずかしいけど、もはや乗りかかった船というやつですね。
最近のポリシー：「乗りかかった船には、どしんと乗っとこう」
＜取り扱い注意＞
これはあくまで一つの解答であって、それにすぎません。
厳密に分析するなら、答案を比較すべきです。
そういう再現答案集を予備校が売っているので、それも適宜参考にしてください。
＜お願い＞
使えた、でも使えない、でも良いので、感想をいただけると嬉しいです。
民事系 221.43/300
順位はこんなもんで、各々の科目では、私より上の人はたくさんいます。
設問はこちら。出題の趣旨はこちら。
民事系は特に、分量が多いので、どこが合っているのか間違っているのか、
分析がよく分からないです。
予備校でも分析の仕事をしていましたが、結局よく分からなかったです。
傾向として何となく言えるのは「とりあえず、いっぱい書こう」。
露骨に間違えたところもあるけれど、キニシナーイ。
第１問
［設問１］
（１）選択すべき手続
�。兌劼�スポーツ施設の運営事業を承継する場合
Ｑ社がスポーツ事業を承継する場合は、事業そのものを直接移転できる包括承継としての合併や会社分割（会社法７４８条以下）、あるいは個別承継としての事業譲渡（４６７条以下）が考えられる。その中で合併や会社分割は反対株主に株式買取請求権が生じてしまうため（７８７条１項）、Ｑ社は株式買取請求権が生じない手続を求めている以上は採用できない。よって個別承継としての事業譲渡を採用すべきである。
�■兌劼�当該スポーツ施設をショッピングセンターに転用する場合
Ｑ社がスポーツ事業を承継せず単にスポーツ施設だけを得ようとする場合は、後述のように手続が重い事業譲渡を採用する必要はなく、単にスポーツ施設についてＰ社とＱ社で売買契約を結んで譲渡すればよい。これには株式買取請求権は生じない。ただし、当該スポーツ施設がＰ社にとって重要な財産である場合は後述のように特別の手続が必要になる。
（２）手続の進め方
�。兌劼�スポーツ施設の運営事業を承継する場合
事業譲渡は、一定の事業目的のために組織化され、有機的一体的に機能する営業用財産を譲渡し、これによって営業活動を承継させ、当然に譲渡会社が競業避止義務を負うものを言う。基本的には営業用財産の売買契約であるので、Ｐ社およびＱ社で事業譲渡契約を締結すればよい。
しかし、譲渡会社は当然に競業避止義務を負うなどして企業活動に重大な影響を及ぼすため、会社の実質的所有者である株主の関与が強化されている。すなわち４６７条１項で１号は事業の全部の譲渡、２号で事業の重要な一部の譲渡に株主総会決議の承認が必要とされており、これは特別決議が必要である（３０９条２項１１号）。
本件ではＰ社はホテル事業及びスポーツ事業の二つの事業を営んでおり、そのうちスポーツ事業を譲渡するのは事業の一部であると言える。するとこのスポーツ事業が「重要な」事業の一部かが問題となり、そうだとすると株主総会決議が必要となる。重要かどうかの基準の一つとして、その事業にかかる資産の価額の総資産に占める割合が考えられる。４６７条１項２号が譲渡する資産の帳簿価額が総資産額の２０％を下回るときを一律に総会決議が不要としているのは、２０％くらいなら重要でないと言えるだろうと考えていると言えよう。逆にそれを大幅に上回るようであったならば、重要であると言いやすくなる。本件ではスポーツ事業部にかかる資産の帳簿価額はＰ社の総資産額の約４０％を占めており、２０％を遙かに上回るのであって、充分に重要であると認めることができる。従って、Ｐ社側では株主総会特別決議が必要となる。
一方営業を譲り受けるＱ社は、競業避止義務など企業活動に重大な影響を及ぼす義務が生じるわけではないので株主の関与はそれほど必要とされず、事業の一部譲り受けの場合は株主総会決議は必要ではない。ただし、事業の全部譲り受けの場合にはその額が多大になって会社の事業活動にも影響を与えかねないので決議が必要とされる（４６７条１項３号）。本件では前述の通り事業の一部譲渡であるので、Ｑ社側では決議は不要である。
�■兌劼�当該スポーツ施設をショッピングセンターに転用する場合
スポーツ事業を承継しないでスポーツ施設だけを譲渡したい場合は、競業避止義務などが生じてしまう事業譲渡ではなく、単なる施設の売買をすればよい。競業避止義務なども生じないし、額も少額であるのが普通なのでＰ社、Ｑ社とも株主総会決議は不要となる。ただし、重要な財産である場合にはその判断を慎重にさせるため、３６２条４項１号で取締役会の専決事項とされている。
当該財産が会社にとって重要な財産かについては法は直接基準を定めていないが、総資産に占める割合、旧来における処分についての取り扱い、事業活動に与える影響などを考慮するべきである。
Ｐ社にとっては、スポーツ事業部門にかかる資産の帳簿価格はＰ社の総資産額の約４０％を占めており、またスポーツ事業部はスポーツ施設の運営事業であって、その資産のほとんどはスポーツ施設そのものであると考えられるから、スポーツ事業の資産のかなりの部分はスポーツ施設その物であると考えられる。すると当該スポーツ施設はＰ社の資産総額４０％のうちのかなりの部分を占める財産であると言える。また、スポーツ事業の要であると考えられるため、その譲渡は旧来はなされておらず、慎重に行われていたと考えられる。またスポーツ事業の活動が困難になるのであり、事業活動に与える影響は大きい。以上から考えると、Ｐ社にとって当該スポーツ施設は重要な財産であり、その処分には取締役会決議が必要だと考える。
一方譲り受けるＱ社にとっても３６２条４項１号で重要な財産の譲り受けは取締役会の専決事項とされている。ここで「重要」かどうかはＱ社にとって重要かで判断すべきである。譲り渡し側にとっては重要であっても、譲り受け側の事業規模からすればごくごく小さいと言うこともあり得るからであり、その場合は慎重な判断は必要ないと考えられるからである。本件ではＱ社の事業規模などは必ずしも明らかではないが、Ｐ社にとってはかなり重要な財産の譲り受けであり、その額もＱ社にとっても決して低くはないと思われ、重要な財産に当たりうる可能性があるので、念のため取締役会で決議すべきであると考える。
［設問２］
（１）事業譲渡契約書第１条について
事業譲渡契約書第１条２項には「本事業に関わる甲の資産及び負債は、乙に譲渡される」とある。しかし事業譲渡は前述の通り個別承継であって、包括承継と違って負債は当然には承継されない。債権者としては債務者が変わる免責的債務引受になってしまうので、債権者の個別の合意が必要となるはずである。にもかかわらず本条項はあたかもＰ社とＱ社の合意だけで負債が移転できるような書きぶりであるが、債権者の合意を取らなければこのような効果は生じないので、無意味な規定になる可能性がある。
（２）Ａの利益相反の可能性について
ＡはＰ社の代表取締役とＱ社の取締役を兼任している。その中でＡは契約書３条において本事業を１０億円で譲渡する契約をしてしまったがこれはスポーツ事業の事業価値及びスポーツ施設の資産価値よりも遙かに低い。これはＰ社の利益を犠牲にＱ社の利益を図るものとして利益相反行為になるおそれがある。利益相反行為で会社に損害を与えた場合は４２３条３項で任務懈怠が推定される。
利益相反は３５６条１項２号に定められており、「取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき」とされている。この趣旨は取締役が権限を利用して会社を犠牲に自己又は第三者の利益を図ることを防止することである。そうすると、会社が犠牲にされる場合は自己又は第三者の名義であるときには限られないから、「のために」は「計算で」、の意義、つまり経済的利益を帰属させるため、と広く解釈すべきである。ただし、利益相反は類型的に会社に危険な行為を特に規定しているのであるから、全く無関係な第三者の経済的利益を図るということはあまり想定できないと考える。すると、その第三者は当該取締役と何らかの経済的な関係がある場合に限ると解釈すべきであると考える。
これを本件についてみると、ＡはＱ社の取締役ではあるが代表権はないため、Ｑ社に帰属した経済的利益を自分に有利に帰属させよう業務執行することができない。また取締役の職務執行の対価としての報酬は賞与も含め全て３６１条１項で株主総会決議が必要となっており、Ａが自由に報酬を増やす形で自己に利益を還元することはできない。するとＡがＱ社の大株主でもない限りはＱ社に利益が帰属してもＡが経済的利益を受けることはなく、類型的に危険な行為であるとは言えない。すると第三者であるＱ社のために利益相反行為をしたとは言えないと解する。そうすると当該契約がＰ社の取締役会で承認されたことは３６５条１項及び３５６条１項の利益相反行為についての承認ではないということになる。
しかし、利益相反行為ではないとして４２３条３項で任務懈怠が推定されないとしても、善管注意義務（３３０条及び民法６４４条）、忠実義務（３５５条）違反として４２３条１項の任務懈怠一般として責任を負いうるのは当然である。本件では時価の半額近い値段でスポーツ事業をＱ社に売却しており、Ｐ社は莫大な損を受けた。これは代表取締役としてのＡの任務を懈怠したと容易に言うことができよう。またそのことにＡは過失があると思われる。するとＡは４２３条１項所定の責任を会社に対して負うことになり、またこれは株主代表訴訟（８４７条１項）の対象にもなる。
（３）決議取消の可能性について
前述の通り譲渡会社からすると事業譲渡は競業避止義務などを伴うため会社に大きな影響を与えるがゆえに株主の関与が強化されている。その趣旨から考えれば、会社の実質的所有者である株主が最終決定をすることが事業譲渡の要件として必須であって、株主総会決議が必要であるにもかかわらずそれを経なかった場合はその事業譲渡は絶対的に無効なると解さざるを得ないとすべきである。本件では確かにＰ社では総会決議がされているものの、後述の通りそれが取り消される可能性があるのであって、そうすると結局決議がなかったことになって事業譲渡の要件を欠き、無効になってしまう可能性があるのである。
本件ではＰ社の総会決議にＰ社の議決権総数の４０％を占める株主であるＱ社が議決に賛成している。前述の通り事業譲渡に必要な総会決議は特別決議であり３分の２の賛成が必要であるから、Ｑ社が賛成していたと考えざるを得ない。すると、Ｑ社が自己に著しく有利な価格で事業を譲り受ける決議に賛成したとして、８３１条１項３号の「特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされた」として決議取消自由に当たりうる。しかもその場合は同２項で裁量棄却の対象になっていないから、取消の訴えが提起された場合は必ず取り消されてしまうことになる。すると前述の通り事業譲渡そのものも無効になってしまうのであって、非常に不安定な状態にあることになる。
（４）契約書１２条について
契約書１２条はＰ社及びＱ社で事業譲渡契約を合意解除できる旨を定めている。しかし前述の通り事業譲渡は株主にとって重大な影響を及ぼすため、総会決議の対象となる場合の決定は株主総会の専決事項とされているのである。しかるに合意解除は債務不履行解除や取消と違って一般的には新たな合意解除契約として遡らずにその時点から現状復帰するものであり、新たに事業譲渡をし直してＱ社からＰ社に移転するのに他ならないと考えられる。するとその場合は本来新たに株主総会決議が必要となるはずなのに、このような合意解除ができる旨の条項を入れておけば株主総会決議を経ずに合意解除ができるのか疑問が残り、条項が無効の余地があると考える。将来の条件付きの承認というのもありうるが、将来については将来の株主がそれぞれ事業譲渡の可否を決定すべきであり、現在の株主が底まで処分することはできないと解するべきである。すると条項１２条はやはり無効の余地がある。
以上
第２問
［設問１］
（１）債権譲渡担保の法的性質
私は、譲渡担保契約は、担保的な構成と所有権的な構成があるが、その契約によって当該目的物や債権の帰属を確定的に債権者に移転するい所有権的な構成を取るべきと考える。債権譲渡担保については担保権としての性質も強いものの、形式は債権譲渡の要件を全て備えるのであって債権譲渡ではないというのは難しく、担保的性質は精算義務のところで考慮すればいいと考える。また契約の仕方によっては担保的な性質の強い譲渡担保契約も設定しうると考えるが、少なくとも本件においては、債権を譲渡する旨の合意があり、また動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律（以下特例法）の登記による対抗要件具備（特例法４条１項）もすぐにされており、外形上も債権譲渡の形式が強いのであって、これを債権譲渡ではないとするのは困難である。よって少なくとも本件では所有権的構成を採用して、確定的にＡＢ間の債権がＸに移転したと構成すべきである。
（２）各要件事実の検討
�，砲弔い�
所有権的構成を採るならば既にＸには債権が確定的に移転しているのだから、その事実だけでＸはＢ及びその連帯保証人Ｙに債権の行使ができるはずである。そして債権の移転についてはＸＡ間の債権譲渡担保契約があることを主張立証すればそれで充分なはずであり、貸金債権の発生原因事実は譲渡担保契約の要素でもないと考えられるので、主張立証は不要であると考える。
�△砲弔い�
債権譲渡登記をしたことは特例法４条１項及び民法４６７条により債権譲渡における第三者対抗要件を備えたという意味である。ここで一般的に対抗要件の具備は請求原因ではなく権利抗弁に対する再抗弁であると考えられている。なぜならまず法律要件分類説からすれば対抗要件の具備は実体法上の目的物の移転や債権の帰属の移転の有効要件とはされていないので、請求原因とするのは難しい。また相手方が争うか未定なのに常に原告に請求原因で主張させなければならないというのも酷である。一方で対抗要件がないことを証明するのは悪魔の証明として困難であるから被告に負担させることは妥当ではないため、被告側には争う旨の権利抗弁にして、さらにそれに対する再抗弁として対抗要件具備を原告に主張させれば妥当な結果になる。以上により第三者対抗要件を備えたことは請求原因として主張する必要はない。
��について
譲渡担保を実行する旨の通知は、担保的構成であるならば債権の帰属を確定させる意味があるが、所有権的構成を採用している以上は債権の帰属の変更を加える意義はなく、単に債務者が弁済して債権を受戻せる権利を消滅させて精算義務を生じせしめるだけである。すると既にＸに債権が帰属している以上は実行通知にはそれを変更する意味はないので、請求原因として特に主張する必要はない。
また、ＸＡ間の貸金契約においてはＸは実行通知まではＡに代金の受領権を留保しており、それまではＡのみが代金を回収できるのであってＸは代金を回収できない趣旨だと思われる。しかしこれは通常の譲渡担保契約の要素ではなく、付款である。付款は自らにとって有利な結果を求める側が主張立証すべきであり、本件ではＸに受領権がないと主張したいＢとＹ側で「まだ通知がないからＸには受領権がないはずだ」と主張立証する抗弁である。従って請求原因でＸが主張立証する必要はやはりない。
�い砲弔い�
債権譲渡の事実及び特例法登記がなされたことについて登記事項証明書を交付して通知することは特例法４条２項により債務者対抗要件である。そして�△能劼戮芯未蠡亶獲弖鏘馮�は一般的には再抗弁であって請求原因ではない。従ってこれも請求原因で主張する必要はない。
［設問２］
�，砲弔い�
まず、共同訴訟人独立の原則は、弁論主義の考え方に基づくものであるということができる。弁論主義とは訴訟資料の収集・提出を当事者の権能かつ責任とする建前のことである。民事訴訟法は私人間の実体法上の紛争を扱うものであって、実体法上は私法上の権利につき私人の自由な処分が認められているので、その訴訟法的反映として、民事訴訟法においても私的自治として、明文はないものの当然の内容として弁論主義が認められるべきである。弁論主義の内容としてＡ当事者が提出していない事実による裁判の禁止、Ｂ争いのない事実についての裁判所の判断の拘束、Ｃ職権証拠調べの禁止があげられる。そして共同訴訟人独立の原則で問題となるのはＡである。
民事訴訟法３９条は共同訴訟の一般則として共同訴訟人独立の原則を定めているが、４０条の必要的共同訴訟を除いた通常共同訴訟を念頭に置いており、通常共同訴訟は本来別訴でも良いものを便宜的に併合しただけにすぎないのであって、弁論主義の性質が大きく修正されることはない。すなわちＡの内容がそのまま当てはまるのであって、当事者にとってはたまたま便宜上併合されたにすぎないのであり、弁論主義のＡの内容からはされるはずもない自分が提出してもいない事実によって裁判を受けるいわれはないのである。従って共同訴訟人独立の原則はその弁論主義の内容であるＡ、つまり自分の提出していない事実によって裁判をされることがないという原則を確認しただけにすぎないのである。
一方で、共同訴訟人間の証拠共通の原則は、自由心証主義（２４７条）の考え方に基づくものであるということができる。自由心証主義は証拠のついての評価を裁判官の自由な心証に委ねている。ここで共同訴訟人独立の原則を支える本来は別々の訴訟であるはずだという考え方を貫くと、ある一つの証拠から得られる心証は、一つの歴史的事実として一つの心証であるはずなのに、それを区々にするには裁判官に自由な心証を歪めすぎることになる。そこで証拠評価については共同訴訟では一つの証拠から一つの心証だけ得て良いとして証拠共通の原則が採られているのである。従って証拠共通の原則は、本来便宜的に併合しただけにすぎない通常共同訴訟において、個別訴訟と同じ扱いにするという点をやや修正し、自由心証主義を重視した結果だと言うことができる。
�△砲弔い�
本件においてはＸＹ間の訴訟でＡ・Ｂの各担当者の証人尋問が終わってからＺの訴訟が併合されている。ここでの問題は、証人尋問が終了した時点で既に裁判官の心証が形成されてしまっており、Ｚにとって不利な状態から訴訟を開始しなければいけないおそれがあるということである。Ｘの訴訟尋問の巧拙によっては証人尋問についての反対尋問が適切になされているとは限らず、場合によってはＺの不利を見越してなれ合い的な訴訟がされてないとも限らない。通常訴訟ならばＺはゼロの心証から開始できるはずなのに、併合されたことによってこの訴訟状態をそのまま引き受けてしまい、不利になるといった問題点がある。
この解決としては、まず後から訴訟に参加したＺについてはＺの援用がなければＺに対して証拠を及ぼすことができないとすることが考えられる。しかしこれは結局一つの証拠について援用の有無によって心証を区々にすることを強いるものであり、自由心証主義をゆがめることになるため、到底取り得ない。
すると解決手段としては、１９０条では何人についても証人となる義務が定められており、証人となる回数についても特に制限はないから、Ｚが証人申請した場合は裁判所はこれを取り上げてもう一度証人尋問を行い、Ｚの尋問を経て改めて心証を形成すべきである。職業裁判官ならばもう一度正しい証人尋問を行うことができれば前の誤った心証を排除することが可能であると考えられるので、これによって問題を解決できると考える。
［設問３］
�。悖全屬遼［Т愀犬砲弔い�
ＸＡ間では３６００万円の消費貸借契約が締結されており、その担保としてＡＢ間の将来債権について譲渡担保契約が締結されている。
本件では将来債権の譲渡が行われているが、将来の債権であっても債権者、債務者、金額、発生原因などによって特定がなされている以上は譲渡は有効であり、ただ事業活動を不可能したり他の債権者を大きく害するような包括的・長期の将来債権の譲渡は公序良俗違反（９０条）違反となりうる。本件では債権者Ａ、債務者Ｂ、発生原因は基本契約に基づく売買契約、額も明示されており特定に欠けるところはなく、また基本契約は３年間だけであり、譲渡も３年分だけであるし特定の債務者に対する債権だけであるから、事業活動を不可能にしたり他の債権者を大きく害するとまでは言えず、公序良俗違反で無効とも言えない。従って本件での譲渡担保契約は有効である。
そして、ＸＡ間の消費貸借契約のうち、第１回弁済と第２回弁済は既に行われ、合計１６００万円が弁済され、現在は２０００万円の債務が残っている。また［設問１］で検討した通り譲渡担保契約につき所有権的構成を採ると、ＡＢ間の債権は既にＸに確定的に帰属しているのであり、Ａが弁済期に債務を払えずＸが担保実行の通知をしたことは、Ａの受戻権を消滅させて、Ｘに精算義務を課すだけにすぎない。本件では後述の通りＸが取得したＡＢ間の将来債権は合計２７００万円であり、２０００万円との差額７００万円につき、ＸはＡに返還して精算する義務を負う。これがＸＡ間の法律関係である。
�■悗裡抖擇咤擇紡个垢訐禅瓩硫槌�
まずＹに対しては、ＹはＢの連帯保証人であり、連帯保証人には民法４５４条で催告、検索の抗弁がないので、Ｂに対して請求できるものはそのままＹに対しても請求できる。前述の通りＸは確定的にＢに対する将来債権を取得しているのでそのままＹに対しても請求できるのが原則である。しかし本件での問題はＢに対する債権がＺにも二重に譲渡され、Ｚが対抗要件を備えたためＸとＺとの優先関係が問題になり、Ｘが必ずしも全額を請求できなくなるのではないかと思われる点である。
Ｘは平成１６年９月１３日に最初に特例法上４条１項の登記を備えて債権者対抗要件を備えている。しかしその後Ｚは平成１７年に第１回から第４回までのＡＢ間の売買債権について確定日付のある通知をＢに送り、債権者対抗要件及び債務者対抗要件を備えてしまった。
ＡＢ間の第一回売買分５００万円については、Ｘが特例法４条２項の通知、すなわち債務者対抗要件を備える前にＢがＺに弁済したものである。ここではＢには債務者対抗要件は一つしか届いていないのであり、ＢにとってはＺは唯一の債権者であって、Ｚに弁済することは何ら不自然なことはなく、有効な弁済となり、この５００万円の債権は消滅してしまう。よってＸはＢおよびその保証人Ｙに対しては請求できなくなる。また債権者対抗要件ではＸはＺに優先しているのでＸからＺに対して不当利得返還請求ができるとも考えられるが、Ｘは債務者対抗要件を備えていない以上はもともとＢ及びＹに対して全く請求ができない状態であったのであり、そもそも利得がなかったのであるから、Ｚが利益を得たとしてもＸには損害がなく、不当利得返還請求権の要件を満たさないためＺに対しても請求はできないと考える。
第二回、第三回売買分合計２７００万円についてはＸが特例法４条２項の通知をしていて、Ｂには誰が債権者であるかの情報が伝わっている。そもそも４６７条以下の債権譲渡における通知の趣旨は、債務者に誰が債権者であるかの情報を集約させ、インフォメーションセンターの働きをさせることである。そうだとするとＸが特例法４条１項の登記をした時点で、優先する第三者対抗要件をＸが備えたのだと、特例法４条２項の通知によってＢは情報を得ることができるため、Ｂにとってはどちらが優先される債権者か理解することができ、インフォメーションセンターとしての働きをすることができる。よってＢは先に通知を受けたＺではなく本来優先すべきと分かっているＸに対して弁済すべきであり、ＸはＢに対して２７００万円を請求できる。そしてその保証人Ｙに対しても同じく２７００万円請求できるのである。
第四回売買分４００万円についてもＸは特例法４条２項の通知をして債務者対抗要件を備えたが、問題は瑕疵担保責任によって第四回売買が解除されてしまったことである。この瑕疵は直ちには気付かないものであったので商法５２６条１項により６ヶ月以内に瑕疵を発見すれば良いところ本件では一ヶ月で発見できているのでこの要件を満たす。また商品の価値自体を失わせるような重大な瑕疵であり、契約の目的を達することができないので民法５７０条及び準用する５６６条１項の要件を満たすため解除の要件を満たし、解除が可能である。そして特例法４条２項の通知は同項と１項により４６７条の通知があったものとみなされるので、４６８条２項の規定がかかる。４６８条２項では通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由は譲受人に対抗できるとある。通知があったのは平成１７年１０月８日であり解除の意思表示がされたのは１０月１９日であるから通知の後であり、通知を受けるまでに生じた事由ではないためＢは譲受人Ｘに解除を対抗できないとも思える。しかし債務不履行や瑕疵担保責任による解除はもともと双務契約に内在するものであり、これが債権譲渡という債務者が関われない偶然の事情によって解除できなくなったりするのは妥当ではない。よって譲受人が当該債権がそもそも双務契約に基づく債権だと知っていた場合は、その双務契約であるという事由が債権譲渡通知の前の事由であると考えるべきである。本件ではＸはＡＢ間の契約が売買契約の売掛代金債権だと知っており、双務契約の事実を知っているからこれに当てはまる。従ってＢは解除をＸに対抗でき、ＸはＢ及びＹに５００万円を請求できない。
一方でＢはＺに対して特に何も考えないで特に何の留保もせずその譲渡を承諾してしまっている。４６８条１項は債務者が譲渡につき異議なき承諾をした場合は譲受人に対抗できるはずの事由が対抗できなくなるとしている。ここで異議なき承諾をするとは「異議がない」と積極的に明示する必要はなく、単に承諾すればいい。本件ではＢは漫然と承諾してしまったが、このような場合でも異議なき承諾があったとされてしまう。するとＢはＺに対しては解除の抗弁を対抗できず、Ｚに５００万円を弁済しなければならない。
するとＸはＺに優先するにもかかわらず５００万円を得られず、逆にＺはそれを得ることになるため、不当利得返還請求が可能になるとも思われる。しかしこれは第一回と同じであり、ＢはＸに対して有効に解除の抗弁を対抗できるのであり、ＸはそもそもＢに対して請求できなかったのであり、何ら利得がなかったのであって、Ｚが利益を得たとしても何らの損害もないのである。従って不当利得返還請求権の要件を満たさず、請求はできない。
以上により、ＸはＹに対して２７００万円、Ｚに対して０円請求できることになる。
［設問４］
（１）Ｙに考えられる主張
Ｙとしては請求異議訴訟の中で反射効理論を主張することが考えられる。反射効とは実体法上の依存関係がある場合にそれを訴訟に反映すべく、他の訴訟の結果をそのまま及ぼそうとする考え方のことである。例えば本件で問題となっている保証については、実体法上は主債務に対して附従性があり（民法４４８条参照）、主債務がないのに保証債務がないということはありえない。これを民事訴訟に反映すれば、主債務を争う訴訟で主債務がないと判断された以上、保証債務があることはありえないのだから、それを保証債務を争う訴訟においても援用できるとすべきである。本件でもＸＢ間の訴訟で主債務がないと判断がされているため、これを保証債務を争う請求異議訴訟の中で主張することが考えられる。
また、実体法上の依存関係だけでは根拠として充分ではないが、既判力との対比においても反射効理論の正当化を考えることができる。既判力が認められる根拠は当事者が手続保障が尽くされた訴訟で全力で争うことができた場合は、その結果について自己責任が生じ、また蒸し返しを防止するために必要であるからである。手続保障が尽くされて自己責任があると言えるのは原則として当事者なので民事訴訟法１１５条１項１号は既判力の主観的範囲について原則として当事者を定めている。そして２号〜４号はいずれも類型的に代替的手続保障がなされているかそもそも手続保障が必要でないものであるため既判力が正当化できる。逆にそれ以外のものは手続保障がされているとは言えないので既判力を及ぼすことができず、明文なき既判力の拡張は安易には認められない。しかし反射効理論で問題となる実体法上の依存関係においては、例えば債権者は主債務者との訴訟で手続保障を尽くされて全力で争った上で敗訴したわけであり、自己責任としてもはや争えないとしても不当ではなく、またそれを保証人に対して請求するのは実質的には紛争の蒸し返しであって不当である。すると既判力そのものではないものの、手続保障による自己責任及び蒸し返し防止の趣旨とも調和的である。これも反射効理論を正当化する根拠になる。
（２）Ｘの反論
まず第一に、仮に反射効理論を認めうるにしても、本件では保証人の訴訟であるＸＹ間の訴訟が先に確定してしまっているのであり、後に主債務者の訴訟であるＸＢ間の訴訟が確定したことは民事執行法３５条２項の口頭弁論終結後の新事由にはならないはずである。同条の定める口頭弁論終結後の新事由は実体法上の変化があったことを意味するが、判決の確定は形成判決でもない限り実体法上の変化をもたらすわけではない。本件は給付訴訟なのでそのようなことはない。すると判決が確定しただけでは口頭弁論終結後の新事由にならないので、本件のように保証人の訴訟が先に確定してしまった場合は反射効理論についてそもそも主張することができないと反論することが考えられる。
次に第二に、Ｙの主張する自己責任及び蒸し返し防止の趣旨についてはもっともであるが、本件ではＹは自ら先に争っているのであってＹにも自己責任があり蒸し返し防止が適用されるべきで、またＹは自ら全力で争えるはずにもかかわらずＢが適切に処理してくれるだろうと勝手に思いこみ欠席によって敗訴したのであって、これについてはＸに何の落ち度もない。にもかかわらず一方的にそれに反する主張をするのはまさにＹによる紛争の不当な蒸し返しであって、Ｙこそ既判力の趣旨からすれば請求異議訴訟での主張を封じられるはずであると反論することが考えられる。
（３）Ｙの再反論
口頭弁論終結後の新事由ではないというＸの反論については既判力の正当化根拠から反論することができる。口頭弁論終結前の事由が既判力の時的限界によって封じられるのは、前訴では手続保障が与えられて十分主張することが出来たのにあえて主張しなかった自己責任として蒸し返し防止が必要となるからである。すると、その趣旨からすれば前訴で主張可能性がなかった事由については既判力による遮断を正当化する根拠に欠けるのではないかと考えることができ、口頭弁論終結後の新事由は類型的に主張可能性がないものにすぎないと考えることもできる。
これを本件についてみると前訴ではＸＢ間の訴訟はまだ確定していなかったので、Ｘが確定的に敗訴するということは前訴で主張可能性が全くなかったのであり、手続保障が与えられず既判力による遮断の根拠を欠くと言える。よってＹとしては口頭弁論終結後の新事由ではないものの後訴である請求異議訴訟において主張することは妨げられないと主張することが考えられる。
次にＹにも蒸し返し防止の責任がかかるというＸの反論については、有効な再反論はやや難しいが、自己責任とは全力で争った場合に相手方がもはやこれ以上の争いはあるまいと信頼するがゆえに蒸し返し防止の義務を負うと考えれば、訴訟を通じて欠席して何の争いもしなかったような場合は相手方にそのような信頼が生じるとは限らず、何かの理由でもう一度きちんと争う可能性が残されていると考えることもできる。するともう一度きちんと全力で争うことが必ずしも蒸し返しとして不当すぎるわけではないと解することができる。
これを本件に見ると、確かにＢが適切に処理してくれると思いこんだＹにも落ち度はあるが、Ｙは終始欠席して何らの攻撃防御方法も提出しなかったのであるから、Ｘとしてはこれ以上何かＹに反論されることはないだろうと期待するにはやや不十分であったはずだとＹは主張することができると考えられる。
以上
恥ずかしいけど、もはや乗りかかった船というやつですね。
最近のポリシー：「乗りかかった船には、どしんと乗っとこう」
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この記事へのコメント
1. Posted by ちゅう
2008年05月06日 15:29
１行２８文字で書くと、答案用紙２２枚ちょっとになりました！！すごい量です！！僕はまだ学部の４回生ですが、３年後頑張ります！！
アップありがとうございました(*_ _)
アップありがとうございました(*_ _)
2. Posted by 猪瀬えいじ
2008年05月07日 00:32
＞ちゅう様
新司法試験の民事系は合計２４枚答案用紙があり、解答時間も合計６時間ありますので、この民事系に関してはとくに書きすぎということはないと思います。ですが、私の場合やはり量で点数を稼いでいたという気はしています。量を使えるのは何かと役に立ちます。
３年後というと、法曹界は今はまだまだ先が見えないかと思いますが、それでもあえてこの業界に挑んでくださることを歓迎いたします。頑張ってください。
新司法試験の民事系は合計２４枚答案用紙があり、解答時間も合計６時間ありますので、この民事系に関してはとくに書きすぎということはないと思います。ですが、私の場合やはり量で点数を稼いでいたという気はしています。量を使えるのは何かと役に立ちます。
３年後というと、法曹界は今はまだまだ先が見えないかと思いますが、それでもあえてこの業界に挑んでくださることを歓迎いたします。頑張ってください。