制度悪用にJR困惑 弘前で切符払戻金詐取

 鉄道の切符払戻申し出制度を悪用した事件をめぐり、JR東日本が頭を悩ませている。偽造した証明印を切符に押し、払戻金をだまし取る手口だが、切符は駅員が手作業で確認するため不正行為の発見は難しいという。先を急ぐ利用客の利便性を考えると、制度を廃止するわけにもいかず、同社は「模倣犯を防ぎたいのはやまやまだが…」と困惑している。

 事件は2007年8月10日、弘前市のJR弘前駅で起きた。埼玉県熊谷市の元会社員の男(32)が窓口で、「払いもどし申し出 熊谷」とはんこが押され、「7/31」と日付が書き込まれた盛岡―大宮間の新幹線特急券など2枚を提示。現金約2万5000円の払い戻しを受け、立ち去った。

 しかし、はんこは真っ赤な偽物。日付も男が自分で書き込んでいた。男は仕事で出張のたびに会社の出張旅費でいったん切符を購入後、偽造証明印を使って払い戻しを受ける行為を繰り返し、5カ月間で払戻金計約20万円をだまし取っていたとされる。実際の出張では別に購入した切符でキセル行為をして、差額分を懐に入れていた。

 男は2月、弘前署に詐欺などの疑いで逮捕された。JR東日本は「同様の事件の摘発は管内で初めて」という。ただ、男が4月15日の青森地裁弘前支部での初公判で「偽造印は06年夏、熊谷市のJR熊谷駅前で知らない男から500円で買った」と証言したことから、発覚していない事件がある可能性も高い。

 手口が単純なだけに「非常に模倣性が高い」(検察側)が、JR東日本は有効な対策を立てられないでいる。切符の確認はもちろん、押印や日付記入もすべて駅員の手作業で、読み取り機などの導入も難しいという。

 乗客のサービスとして制度は必要で、JR東日本青森支店は「各駅に偽造を見破る専門家がいるわけではなく、対応が難しい。まずは払い戻しの際は証明印の確認を駅員に徹底させる」と話している。

[切符払戻申し出制度]行き先を誤って切符を購入した際など、有効期限内に駅窓口で申し出た日付の書き込みと、証明の押印をしてもらうと、期限切れ後でも代金が払い戻される。購入当日の払い戻しを待つ時間がない乗客向けにJR各社が設けている。
2008年05月08日木曜日

青森

社会



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