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三つの要因

2008年05月08日

 懸念されていた米国の金融危機への突入は金融市場への思い切った流動性の供給やFFレートで2%までの利下げ、またヘッジ取引の要所を担っていたベア・スターンズの実質公的資金による救済、そして時価会計の若干の手直しなど、前例のない諸対策によって、まずは避けられた。しかしなぜこれほどの事態になったのか。看過出来ない要因が三つある。

 その第一は金融市場における職業倫理の衰弱である。格付け機関を始め、市場経済に対する信頼を害した当事者の責任を曖昧(あい・まい)にしてはなるまい。証券化商品の市場などが機能停止の状態から脱却できない理由はそこにもあると思われるからだ。

 第二は金融業務における銀行、証券分離の垣根撤廃の影響だ。1930年代の大恐慌の手痛い体験からとられたシビアな分離政策はこの十数年にわたり急速に緩和され、自由度は増したが、規律や秩序の制度的な支えも取り払われた。金融は人間の力を時間的にも空間的にも拡張する大変な「発明」だが、規律をもって善用するのと、乱用するのとでは天地の違いがある。先のG7ではようやくその反省から規制の重要性が語られ始めた。

 第三はファンドの功罪である。世界にあふれているマネーが組織化され、専門家による利益追求のみを目的とする運用がされるようになったことの影響だ。証券化商品市場への巨額の流入と一転しての撤退、原油や商品市場へのシフトによる価格の押し上げ、という行動様式を見れば、そのありようにメスを入れ、その力に見合ったディシプリンが確保されるための規制は今こそ講ずべきだろう。それは産油国などの政府系ファンドに自制を求める前提でもあると思われる。(瞬)

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