ためしてガッテン
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   急増!新型難聴の恐怖

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2008年4月30日放送

今回の番組について

難聴は年齢のせいと思われがちですが、最新の調査から、加齢よりもはるかに大きな原因があることが明らかになりました。そこで、聞こえのメカニズムを科学の目で調査したところ、耳が遠くなっているのに気付かない隠れ難聴の方がいることもわかってきました。今回のガッテンでは、難聴を徹底研究します。

オープニングクイズ

  • 問題:フクロウの耳の特徴は?
    答え:左右の位置が違う
  • 問題:ニュージーランドで話題になったのは?
    答え:犬用のCDがリリースされた
    ※現在、日本では発売されておりません。
  • 問題:現代中国語で「聞」の意味は?
    答え:「においをかぐ」

「難聴になるとどう聞こえる?」

89歳のAさん(女性)は、補聴器なしには目の前にいる人物の話さえ聞こえません。Aさんには、周囲の音はどのように聞こえているのでしょうか?

耳の穴から入ってきた音の振動は、耳の一番奥の「蝸牛(かぎゅう)」という器官にある「有毛(ゆうもう)細胞」に伝わります。有毛細胞にはミクロの毛が生えていて、入ってきた音の振動でふるえ、その信号が脳に伝わることで音が聞こえるのです。

有毛細胞の毛には、高い音を担当しているものと、低い音を担当している部分があります。有毛細胞は、高い音を担当する部分から壊れてしまいます。NHK放送技術研究所で高齢者の聞こえ方を調べてもらったところ、非常に聞きにくくなっていました。

一度壊れた有毛細胞は、二度と元には戻りません。過去のガッテンでは、その原因として騒音と加齢を紹介しましたが、今回の調査で、それ以外の原因があることがわかったのです。

「耳を疑う大実験」

「モニターに映る女性がなんと言っているのか」というクイズを行ったところ、同じ音声なのに、聞こえた音声はなぜか人によって異なっていました。

また、合唱団の方にノイズの入ったCDを聞かせ、「この中に『さくらさくら』が入っているので探してください」という実験を行いました。すると、実は音楽が入っていないにもかかわらず、10人中8人が曲が聞こえたと答えました。なぜ、実際にはない音楽が聞こえたと被験者は答えたのでしょうか?

一定間隔ごとに無音を入れた文章をアナウンサーが朗読したものをスタジオゲストに聞いてもらうと、「非常に聞きづらい」という感想でした。ところが無音の部分をノイズで埋めると聞きやすくなりました。また、途切れ途切れの図形では何が書いてあるかわかりづらいですが、そこに手形を入れて空白を埋めると、わかるようになりました。

これは、手形やノイズで空白が埋められると、脳には「何かが隠されている。それは何か?」と考え、欠けている部分を修復する働きがあるためです。雑音や難聴で多少聞きづらくても、脳は、欠けている音声を修復してくれていたのです。

つまり、音は耳だけで聞くものと思いがちですが、「音は脳で聞くもの」だったのです。この、脳が、欠けた音を修復する働きを専門用語で「音韻修復」と呼びます。しかし、この機能に頼りすぎた状態は、実は非常に危険なのです。

「聞き取り対決 若者VS高齢者」

先ほど紹介したAさんは、自分の難聴になかなか気付きませんでした。そこで高齢者と若者で、騒音の中で短い単語を聞き取る実験をしたところ、ある条件のもとでは、高齢者のほうがよく聞こえる場合があるという結果が出ました。

この実験に参加してくれた高齢者は、生け花教室の皆さんでした。「一輪挿し」のような慣れた単語は聞き取れていましたが、「ネイルアート」のようななじみの薄い単語では成績が下がっていました。脳が修復できるのは聞きなれた単語に限られ、なじみの薄い単語は苦手なのです。

そのため、外では会話がかみ合わなかったり、ついていけなかったりすることが多いので、出かけるのが嫌になって閉じこもり、認知症につながりやすいという研究データもあります。また、家で家族と話すときには、多少聞こえが悪くても脳が修復してくれるため、難聴に気づかずに悪化させてしまうという一面もあります。

「聞き間違え」が増えてきたという人は要注意! 聞き漏らしを修復してくれる脳のすごい機能が、時として、難聴を悪化させたり、認知症の一因になってしまうこともあるのです。

「スーパー聴覚高齢者の秘密」

そもそも、なぜ難聴になってしまうのでしょうか? 最新の調査で、加齢よりもはるかに大きな原因があることが明らかになりました。

最新の大規模調査では、70歳を過ぎても20代の若者に匹敵する聴力を持つ“スーパー聴覚高齢者”が、およそ4%いることがわかりました。このスーパー聴覚高齢者の生活を詳しく調べてみたところ、難聴を進めてしまう、驚くべき事実がわかってきたのです。

有毛細胞は、毛の下に細胞の本体が存在し、別名「ダンス細胞」とも呼ばれます。ダンス細胞にはその名のとおり、音楽に合わせて、まるでダンスをするかのように伸び縮みする性質があります。この働きによって、小さな音でも聞き取れるように、音を増幅させていたのです。

有毛細胞は常にダンスをしているため、大量のエネルギーを消費します。そのため、エネルギーを供給する血管に異常が起こると、有毛細胞が十分に動けなくなってしまいます。このことが、難聴の大きな原因だったのです。

難聴発症の危険因子

下記のような人は難聴の発症リスクが高まります。注意してください。

  • 高脂血症(脂質異常症) 発症リスク1.9倍
  • 糖尿病 発症リスク3.7倍
  • 腎臓病 発症リスク5.9倍

高脂血症の場合、血管の動脈硬化が進み、耳の毛細血管にも障害が起きやすくなります。また、糖尿病も毛細血管が傷つきます。腎臓の機能が落ちると、耳の毛細血管に障害を起こす物質を体外に排出する働きが落ちてしまうのです。

適度な運動や健康的な食生活など、生活習慣を改善することが、難聴の予防にもつながります。

「聞き取り力アップの秘策」

すでに耳が遠い方や、聞こえづらくなっている方にも、ちょっとしたコツで聞き取り力がアップする秘策があります。

若者5人に耳あてをつけてもらい、難聴と同じ状態でテレビモニターからの指示を聞き取ってもらう実験を行いました。ところが、ガッテン隊がある細工をしたところ、聞き取り率がアップしました。

1回目の実験では、テレビモニターの指示を出す女性は全身が映っていましたが、2回目は顔のアップになっていました。口の動きがよく見える状態だったのです。実は、先ほどゲストに見てもらった女性が発声するVTRは、音声は「ばばばーば」、映像は「だだだーだ」となっていたため、不自然な聞こえ方がしたのです。

目で見ている映像は、聞こえ方にも大きな影響を与えます。そのため、難聴の方と会話するときは、話しかける前に肩を叩いて顔を合わせながら話すと、聞き取り力をアップさせることにつながります。

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