米大統領選挙の民主党予備選挙は、六日実施した二州の投票でも候補者指名のメドが立てられないままだ。史上初の黒人大統領の可能性を前にした有権者のためらいがほの見える。
六日行われた米民主党予備選は、クリントン候補がインディアナ州で辛勝し、戦いの継続を表明した。オバマ上院議員はノースカロライナ州で圧勝したものの、指名獲得へ向けた決定的な結果を残せなかった。
民主党の候補指名獲得には二千二十五人の代議員を獲得する必要があるが、両候補ともその見通しを得られないままだ。
今回と前回ペンシルベニア州での予備選で民主党支持者が示したのは、現実味を帯びる初の黒人大統領への可能性を前にしたためらいだろう。
二月以降の予備選十一連勝を通じ、オバマ候補は着々と代議員数を積み重ね、指名獲得への流れをつかんだかのように見えた。支持層は黒人、若者世代、高学歴白人層に広がり、選挙資金でもクリントン候補をリードした。今回の結果は数の上でのオバマ氏の優位をいっそう広げた。
クリントン候補が僅差(きんさ)ながら踏みとどまった背景には、白人労働者蔑視(べっし)と受け止められたオバマ氏の失言をとらえたなりふり構わぬ非難戦術が一定の効果をもたらしたことや、人種問題を争点に浮上させたオバマ氏の信仰上の恩師、ライト牧師の過激な演説問題がくすぶり続けていることがある。
また、秋からの本選では各州の勝者が選挙人全員を獲得する総取り制が採用される。各種世論調査が共和党、民主党の勝敗をほぼ五分五分と予想している中で、オハイオやペンシルベニアなどの大票田で勝利を重ねてきたクリントン候補こそ共和党に勝てる候補としてふさわしい、という主張に説得力を感じる党員も多かろう。
民主党の両候補が掲げる政策は、イラク撤収、国際協調主義への転換などの外交政策から、経済政策、医療保険改革などの内政問題まで、基本的な差はない。
党幹部による調整を図るのか、特別代議員の影響力が増す夏の党大会に持ち越すのか、一部でなおささやかれる両候補による正副大統領チームの結成の可能性を探るのか。
「双方とも痛みを感じているのは確かだ」。オバマ氏がそう認めざるを得ないほど分断した党内世論を克服する知恵を示せるか否か、期限は迫っている。
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