陛下「友好の印、トキ羽ばたく日期待」胡主席迎え晩餐会2008年05月07日23時56分 国賓として来日中の中国の胡錦濤国家主席を歓迎する宮中晩餐(ばんさん)会が7日夜、皇居・宮殿で開かれた。皇太子さま、秋篠宮ご夫妻ら皇族方、福田首相ら閣僚、画家の平山郁夫氏ら中国とゆかりの深い人たちなど、147人が出席した。
天皇陛下はお言葉で、近年両国の協力で喜ばしい成果があったこととして、トキの繁殖をあげ、中国から贈られた3羽のトキの子孫が100羽を超え、今秋放鳥されることにふれ、「両国間の友好の印として、トキが我が国の空に白い羽を羽ばたかせる日の来ることの早からんことを期待しております」と述べた。また北京オリンピックについては「世界の人々の友好親善を深める契機となることを心より希望いたします」とした。 主席は「中日関係は今新たな歴史的スタートラインに立ち、更なる発展の新たなチャンスに恵まれている」などと答辞を述べた。 日中間の過去の歴史については、天皇陛下は「長い歴史を両国民が共に顧み」と、また胡主席も「過去を回顧し」と触れるにとどめ、共に未来志向を強調する形となった。 晩餐会では、羊肉やオマールエビなどを使ったフランス料理が振る舞われるが、時間を短縮してほしいとの中国側の希望で、果物など2皿のメニューを減らした。日本側の男性出席者の服装はタキシードだったが、中国側はダークスーツを着用した。 ◇ ■「おことば」の全文 この度、中華人民共和国主席胡錦濤閣下が、令夫人と共に、国賓として我が国を御訪問になりましたことに対し、心から歓迎の意を表します。ここに今夕を共に過ごしますことは誠に喜ばしいことであります。主席閣下には、今から十年前、日中平和友好条約締結二十周年に当たる一九九八年、国家副主席として我が国を御訪問になり皇居でお会いしましたが、この度国家主席として再びお迎えしたことをうれしく思います。 私が皇后と共に貴国を訪問いたしましたのは、一九九二年、日中国交正常化二十周年の年でありました。御招待いただいた楊尚昆国家主席を始め、貴国政府から心のこもったおもてなしを頂き、訪れた各地で多くの人々から温かく迎えられたことは、今も懐かしく思い起こされます。 私は、かつて七世紀から九世紀にかけて、我が国の遣唐使が訪れた唐の都長安があった西安を訪れたいと思っておりましたので、この訪問に当たって、これが実現したことは、うれしいことでした。唐の様々な文物は遣唐使や同行した留学生、留学僧によって我が国にもたらされ、我が国の人々はそれを熱心に学びました。再来年建都千三百年を迎える奈良、京都の都市計画、また、当時の律令制度も、我が国が唐から学んだものであります。八世紀前半に在位した聖武天皇の遺愛品などを収めた正倉院には、唐からもたらされた品々も多く保管され、当時の唐と我が国の交流の跡をしのばせます。この度主席閣下が御訪問になる奈良の唐招提寺は、唐から渡ってきた鑑真和上により創建され、来年は千二百五十周年を迎えます。和上の我が国への渡航には、それに対する妨害や難船という困難があり、我が国側の強い希望と、和上の視力を失っても変わらざる熱意によって、六回目にようやく実現しました。奈良では、聖武上皇、光明皇太后、孝謙天皇以下百官が和上から戒を受けました。鑑真和上の渡航にも示されるように、当時の航海は大きな危険を伴うものであり、多くの人々が難船の犠牲となりました。このような危険を顧みず、渡航を試みた人々の努力に深く思いを致すものであります。 近年貴国と我が国との間の協力により、喜ばしい成果が生まれていることとして、佐渡におけるトキの繁殖の成功があります。トキはかつてはロシアの南東部から中国以東の地域に広く分布していましたが、各地で絶滅し、一九八一年、佐渡にだけ残った五羽の野生のトキを飼育下で繁殖させるために捕獲したときには、野生のトキは世界中から姿を消したと考えられました。しかし幸いなことに、その同じ年に、貴国の陝西省洋県で野生のトキが発見されました。我が国のトキは残念ながら繁殖に成功せず、すべて死亡しましたが、貴国のトキとの交配の試みなどを通して両国間の交流が進み、トキの繁殖に関する知識は蓄積されていきました。こうした努力を背景に、国賓として訪問された江沢民国家主席と、公賓として訪問された朱鎔基国務院総理から三羽のトキが贈られ、その子孫は順調に育ち、今日では飼育下で百羽を超えるまでになりました。今年の秋には、佐渡で放鳥される予定と聞いております。トキを守るため、国境を越えて永年にわたり協力し合った関係者の努力を思い、両国間の友好の印として、トキが、我が国の空に白い羽を羽ばたかせる日の来ることの早からんことを期待しております。 日中平和友好条約締結三十周年を迎える本年は、「日中青少年友好交流年」として、日中両国の間で数多くの交流事業が行われると聞いております。日中両国が様々な分野で協力を進めることがますます重要になっている今日、こうした交流を通じて、両国の若い人々の間に友情が培われることは、誠に意義深いことと思います。長い歴史を両国民が共に顧み、未来に向けて友好のきずなを深めていくことを願っております。 本年八月には、北京において第二十九回オリンピック競技大会が開催されます。この大会が、世界の人々の友好親善を深める契機となることを心より希望いたします。 今、日本は新緑のもえる美しい季節を迎えました。この度の御滞在が、実り多く、思い出深いものとなりますよう、心から期待してやみません。 ここに杯を挙げて、胡主席閣下並びに令夫人の御健勝と中華人民共和国国民の幸せを祈ります。 ◇ ■答辞の全文 この度、お招きに応じ貴国に対し公式訪問を行うに際し、天皇皇后両陛下より晩餐会を催していただきましたことに対し、家内と代表団一同を代表し、また私個人の名において、衷心より感謝を申し上げます。この場をお借りして、中国人民の日本国民に対する心のこもったご挨拶と祝福をお伝えしたいと思います。 中日両国は海を隔てた隣国であり、両国の文化が相通じ、両国国民も仲良く付き合っています。二千年の長きに及ぶ友好往来の中で、両国国民は学び合い、お互いの経験を参考にして、それぞれの国の発展と進歩を促進し、東アジア文明と世界文明の宝庫を豊富なものにしました。両国国民の長い伝統的な友情は、双方の貴重な財産であり、双方がともに大切にすることに値します。 1972年中日国交正常化以来、両国関係に新たな活気が生まれました。双方は中日関係を指導する基本原則を確定し、両国の指導者は緊密な往来を保ち、両国の互恵協力は日増しに拡大し、人的文化交流は盛んに展開され、両国国民の相互理解と友情は日増しに深まり、国際社会と地域における双方の協調と協力も絶えず強まってきました。中日関係の発展は両国国民に実際の利益をもたらし、アジアと世界の平和と発展にも積極的な貢献をしました。 過去を回顧し、未来を展望して、我々は、中日関係は今新たな歴史的スタートラインに立ち、更なる発展の新たなチャンスに恵まれていることを信じる十分な理由があります。この度の貴国に対する訪問は、相互信頼を強化し、友情を深め、協力を進め、将来を企画し、日本側と共に努力して、中日戦略的互恵関係の全面的な発展の新たな局面を切り開くためであります。訪問において、私と福田総理は以上のような重要な問題をめぐって実の多い会談を行い、幅広い共通認識に達しました。私たちは、双方が共に努力して、戦略的相互信頼を増進し、互恵協力を深化させ、人的文化交流を拡大し、アジアの発展を推進し、グローバルな挑戦に対処し、中日戦略的互恵関係を共に推進していくことで一致しました。双方は中日の第四の政治文書を発表し、両国関係の将来の発展を共に企画しました。 1992年、天皇皇后両陛下は中国に対し歴史的な意義を持つご訪問をなされました。ご訪問は、両国国民の美しい思い出になり、中日関係史の美談となって伝えられています。天皇皇后両陛下をはじめ、皇室の諸殿下の方々が中日友好のために重要な貢献をなされたことに対し衷心より感謝の意を表します。それでは、天皇陛下、皇后陛下のご健勝のために、皇室諸殿下の方々のご健勝のために、ご臨席の皆様のご健勝のために、貴国のますますのご繁栄と貴国国民のご幸福のために、中日両国人民の子々孫々の友好のために、乾杯を提案したいと思います。乾杯! PR情報社会
|
ここから広告です 広告終わり どらく
鮮明フル画面
一覧企画特集
特集
朝日新聞社から |