貴金属価格が世界的に高騰する中、使われなくなった入れ歯に含まれる金やパラジウムなどの希少金属を回収して、慈善事業に役立てる活動が全国で広まり始めている。埼玉県内のNPO法人「日本入れ歯リサイクル協会」(埼玉県坂戸市)が一昨年末から始めた取り組みで、これまでに25都道県の歯科医院や市役所、スーパー、商店街など計230カ所に不要入れ歯の回収ボックスを設置。ユニークなボランティア活動として注目を集めている。
30年余りの間、入れ歯を作ってきた同市の入れ歯製作会社役員、三好勇夫さん(64)が、知人の歯科医から「使わなくなった入れ歯を捨てるのはもったいない」という話を聞いたのが活動のきっかけ。
入れ歯には歯と歯をつなぐ金属部品などに金や銀、パラジウム合金といった貴金属類を使用しているものがある。こうした金属は宝飾品のほか、パソコンや携帯電話に使われる半導体、自動車の排ガスを浄化する触媒などにも欠かせず、世界各国で争奪戦が起こるなど希少性が高まっている。
厚生労働省が平成17年に行った調査では、国内の65歳以上の86%が入れ歯を装着するなど、高齢化社会を反映し、入れ歯を使用する人は増える傾向にある。しかし、「多くの入れ歯は3〜4年であわなくなり、歯科医院や所有者が廃棄物やごみとして処分してしまう」(三好さん)という。
このため、三好さんは使われなくなった入れ歯を回収し、希少金属の販売益を慈善事業に役立てることを計画。平成18年12月にNPOを立ち上げ、歯科医院に入れ歯の回収ボックスを設置するなどの活動を開始。NPOの運営費などを除いた収益金はすべて日本ユニセフ協会と、各地の社会福祉協議会などに折半で寄付することにしたため、東日本を中心に賛同者が相次ぎ、徐々に西日本にも広がりをみせている。
広島県三原市ではスーパーのチェーン店が協力を申し出るなど、今年4月現在で全国25の都道県で約230カ所にまで拡大。NPO立ち上げから約1年半で約2万5000個を回収し、約1500万円を寄付している。
三好さんは「予想外の金属価格上昇が追い風になっている。入れ歯一個で、多くの予防接種ができ、世界の子供たちを救うことができる。今は東日本中心ですが、今後は関西などでもぜひ協力者を増やしていきたい」と話している。問い合わせは同協会((電)0120・24・1083)へ。
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