ミュージック 特集&ピックアップ

　昨年、中島美嘉が映画『NANA』の役名でシングルをリリースしたのをはじめ、映画やドラマの役名でリリースされた楽曲のヒットが相次いでいる。今年は、女優・沢尻エリカが主演ドラマの役名「Kaoru　Amane」名義でリリースした同ドラマの劇中歌がチャート1位を獲得する大ヒットを記録した。
　でも、役名でシングルやアルバムをリリースすることは、実はアニメの世界では、よくあること。それでも、あえてここで紹介したいのが、月島きらり　starring　久住小春（モーニング娘。）のシングル「バラライカ」！

　この曲は、テレビ東京系で今年の4月から放送中のアニメ『きらりん☆レボリューション』の新オープニングテーマで、そのアニメの中で、主役の月島きらりの声を担当しているモーニング娘。の久住小春が、その役名でリリースするもの。すでに、7月に第一弾シングルとして「恋☆カナ」をリリースしているのだが（ちなみに、モーニング娘。史上最年少でのソロデビュー）、主人公のキャラクターやビジュアルとも重なる部分のある久住の歌は、アニメファン、モーニング娘。ファンの双方を魅了しているようだ。

　まだご覧になったことのない方のために、簡単にアニメの内容をご紹介しておきたい。主人公『月島きらり』は、元気いっぱいで食いしん坊な美少女中学生。久住と同じ14才だ。そんなきらりが、ある日、突然出会った男の子に一目惚れ！なんとその男の子とは、超人気アイドルユニットのひとりだったのだ！！そこで、熱烈なファンになるなら普通の女の子。でも、きらりは違った。なんと、近くにいたいという一心で、自らアイドルを目指すことに！！その瞬間から、ライバルは出現するわ、ハプニングは多々起こるわのめまぐるしい日々の連続。きらりがトップアイドルになれるのかどうか、毎週、目が離せない状態というのが現在のところなのだ。

　そんな主人公の声を、『モーニング娘。オーディション2005』の熾烈な戦いを経てデビューを果たした久住小春がやっているのだから（その作品ファンの中心層である女子小中学生ではない）ちょっと大人の方は、久住の背景を知って、なんとなく重ねて見て楽しむという方法もある。それだけでなく、ビーチでのアイドル水泳大会シーンがあったり、日本の歌番組全盛期を髣髴とさせるシーンがあったりと、往年のアイドルファン（30代後半から50代ぐらいまで）など、幅広い年齢層の男女に訴求できる部分もあるのではないだろうか？かく言う私も思わず見入ってしまいました。

　その理由のひとつに、やはり、“声優　久住小春”の力量というのがあると思う。彼女が世にお披露目されたのは、2005年5月、モーニング娘。のコンサートでのこと。そして、そこから1年足らずの今年4月から、声優初挑戦にして、メジャーな連続もののアニメの主役の座を射止めているのだ。これは単に、モーニング娘。のメンバーであることやプロデューサーがつんく♂だからということだけがもたらした結果ではないだろう。つんく♂の言葉を借りれば「オーディションの初期段階から、Ａ（エース）級を飛び越えて、ミラクル級の空気を放出していました」「（オーディションの途中段階で）彼女は、あっという間に私の指摘する部分を理解し、表現できるようになっていきました」とのこと。この吸収力と生来持っているキャパシティがあってこそなんだな、と。きっと、声優初挑戦に当たっても、何らかの形で、スタッフからその潜在能力が試されたハズなので、やはりそこでも、彼女は、ミラクル級を発揮したんだと推測できる。
　これが、アニメの主人公　月島きらりのキャラクターとも合致しているし、ホント、久住の声優ぶりは、新人だったり、アイドルだったりにありがちな不安なところが微塵もない！安心してアニメに集中できるのだ。久住に対しては、更なるフィールドでの活動も期待してしまう。

　さて、最後になってしまったが、当のシングル『バラライカ』の話。バラライカとは、ロシアの代表的な弦楽器で、どこか憂いを帯びた音色を持っている楽器。この曲は、アップテンポなのにマイナー調、前向きでありながらも恋する乙女の切ない心を歌っているので、そのタイトルと妙に相性がいい。そして、何より、しっかりしたリズムキープと歌唱力が要求される難易度の高い曲なのに、アニメのキャラクター月島きらりの声を活かして、表情豊かに歌っている久住小春のプロ意識を感じさせる。（文：矢野純子）