中国の胡錦濤国家主席が来日した6日、在日チベット人や中国の少数民族を支援する日本人ら約2000人が都内で抗議のデモ・集会(主催=セーブ・チベット・ネットワーク)を行った。中国の国家主席の来日は1998年の江沢民氏以来10年ぶりとなるが、これまでにない「手荒い出迎え」となった。
シュプレヒコールを先導するドルマさん。自慢の黒髪を切り落として坊主頭だ(代々木公園で。筆者撮影)
中国の胡錦濤国家主席が来日した6日、在日チベット人や中国の少数民族を支援する日本人ら約2,000人が都内で抗議のデモ・集会(主催:セーブ・チベット・ネットワーク)を行った。
胡錦濤氏は1989年にチベット自治区に党書記として赴任、戒厳令を敷くなどで独立運動を抑え込んだ。この功績で権力の階段を駆け上った、といわれている。中国の国家主席の来日は1998年の江沢民氏以来10年ぶりだが、これまでにない「手荒い出迎え」となったのには、こうした「経歴」があるからだ。
「日本人として抗議するため和服で来た」
デモは明治公園を出発し、青山通り、表参道を通って代々木公園に到着するコースだった。主催者によれば、六本木の中国大使館前を通るコースは警察に許可されないことが分かっているため、最初からコースに加えなかった。
メーデー集会などでおなじみの代々木公園の広場には、チベットの旗が林立した。集会が始まって20分余り過ぎてもなお、デモ隊の列が続々と到着した。
在日チベット人コミュニティ代表のカルデンさんがマイクを握って訴えた―。「聖火リレーはデモ合戦になっているが、中国はその裏にある真実から目をそむけないでほしい。なぜダライ・ラマの写真を持っているだけで逮捕されなければならないのか。どうして自分たちが住んできた土地が中国人に奪われなければならないのか。チベット人の聖なる山・チョモランマへ中国聖火隊が登頂するのは屈辱だ……」
シュプレヒコールを先導したのはドルマさんだ。彼女は自慢の黒髪をバッサリと切り落とし坊主頭にした(JanJan3月23日掲載記事には髪が長い頃の写真)。中国への抗議の意志を表すためだ。「フリー・チベット」「フリー・ウィグル」「フリー・インナーモンゴリア」。ドルマさんの先導で会場からは大きなシュプレヒコールが沸き起こった。
今回の集会ではチベット以外にも中国政府に民族運動を弾圧されている内モンゴルと新疆ウィグルという少数民族を加えたのだ。
数え切れないほどのチベットの旗に日の丸の旗が2、3混じっている。反中国の民族派かと思い、日の丸を掲げていた30代の男性に聞いた。男性(東京都在住)は「(胡主席が来日した)日本で抗議が起きているということが写真で世界中にわかるから」と答えた。もう片方の手にはチベットの旗がしっかりと握られていた。右翼ではなかったのだ。
ヒトラー(左)と並ぶ胡・中国国家主席(右)
幅が1m近い日の丸を持つ和服の女性がいた。彼女(神奈川県在住、30代)は「チベットへの弾圧に日本人として抗議するため和服を着て参加した」と話す。
長野市から駆けつけた僧侶(40歳)は「同じ仏教徒である坊さんが声を挙げることでチベットの人の支援になれば」と力を込めた。
国際社会の圧力に押される形で、中国政府は4日、ダライ・ラマの特使と特別行政区の深圳で「対話」した。半世紀余りにわたる紛争にもかかわらず、対話はわずか1日だけだった。あと100日足らずに迫ったオリンピックを何とか成功に漕ぎ着けるための中国政府によるパフォーマンスとの見方が有力である。
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