医療記事を書いていた後輩記者が手を止め、声をかけてきた。「どこか悪いんですかね。時々、胸が締め付けられるような気分になるんです」
私は顔をのぞき込むように、「そりゃあいけんなあ。でも、こういう仕事しとったら気分が優れん日もあるんで」。
というのも「医療・健康」面を担当していると、がん、脳卒中、心臓病といった重病の話題に接しない日がないからだ。私も原稿に目を通すうち、ついつい自分に当てはめ気弱になったりする。
「う〜ん、こんな症状なかったかな…」
紙面に登場するのは三大疾病だけではない。今なら環境に順応できず発症する五月病(適応障害)、四月から特定健診・特定保健指導が始まったメタボリック症候群(内臓脂肪症候群)、恒常的な長時間労働が原因の一つとされるうつ病。
さらに、患者と予備軍が千八百七十万人に上る糖尿病、発生すれば国内の死者が六十万人を超すと想定される新型インフルエンザ。「心配は身の毒」「養生に身が痩(や)せる」というが、どれも人ごとではない。
ただ、こうした情報で広がる不安は一面にすぎず、実際は健康管理や予防に対する啓発効果が大きい。最新治療や新薬に関するものもあり、病気を克服しようと懸命な患者、家族の支えになることもある。問題なのは、さまざまな情報があふれるネット時代ゆえに、必要かどうかの判別が難しくなっている点だ。
本紙の「医療・健康」面が暮らしに役立つよう、正確で良質な情報収集に努めたい。
(文化家庭部・赤井康浩)