内閣府の二月から三月にかけての「食育に関する意識調査」結果から、食に対する人々の懸念が伝わる。
食生活について悩みや不安を感じている人は44%。内容(複数回答)では「食品の安全性」が81%と最も多かった。食品の偽装表示や、中国製ギョーザ中毒事件などが相次いだのだから当然だろう。
にもかかわらず、ブランド牛の偽装表示などに手を染めた高級料亭で再び不祥事が発覚した。こともあろうに客の食べ残しの使い回しである。「もったいない」と前社長が指示したというが、料亭を信頼して味や雰囲気を堪能しようという客への裏切りである。
多くの人はブランドや口コミに判断を惑わされていると「騙(だま)される脳〜ブームはこうして発生する」(米山公啓著)はいう。脳は新しく知ったことを他の人に話すことで快感を得る。それがブームを呼び、ブランドとして価値を高める。
ブランドに求める信用できる価値観について著者は「実態がない。どこかで作られたイメージの価値観に踊らされている」とする。今回の高級料亭の相次ぐ不祥事など、まさにそう実感させられる。
飲食業界に「三人と三十三人」という法則があるという。口コミでの良い評判と悪い評判の伝わる比較だ。信頼を裏切る反動の強さは、その比ではなかろう。