連休明けの国会は、六月十五日の会期末を控え終盤を迎える。道路特定財源の一般財源化や後期高齢者医療制度の是非など重要な問題が山積している。与野党は論戦を通じて政策を競い合い、有意義な結論を導きだしてもらいたい。
福田康夫首相にとっては、まさに正念場の終盤国会といえる。共同通信社が今月一、二の両日に実施した緊急世論調査で、福田内閣の支持率は19・8%だった。四月の前回調査から6・8ポイントもダウンし、発足以降最低を更新した。
「危険水域」といわれる20%台を割り込んだのは、二〇〇一年の参院選を前に退陣した森内閣以来のことである。自民党の支持率も民主党を下回り、民主党中心の政権を望むとの回答が過去最高の50・0%に上った。自民党中心の政権を望んだのは26・7%にとどまった。
ガソリンにかかる揮発油税などの暫定税率復活や、新医療制度に対する不満や憤りが影響したとみられる。政府・与党は謙虚な姿勢で国民の声に耳を傾ける必要がある。
政権交代の必要性を唱える民主党にとっても、重要な終盤国会になるだろう。連休明けからガソリン、新医療制度に年金問題を加えた三点セットで攻勢を強めるという。
当面のヤマ場は、与党が十三日に予定している道路整備費財源特例法改正案の再議決である。今後十年間、道路特定財源を維持するという内容で、福田首相が打ち出した一般財源化との矛盾が指摘される。
民主党は与党が再可決したら、福田首相の問責決議案を提出する意向を示していた。しかし、最近は先送り論が表面化している。野党が多数を占める参院で問責決議案が可決されると、国会が空転する可能性が大きいからだ。
確かに問責決議で対抗するより、審議を通じ政府を厳しく追及した方が得策だろう。真っ向勝負で論戦に挑み、課題を浮き彫りにしていけば信頼は高まろう。新医療制度について福田首相は問題点の点検を指示した。民主党は廃止法案を提出する予定で、大いに議論を深めてもらいたい。
一方で最重要法案の一つである内閣人事庁の創設を柱にした国家公務員制度改革基本法案の審議は進んでいない。さらに「ねじれ国会」での与野党対立の影響によって、参院で止まったままの法案も少なくない。打開策として自民党内には会期延長論が浮上している。衆院で再可決するための時間稼ぎではなく、徹底論議をする気があるのなら歓迎したい。
日銀が公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」に大きな変化が表れた。金融政策について「不確実性が極めて高い状況であり、特定の方向性を持つのは適当でない」とし、利上げのタイミングを探ってきたこれまでの路線を一時凍結する姿勢を打ち出した。
展望リポートは日銀が春と秋の年二回公表している経済予測で、白川方明総裁が就任して初のリポートである。
二〇〇八年度の実質経済成長率は1・5%と予測し、昨年秋の前回リポートで示した2・1%から大幅に下方修正した。〇九年度の成長率見通しも1・7%と1%台にとどめた。
米サブプライム住宅ローン問題で金融市場が混乱し、米国経済も不振なことから国内経済は今後二年間、1%台の成長率で推移するとした。金融市場の混乱は長引くとの予想だ。鉄鉱石などの原材料高も加わり、先行きは一段と不透明感が増す。
日銀はこれまで、2%程度の成長が続けば徐々に利上げする構えだった。白川総裁は「前回までは(利上げを探る)大きな方向感があったが、今回は景気下振れのリスク要因が大きくなっている」と述べた。
従来の利上げ路線からの転換メッセージを市場がどう受け止め、どう反応するか。日銀には物価の動向などを見極めながら、柔軟かつ機敏なかじ取りが求められる。
展望リポートは本来、日銀政策委員でもある総裁、副総裁、審議委員の計九人で策定される。だが、今回は国会での総裁人事の混乱により副総裁と審議委員の各一人が欠員のまま七人でまとめるという異例の事態に陥っている。リポートの説得力をアップさせるためにも、早期に正常な体制に戻す必要がある。それは政治の責任である。
(2008年5月6日掲載)