ホーチミン(AP) 養子として米国人家庭に迎えられる子どもたちが急増するベトナムで、政府がこのほど、米国との間の養子縁組手続きを中止すると発表し、受け入れ希望者らに衝撃が広がっている。養子への虐待や、仲介者の不正行為を指摘した米大使館の報告書に対し、ベトナム側が反発した結果とみられる。
ベトナム政府は4月28日、米国からの養子縁組の申し込みを7月以降は受け付けないとの方針を、首都ハノイの米国大使館に伝えた。
米国では近年、養子縁組の例が多い中国や中米グアテマラが相次いで規制を強化したことを背景に、ベトナムからの養子が急増。07年は前年の4倍に達した。今年3月までの1年半に、養子となったベトナム人の子どもは1200人以上。女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが昨春、3人目の養子を同国から迎えたことも、記憶に新しい。
しかし、米大使館が最近出した報告書は、養子縁組にともなう子どもの虐待例を指摘。出産費用が払えない母親の子を売り飛ばす病院や、村から赤ちゃんを連れ去るブローカー、母親の了解を得ずに子どもを養子に出す祖母――といった実態が明るみに出た。米あっせん団体が現地の孤児院職員に養子の紹介を依頼し、1件当たり約100万円の「手数料」を支払ったり、米国旅行に招待したりしていたケースもあったという。
ベトナム側は、こうした指摘を「根拠がない」と否定したうえで、米国との間で養子縁組手続きの監督を取り決めた二国間協定を打ち切ると表明した。
これに対し、米大使館は「ベトナム政府の決定は尊重するが、報告書に示したのは正確な事実だ」とコメント。一方、米国のあっせん団体からは、「虐待などの問題があるのはほんの一部。多くの子どもたちが問題なく迎えられているのに、これが全体像と思われては困る」といった声も上がっている。