私は昨日から連休に入り、東北某県でのんびり過ごしています。先日のエントリでは、「真・保守政策研究会」(中川昭一会長)の中国の人権問題に関するシンポジウムの様子を紹介しました。ただ、この4月30日には超党派の「日本会議国会議員懇談会」(平沼赳夫会長)の総会も開催され、二つの決議が採択されていることは紙面でもブログでも伝えられなかったので、ちょっと遅れましたがそれに関しても掲載して記録に残しておこうと思います。
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現在、国際社会では、アメリカをはじめとする欧米各国首脳および欧州議会、アメリカ下院議会等が、相次いで中国政府に対して、チベットにおける人権弾圧の即時停止とチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ十四世との直接対話を要望している。
そして今夏、中国が開催する北京五輪の開会式に関しては、イギリスのチャールズ皇太子はじめドイツ、フランス、カナダ等世界各国の首脳が、チベット情勢の変化がない限り欠席する姿勢を明らかにしている。
一方、中国側は、これまでこうした世界の声を、中国の国内問題への内政干渉であるとして反発していたが、漸く対話再開への扉をひらこうとしている。
こうした中、近くわが国は中国の胡錦濤国家主席を迎えることになる。胡主席の外国訪問は、三月のチベット暴動以来初のことであり、世界の注目が集まることは言うまでもない。
我々は、このような状況を鑑み、中国政府に対して、一層のチベット問題に関する政策転換を求める日本の立場を明確にすべく、左記の決議を行うものである。
一、
二、
三、
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一、 天皇陛下御即位十年の際と同じく、御即位二十年奉祝行事を政府主催で開催するよう要望する。天皇陛下におかれては、この度、御即位二十年と御成婚五十年という慶賀すべき年を迎えられる。この間、陛下には国民統合の象徴として全国四十七都道府県をご視察されるなどご多端なご公務を担われ、常に国安かれ民安かれの祈りを重ねていただいてきた。このような御心に感謝申し上げるべく、明年、政府及び全国の地方自治体主催で御即位二十年奉祝行事を開催するとともに、各省庁においても記念事業を行うことを要望する。
二、 改正教育基本法に基づく教育改革の徹底を求める。 一昨年、教育基本法が改正され、「我が国と郷土を愛する」や「豊かな情操と道徳心」といった基本理念が明示された。この基本理念に基づき昨年、教育三法が改正され、この三月には新「学習指導要領」が告示された。我々は、日本人に生まれたことに誇りがもてる、知徳体のバランスのとれた志高い日本人を育成するためにも、「教育振興基本計画」を始めとする一連の教育政策が改正教育基本法の理念に基づいて策定されることを強く求める。
三、「言論・表現の自由」、「国民固有の権利としての参政権」、「家族の絆」を守る立場からの政策立案を要望する。いま、「言論・表現の自由」を損なう恐れがある「人権擁護法案」制定の動きや、国民固有の権利である参政権を永住外国人に付与する動きが活発化しつつある。我々は「言論・表現の自由」を守るため、「人権擁護法案」の制定に反対する。一方、永住外国人に対しては、地方参政権付与ではなく、帰化要件についての検討を優先させるべきである。また、親子別姓を容認し、家族の絆を弱めることになる「夫婦別姓法案」には改めて反対を表明する。(了)
写真は先日のエントリに引き続き、路傍の小さな草花(東北某県編)です。ふだん、忙しくしているときは気付かないような花々も、ゆっくりと散歩し、注意してみるといろいろと見つかるものだなと改めて思います。花は花で精一杯生きているのでしょうが、見るものの心を和ませてくれるから有り難いですね。
さて、上記の日本会議国会議員懇談会の決議では、皇太子殿下をはじめ皇族方の北京五輪開会式へのご出席は見合わせるように求めています。まあ、この件に関しては、もともと宮内庁も外務省も反対であり、「2月の中国製ギョーザ中毒事件の発生前から、要請しないことは内々決めていた」(外交筋)と言いますから、その後、チベット問題が起きたこともあってまずありえないと思います。中国の銭元外相が回顧録の中で、天皇、皇后両陛下のご訪中を西側諸国の経済制裁その他を打ち破るためにうまく利用したと自賛したことも、広く知られていますし、後の反日デモなどを見て、両陛下が「私たちの訪中は一体なんだったのか」と語られたということも漏れ伝わり、ある程度広まっていますし。
問題は、福田首相が周囲の制止を振り切って、「どうしても」と皇族方に要請した場合にはどうなるかということだけだったわけですが、最近になって、福田氏自身が五輪開会式出席に「行けたらと思う」と述べ、意欲を見せ始めましたね。これは、皇族方のご出席が望めない現状を受けて、お友達である中国側のプライドとメンツを守ってあげるためには、日本国の首相である自分自身が出向いた方がいいと判断したことの表れかもしれません。
もっとも、福田氏の開会式出席への意欲を聞いた自民党の某有力議員は、「世界の笑いものだろう」と言っていました。また、首相経験者の一人は、「自分は招請があっても絶対に行かない」と明言しました。そういう周囲の冷たい視線をものともせずに忠誠を尽くす福田氏という友達に、中国は一体何で報いてくれるのでしょうか。6日からの胡錦濤国家主席の来日時には、東シナ海のガス田問題もギョーザ事件も特に進展は見込めないというのに。
中国が4月25日になって、急にダライ・ラマ14世と対話する準備があると言い出し、ダライ・ラマ氏の特使が中国を訪問することになったことについて、政府は福田氏が表向き中国を批判せず、複数のルートで胡氏に親書を送るなど、「欧米諸国とは違ったアプローチで対話を呼びかけたからだ。胡氏来日を前にした日本へのメッセージでもある」(外務省筋)と認識しています。確かに、対話はいつでも望ましいわけですが、対話だけなら過去に中国とダライ・ラマ氏側は6回にわたって実施しており、何ら成果は上がっていませんね。外務省幹部も「今回も、今までと同じようにただ会うだけかもしれない」という可能性は認めています。もとより、中国が急にダライ・ラマ氏の「高度な自治」などの主張に理解を示すわけがありませんから。
とはいえ、この「対話」が行われることで、福田氏としては、日中首脳会談の席でチベット問題を追及せずに済んだというわけです。今回の来日は、胡氏にとってチベット騒乱が起きてから初めての外国訪問であり、世界がここでチベット問題について何が話し合われるか注目しています。福田氏は私がこれまでのエントリで繰り返し書いてきたように、「お友達の嫌がることはしない、言わない」という「お友達外交」の提唱者ですから、本当は胡氏との会談でチベット問題には触れたくなかったはずです。しかし、これだけ世界で大問題となると何か言わないではすまないだろうなと苦慮していたところに、中国側がダライ・ラマの個人代表と話し合うというのですから、これは助かったと思ったことでしょう。
これにより、福田氏は首脳会談で、自らチベット問題で何かを要求したり、追及したりすることなく、「あの、対話の件の進展はどうなりましたか?」と聞くだけでよくなりました。それに対し、胡氏が現状を説明し、福田氏はきっと「対話姿勢を高く評価します」とでも述べるのでしょう。それでお終いです。
そして、中国もチベットとの対話努力を続けていると強調し、あとは何事もなかったかのような顔をして、楽しい五輪開会式にでも心をはせるのでしょうね。まあ、その前に洞爺湖サミットでも胡氏と顔を合わせるわけですが。でも、胡氏は福田氏のことを「お友達」とは決して思わず、利用しやすい東夷の陪臣ぐらいに考えていることでしょう。
私は、外交も国際政治も依然として「力」が支配している場所であり、きれい事ばかり言っても仕方がないとは思っています。従って、自国の国益のためなら、場合によっては国際社会で現実に起きている不正義や不条理から少々目をそらしたり、あるいは一時的に頭を引っ込めてやりすごしたりしながら、自らの力を蓄えるしかないことも多いだろうとは考えています。しかし、最初から自らカードを持つことも力をつけることも放棄し、ひたすら相手に恭順の意を示すことで勘弁してもらおうという姿勢では、いずれ滅ぼされるだけだろうなとも思います。相手に対して一切「怖れ」を感じる必要がないとき、人間はどれだけでも残酷になれる生き物なのでしょうから。
by 阿比留瑠比
日本会議の決議と福田首相の五…