僕の名前は香坂伸之(こうさか のぶゆき)。
学校では基本的に「コーサカ」って呼ばれてるけど、中学が同じだった友達からは、冗談で「センゴク」と呼ばれることもある。
由来は戦国時代の有名な武将かららしいけど、正直少しも嬉しくない。だって全然似合ってない。
僕こと香坂伸之が武田家家臣の城持ち武将のイメージとはほど遠いことくらい、自分でもよく分かっている。
体も小さいし、運動もあまり得意じゃない。成績もいまいち伸び悩み中。来年は受験なのに。
「のぶゆき、伸之……」
「取り柄といえば動物の世話をするのが少し得意なくらいで。
馬は好きだけど乗れないし……」
馬には触ったこともないので、その点でもやっぱり武将失格だ(戦国武将は馬に乗れないといけないイメージがある)。
「伸之……?」
「だいたい、そもそも武将の方の香坂は、正しくは…」
「ねえ、さっきからなにぶつぶつ言ってんの伸之?」
幼馴染の伊丹遥歩(いたみ あゆむ)が僕の顔を怪訝そうな表情で覗き込む。
ええい、遥歩! 今は考え中なんだ邪魔をしないでくれ。
「香坂くん、大丈夫? ……薬の用量、間違えちゃったかしら」
翠川グループ令嬢、やわらかそう、どこもかしこもでお馴染みの翠川優那(みどりかわ ゆうな)先輩が僕にそう言って微笑みかける。
「あははノブくん、ぼーっとしてんなよ! 全裸で」
楽しそうに笑っているのは一条七々織(いちじょう ななお)先輩。スポーツ万能、抜群の行動力とリーダーシップで生徒会を引っ張る学園の名物会長。
「武将の方は正しくは『香坂』じゃなくって『高坂』らしいって
わああっ全裸で――!?
どうしてこんな事になってるんだあ?!」
説明しないといけない。今僕はベッドの上に仰向けになり、両手両足を太い縄で縛り付けられている。図解するとこうだ。
●|\◎/|●
●|\|/| 全裸で。
●|/|\|● …ひどい!
どうしてそんな事になっているかというと、目が覚めらこうなっていた……ほっ、本当に訳が分からない!
「そ、そうだ、合宿っ。みんなで合宿に来て……
それからええと……ええっ? なんで縄っ!?」
僕の青春の1ページ、思い出の生徒会夏合宿は始まったばかりだった……!
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